喧嘩
「ライリーさん!こいつ、例の特待生ですよ!」
「特待生がどうしたってんだ。ガキじゃねえか。お前ら絶対に手出すなよ」
「姐さん、やっちまえ!」
「ああ」
あんまり敵が多くて少しビビっちまったが、アタシの姐さんがそう簡単に負けるわけねぇ!
タイマンなら尚更だ!
アタシやライリーと呼ばれた不良の取り巻きは2人から少し離れる。
姐さんの戦いに巻き込まれたくねぇからな!
「ほら来いよ」
「ハッ!そっちから来やがれ。先手は格下の特権だぞ」
「てめぇ、姐さんを格下だと……」
「女、黙ってろ!」
「ぐっ……!」
取り巻き達に睨まれた。
悔しいことにアタシは弱い。
コイツらと喧嘩しても勝てないのは目に見えている。
「ラズ、心配すんな。勝った方が強いんだ。先を譲ってくれるんなら、お言葉に甘えることにする……よっ!」
「っ……!」
周囲の奴ら皆が息を飲むのが聞こえた。
姐さんが無詠唱、ノータイムで『火弾』を放ったのだ。
姐さんの魔法構築速度は半端じゃない。
威力は言わずもがなだ。
相手は避ける素振りすら見せない。
腰抜かしやがったか。
終わったな。
「無駄だ」
「……ほう」
「んなっ!?嘘だろ!?」
思わずそう叫んでしまった。
目の前の光景が信じられなかったからだ。
姐さんの『火弾』は不良の目の前でひとりでに掻き消えたのだ。
この間、不良は何もしていない。
「まさか、その程度でいきがってんじゃねぇだろうな?」
「こりゃ、本当に面白くなってきたな。ちょっとばかし本気を出すことにするよ」
姐さんが手を翳すと、姐さんの周囲に炎で形成された2本の槍が出現した。
「『炎熱槍』!」
すると2本の槍は別々の軌道を描いて男に向かう。
『炎熱槍』っていったか……
姐さんに言われて、最近ちゃんと勉強し始めたアタシだが、初級魔法でそんな名前の魔法は聞いたことがない。
ということは……中級以上ってことか!
それをあんな容易く……流石だよ姐さん!
こればっかりはさすがにあの不良も……
「無駄だ」
『炎熱槍』はまた不良の前で掻き消えた。
「な、何だってんだアイツ……」
「へっ!驚いたか!」
「あれが俺らのボス、ライリーさんの実力」
「あの人には魔法は効かねんだよ!」
「き、効かねぇだと?そんな訳あるか!」
「お前もさっきの見ただろ?」
「ぐっ……それは……」
確かに見た。
二度もだ。
相手が姐さんだから何か卑怯なトリックを使ったという事も考えられない。
「そういう事だ。今のがお前の全力ならさっさと負けを認めろ」
「この分じゃ『灼焔』も効かなさそうだな……じゃあ……」
姐さんの姿が消える。
次の瞬間には姐さんの拳が不良の顔面を捉えていた。
ゴッ!!
そう鈍い音がする。
「そう来なくちゃな……」
だが不良は少し仰け反っただけで、ニヤリと笑った。
お返しだと言わんばかりの蹴りを放つが姐さんはヒラリと躱す。
「そんな遅い蹴り、いつまでたっても私には当たらな……」
「んじゃ、こいつはどうだ?」
その時、男の身体が赤い光を放ち……爆発した。
2人は爆炎に包まれる。
「っ!?姐さん!!」
「取り乱すな、ラズ!」
姐さんは無傷だった。
だが相手も同様に無傷だ。
今のは魔法か……?
「なるほどな。接近戦を仕掛けてきた相手に対し魔法で自爆、なんだか分からないがお前は魔法を食らわないから自分だけ生き残るって訳か……」
「今の避けたのか?やるじゃねぇか」
「私もお前ほどじゃないけど、便利な防御魔法があるんだよ」
なんてハイレベルな攻防なんだ……
アタシには全然理解出来なかった。
姐さんが凄いというのは知ってたが、相手もかなりやるようだ。
「殴り合いの喧嘩なんて何年ぶりになるかな……」
「まだやるつもりのようだな」
「当たり前だ。お前なんて魔法が無くても十分だから……な!」
ニヤリと笑って姐さんは地面を蹴った。
その顔に魔法を封じられた悲壮感とかそういったものは感じられず、久々の面白い喧嘩にワクワクしている、そんな少年のような顔をしていた。




