司書グリモワール
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2投目
「こちらです」
1時間程して戻ってきたアンナに、オレたちは図書館の最上階に連れられた。
途中には警備の兵がいたが、アンナがちゃんと話を通してくれたらしく、素通りできた。
そうして『司書室』と書かれた部屋に到着した。
アンナがコンコンコンとノックをすると、中から「どうぞ」と声がかかった。
老人の声だ。
中に入って目に入ったのは、おびただしい量の本……であったが、魔王陛下の執務室のように雑然としたものではなく、巨大な本棚は理路整然としていた。
よく見ると、本のサイズ、ジャンル、著者などできちんと分類されており、部屋の主のマメさが伺える。
「久し振りであるな。グリモワール翁」
「急にいらっしゃるのは相変わらずですな姫様。父上に似てらっしゃる」
巨大な本棚とは対照的に、小さな机に座った白髪の老人がため息を吐きながらミラに応える。
「こちらが帝立図書館の司書兼館長のグリモワール翁じゃ。こう見えて魔法の知識に関しては魔帝国随一じゃ」
「は、はじめまして。ジーニスタ・ロールクレインと申します」
「これはご丁寧に。ロールクレイン家のお嬢さんじゃったか。亡くなった曽祖父殿には世話になったものじゃ。ゾルド殿は元気かな?」
「お祖父様は元気すぎるくらいです」
「そうか。あやつらしいわい。して、そちらのお嬢さんは?」
グリモワール翁はオレに視線を向ける。
ジーナみたいに女の子らしいお辞儀なんて出来ないので、普通に頭を下げて礼をした。
「はじめまして。オレはリーシア・シルフェリオン・ジルドです」
「ほぅ……リーデルの娘か。確かに小さい頃に似ておるわ」
「母さんをご存知で?」
「それはそうじゃ。あやつに魔法を最初に教えたのは儂じゃからな」
この老人、母さんの魔法の師匠だったのか。
帝国一番の魔術師に師事していたとか、また母さんの謎が一つ増えた気がするな。
やはり只者ではない。
「して、今日は何用ですかな?」
「本題に入るかのぅ。実はな……」
そうしてミラは事情を話した。
「なるほど。四属性の精霊に好かれているとな……これはたまげた」
「やはり珍しいのかのぅ?」
「魔族は精霊との親和性はあまり高くありませんからな。魔族で精霊に愛されておる者など殆どおりませぬ。ましてや四属性など……」
「精霊契約魔法はどうじゃ?」
「適性がものをいう種類の魔法です故儂は使えはしませんが、詳しい魔術書なら図書館の書庫にございますぞ。ちょっとまってくだされ……」
グリモワール翁は紙とペンを取り出し、スラスラと何かを書いていった。
「これを書庫の者に見せれば貸し出してくれましょう」
「おお、すまぬな」
「ありがとうございます、グリモワール様!」
「お安いご用ですじゃ」
ジーナに手渡された紙には、魔術書の題名とグリモワール翁のサインがしてあった。
さすが館長、頼りになるな
「ではジーナ。妾は翁にまだ用事がある故、その間に借りに行ってくるがよい。アンナ、書庫まで案内せよ」
「はっ」
「分かりました」
アンナの先導でジーナは司書室から退出する。
オレもその後を追おうとしたら、ミラに引き止められた。
「待て。お主も残るのじゃ」
「え、オレもか?」
「うむ。どちらかというとお主の話じゃからな」
オレの話?
何を相談する気だ?
「実はグリモワール翁、このリースじゃが、実は特異な適性があってじゃな…」
「ほう」
特異な適性?
ミラが『天眼』で見透かしたオレの潜在能力は高い魔法適性、特に火属性と言っていたはずだ。
他にもまだ何かあるのか?
「まぁ見てもらった方が早い」
「そうじゃな。リーシア、少し我慢してくれ」
グリモワール翁がボソボソと何かの詠唱をすると、背筋を寒いものが突き抜けた。
何か魂の奥底まで見透かされているかのような、気持ちの悪い感覚だ。
「ちょっ!?」
「すまん。これは分析魔法でな。観られる感覚は気持ち悪いだろうが我慢するのじゃ」
「妾の『天眼』を使われるのとはえらい違いであろう?」
ミラが胸を張って自慢気にそういうが、確かにそうだ。
『天眼』は眼を合わせた時に発動するが、発動中は綺麗な黄金色の瞳に見惚れてしまうくらいだ。
分析魔法はあまり良い感覚はしないな。
「で、どうじゃった?」
「適性はリーデルに似ておりますな。魔法適性、特に火属性が飛び抜けておりまする。しかし……この適性は……」
「どうしたんだ?オレにも分かるように説明してくれないか?」
グリモワール翁は深刻な顔で何か考え込んでいる。
そんな顔をされると心配になるんですが……
オレも精霊に愛されてるとか?
いや、それはない。
きちんと全属性使えるし。
じゃあ転生した事が何か関係しているとか?
これはある。
話がややこしくなるのであまり知られたくなかったがバレてしまったか?
「リーシア、そなたには空間魔法、失われた神魔法の適性があるのじゃ」
「……空間魔法?」
空間魔法?失われた神魔法?
ちょっと何言ってるか分からない。
ミラに説明を求めるように視線を投げかける。
「確かに空間魔法の適性があるのは確かなのじゃが、そんな目をされても妾には詳しくは分からんのじゃ。グリモワール翁、説明してくれぬか」
「はい。空間魔法は神が使ったとされるこの世の理の奥深くに干渉する極めて珍しい魔法ですじゃ。儂は900年ほど生きておりますが、適性を持ったものを見るのは初めてですじゃ。リーシア、お主は神に選ばれた才能を持っておるんじゃ」
あー。
神ね。
確かに神の使徒と名乗る人には会ったし、絶対関係あるな。
神に選ばれたなんて大層な事言われたが、邪神に選ばれたんだよなぁ。
「グリモワール翁、具体的にはどういう魔法なのじゃ?」
「分かりませぬ。如何せん記録がないものですから」
「それじゃ適性があっても使えなくないか?」
「うーむ。高い適性を持っておるようじゃし、新しく魔法を開発するしかないかもしれんな。魔法で大事なのはイメージである事は知っておるな?」
「ああ」
「詠唱はあくまでイメージの補助じゃ。空間に干渉する事象をイメージして魔力を練れば、何か掴めるかもしれん」
つまり、色々試して空間魔法を一から作れ、って感じか。
なんと無茶な……
「まぁとりあえず色々やってみるよ」
「うむ。何か出来るようになったら儂にも教えてくれ。受付に名を名乗れば儂と会えるようにしておこう」
その後、空間魔法の伝承について知ってることはないか翁に聞いてみたが、詳しいことは何も分からなかった。
魔術書を借りてきたジーナ達が帰ってきたので、翁にお礼を言ってオレたちは司書室をあとにした。
説明回は苦手ぇぇ




