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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第二章 幼少期編
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対人戦

 何でこうなったんだろうなぁ。

 今オレは城の練兵場で木剣を手にザリと向き合っていた。



 母さんに城に連れてこられ、そこで出会った魔王陛下の娘に無理矢理部屋に連れ込まれ、過激なスキンシップをとられ、護衛の少年にいちゃもんをつけられ今に至る。

 オレ何もしてないのに……


「これよりザリとリースの決闘を始める。相手の命を奪うような攻撃は禁止するが、それ以外は何でもありじゃ!」


 練兵場にはオレとザリの他に、元凶であるミラとお付きのメイドであるアンナしかいない。

 まぁ日中だし兵士の皆さんは忙しいのだろう。


「いざ尋常に勝負だ!」

「まぁ乗りかかった船だしオレは構わないけど、手加減しないからな」


 ザリは木剣を正眼に両手で構える。

 その基本に忠実な構えから、剣術を齧っている事が分かる。

 対するオレは右手だけで木剣を構える。

 距離は10歩ほど。

 ここは先手必勝だな。


「では……始め!」

「焼き尽くせ!『火弾』!」


 オレは左手で火属性下級魔法『火弾』を放つ。

 限界まで詠唱を短縮した魔法は発射までに1秒もかからない。

 不意打ちに成功した……はずだった。


「くっ……!」


 ザリは火弾を紙一重で躱して、そのまま距離を詰めてくる。

 この距離の不意打ちを躱すことのできるその反射神経と身体能力は想像以上だった。

 だが、少し良いところを見せようとしすぎたのも原因かもしれない。

 もう少し引きつけて確実に当てるべきだった。


 オレはもう一発魔法を放とうとするが、ザリは最短距離でこちらに接近してくる。

 速い。

 魔法を放っている時間が無いと判断した。

 体格差があるので接近戦は避けたかったが仕方ない。

 ザリの剣撃を右手の剣で受け止める。


「つっ……!」


 重い。

 これが本当に目の前の少年から放たれた物なのか?

 だが……真っ直ぐすぎる。


「……っと」

「何っ……!?」


 オレが剣の軌道を逸らしてやるとザリの剣は簡単に受け流せた。

 ザリは体勢をすぐに建て直し、今度は下から斬り上げてくる。

 オレはそれをも容易く受け流す。


 確かに膂力には目をみはるものがあるが、所詮は子供、実戦経験が少ないのは明らかだ。

 ただ剣術の型を練習しているだけでは実戦では役に立たない。

 実戦では自分の他に1人の意思を持つ敵がいる。

 それを分かっていないから太刀筋が真っ直ぐで読みやすく、横から少し力を加えただけで軽くいなせる。

 対人戦の経験が違う。


「くそっ……!!」


 ザリは何度も剣を振るうが、オレはその悉くを捌いていった。

 次第にザリの綺麗な剣筋にも乱れが生じてきた。

 そろそろだな。


「……っ!!これなら!!」


 ザリが大上段に木剣を構える。

 体格差を活かした上からの剣撃、さらに闘気もかなり練り込まれている。

 渾身の一撃を放ったつもりのようだが、隙だらけだ。

 これなら先ほどまでの攻撃の方が幾分かは良い。

 オレはがら空きになったザリの体に蹴りをいれて態勢を崩し、仰向けに倒れたザリの上に馬乗りになって首元に木剣を突きつける。


「はい。終了」

「なっ……」

「うむ。勝負あり。見事であったぞリース!」


 オレがザリの上から退くと、ミラが近づいてきてまた頭を撫でてきた。

 何かあればすぐにこうするのな。

 まあバリスさんにされているのと似ていて、悪い気はしないが。


「くそ……なんで僕の攻撃が……!」

「お前、実戦経験ないだろ。攻撃が単調だし分かりやすいしいなしやすい」

「何……君にそんな事を言われる筋合いは……」

「そんなにすごい身体能力なんだから、もっと使いこなさないとな」

「えっ……すごい……?」

「ああ。あんまり他の奴と比べられねえけど、最初のオレの不意打ちを躱した反射神経といい、腕力、スピード、どれも歳にしてはすごいんじゃないか?」

「そうじゃな。ザリの身体能力は同年代の者達から頭一つ抜き出ているのは事実じゃ」

「ミリアーナ様まで……」

「あとは経験あるのみだ。オレで良ければ訓練に付き合うぜ?」

「えっ……」


 そう言ってオレはまだ倒れているザリに手を伸ばす。

 訓練に付き合うのは何もザリの為だけを思っての事ではない。

 最近はあまり強くない魔物としか戦っていなかったし、対人戦の経験が少ないのはオレだって同じだ。

 ザリと訓練すれば魔族の身体能力にも慣れていけるだろう。


「………ありがとう」


 ザリはオレの手を取って立ち上がり、顔を少し赤くして小さな声で礼を言った。

 照れてやがる。

 可愛い奴め。


「で、でもまだ君の事を認めたわけじゃないからな!そこは勘違いするな!」

「はいはい」

「な、何をニヤニヤしているんだ!君は話を真面目に聞いているのか!」


 こいつはからかいがいのありそうだ。


 その時オレたちに近づいてくる気配を察知した。

 そちらを向いてみると、オレと同じくらいの幼女がこちらにトテテと走ってきているところだった。

 幼女の視線はオレに固定されている。

 まだ何かあんのか。

 幼女はオレの目の前まで来て止まった。

 身長はオレと同じくらいで黒髪、ぱっちりとした目が特徴的だった。

 走ってきたからか、肩で息をしている。


「ジーナ!一人でこんなところに来たらダメだろう!」

「お兄様は黙っていてください!」


 ザリが幼女に声をかけると、ジーナと呼ばれた幼女はザリをキッと睨みつけそう言い放つ。

 ザリもその迫力に押されてそれ以上何も言わなかった。

 幼女はまずミラに向き直り、スカートの端を持ち上げ礼をした。


「ミリアーナ様、ご機嫌麗しゅう存じます」

「うむ。息災であったか」

「はい。アンナさんもお久しぶりです」

「お久しぶりです」


 多分オレとそう歳は変わらないはずなのにしっかりしてるなぁ。

 そんな事を思いながらそのやり取りを見ていると、幼女が今度はこちらに向き直った。

 少し顔が赤いし、緊張してるみたいだな。

 何が始まるんだ。


「はじめまして。私はジーニスタ・ロールクレインと申します。そちらのロザリエルト・ロールクレインの妹です」

「えっとはじめまして。オレはリーシア・シルフェリオン・ジルドだ」


 ロザリエルトってのは多分ザリのことだから、ザリの妹なんだな。

 ていうか、ロールクレインってどこかで聞いたことある名前なんだが……ダメだ思い出せん。


「リーシア様ですね。此度はお願いがあってこちらに参上させていただきました」

「お願い?」

「私を……弟子にしてください!」

「は……弟子って……」

「何を言ってるんだ、ジーナ!」


 一番大きい反応をしたのはザリだ。

 オレは一瞬事態を把握できず、間抜けな声を出してしまった。

 ちなみにミラとアンナは面白そうに成り行きを見守っている。


「こんな奴の弟子だなんて、大体ジーナとこいつは全く面識が……」

「お兄様はリーシア様に負けたではありませんか!黙っていてください!」

「な、何!?」

「私はリーシア様とお話ししているんです!」

「あー……っと。とりあえず動機とか聞かせてもらえるか?」


 オレは2人の間に入りつつ、状況を整理するためにジーナにそう聞いた。

 ジーナは兄を一瞥すると、それまでの経緯を語りだした。


「今日私はお父様がお弁当を忘れられたのでそれを届けに城に来ました。帰り道に、ミリアーナ様やアンナさん、そしてお兄様とリーシア様が練兵場の方に向かわれるのを見て好奇心からついて参りました。そしてリーシア様の華麗な戦いを見て、弟子にしていただきたいと思った次第でございます!」

「それだけじゃ理由になんて……」

「もちろんそれだけではありません。お兄様は私の適性をご存知ですか」

「ん……確か魔法全属性最高値だったな」

「適性とか何の話だ?」


 いまいち話が分からいオレはミラに話をふる。


「妾の眼……リースはどう思う?」


 ミラはそういうと唐突に顔を近づけてオレの眼を覗き込んできた。

 陛下と同じ、吸い込まれそうな黄金色の瞳だ。


「綺麗だな。陛下と似てる」

「そうであろう。妾の自慢じゃ。これはヴェルヘルム一族特有の眼でな、『天眼』というものじゃ。見つめた者の能力などが手に取るように分かる。これでジーナの適性を調べた結果が、魔法全属性最高値だったのじゃ」

「それは……すごいんだろうな」

「うむ。ちなみにお主もかなり魔法適正が高いぞ。火、土、風、水の順に得意じゃろう?」


 確かに、オレは他の属性に比べて火属性魔法が得意だ。

 水の魔法なんかは、詠唱短縮が全然うまくいかない。


「ジーナの適性は全属性高い値を示すのじゃが、何故か魔法がうまく発動できんのじゃ」

「なんだそりゃ。適性がどうのこうのってのが間違いなんじゃないのか?」

「お主、妾の眼を疑うのか?」


 ミラは目を細め、黄金の瞳でこちらをじっと睨む。

 なにやら妙な凄みがある。


「ご、ごめんって…」

「ふん。分かればよいのじゃ」

「リーシア様、ミリアーナ様、よろしいでしょうか?」


 ミラと話していたので、ジーナもオレに話しかけにくかったようだ。


「おっとごめん。で、魔法が発動しないのか?」

「はい。それで、魔法を使うのが上手な方の傍でその技を見続ければ何か変わるかも、と思いまして」


 確かに魔法の発動にはイメージが重要だ。

 出来るイメージを掴んだ瞬間、それまで出来なかった事が嘘のように出来るようになることもある。

 だが……


「それってオレじゃなくてもよくないか?ザリとかじゃダメなのか?」

「お兄様をはじめ、私の身の回りの方々は軒並み魔法が不得手です。それに、リーシア様と私は歳もそんなに変わりません。そんな方が魔法を使うからこそ、なのです」


 なるほど。

 同い年のオレが魔法を使っているのを見て、自分も魔法を使えるという事を潜在意識に刻み付けようとしているんだな。

 3歳の割にめちゃくちゃよく考えている。

 それに一生懸命だ。

 緊張してるようだし、こういった事は苦手なのかもしれない。

 しかし、問題を先延ばしにせず、真っ向から立ち向かおうとしている。


「お願いします!どうか!」

「よし、その熱意分かった!ジーナは今日からオレの弟子だ!」

「ありがとうございます、リーシア様!」

「な、何!?僕は認めないぞ!」

「いや、オレはジーナを弟子にすると決めた。反対するならオレを倒してみせるんだな」

「くっ……ならもう一度勝負だ!」

「ジーナ、オレの動きをよく見ていろよ!」

「はい!」


 その後、ザリは体力が尽き果てるまでオレに挑んできたが、その全てを返り討ちにしてやった。

 オレもザリも体力がなくなってしまったので、今日のところは、とザリも一度引き下がった。

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