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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第五章 闘技大会編
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魔法学園の入学試験

第六章開幕!

 私はメイヤー・マルグリット。

 セリーア魔法学園で教師をしています。


 この学校で教鞭をとって早5年。

 なんとか教師が板についてきましたが、まだまだ危なっかしい事だらけです。

 昨日も廊下に躓いて授業に必要な教材をばら撒いてしまいましたし……

 いや、あれはあんな所にモップが立てかけてあるのが悪くて……


 でも少しずつ、少しずつですが生徒達や先生方からの信頼は勝ち取れているように感じます。

 その証拠に今年、私は特待生の推薦のお仕事をいただきました。


 でもこれが難しくて……

 人脈のない私では特待生に相応しい能力を持つ子を見つけるのは、当てもなく大海を彷徨うようなもの。


 困っていた私に手を差し伸べてくれたのがミリアーナさんでした。

 ゾディアス王国で開かれる闘技大会にならきっと相応しい人材が見つかるだろう、と。


 正直言うと半信半疑でしたが、結果的にこれ以上無いってくらいに凄い子供達に出会えました。


「えっと……試験会場は……」


 紙を取り出して試験会場となる教室を確認します。

 第65実習室……?


 セリーア魔法学園の校舎はそれはもう大きく、永世中立国セリーアで最大の大きさです。

 5年勤務している私ですが地図無しでは目的地にたどり着く事もできません。


 65……65……

 魔法学園の4階の一番端の部屋。

 こっちですね。


「し、失礼します……」


 食欲をそそる良い匂いが鼻腔をくすぐります。

 扉を開けた途端にです。


 広い実習室の中には大きな机がズラっと並べられており、それぞれの机の上には鍋やフライパンなどの調理器具が置いてあります。


 ここは……


「調理実習室……?」

「おお、メイヤー先生!良い所にいらっしゃいましたね!」

「はわ!?」


 教室には2人しかいませんでした。

 その2人は一番前の教員用の机で料理をしていたようです。


 1人は魔法学園のモニカ先生。

 若い人族の先生で、魔法を応用した料理の研究をされている方です。

 私とあまり歳が変わらないので仲良くさせてもらっている先生です。


 そしてもう1人は……


「お、お久しぶりです……」

「ジーニスタさん!良かった!試験に間に合ったんですね!」


 ゾディアスで出会った、長い黒髪を頭の後ろで縛った背の高い女の子、ジーニスタさんです。


 話を持ちかけたのが特待生試験のギリギリになってしまったので、ちゃんと来れるか心配でしたが彼女がいるなら他の2人も大丈夫ですね。

 とりあえず一安心です。


「あれ……ていうか、今試験中じゃ……?」


 今は特待生試験の真っ最中のはず。

 でも2人はエプロンを身につけ、料理をしているようにしか見えません。


「ジーニスタさんが魔法を使った料理が出来るっていうので、見せてもらっていたんです」

「旅の間は私がご飯を作っていましたので……」

「メイヤー先生もどうぞ!」


 モニカ先生はそう言って鍋の中のものを器によそってくれました。

 一見、何の変哲もないスープです。

 それも、言っては何ですが地味な。


「い、いただきます」


 ですが私のその感想はすぐに覆される事となりました。


 確かに素朴な味付けですが、不思議と物足りなさは感じません。

 いえ、それどころか深みすら感じます……!


「ふわぁ……お母さん……」

「そう!これぞまさにお袋の味!」

「そ、そんな……恐縮です……」


 これはまさしく幼い頃に食べた母の手料理そのもの……

 あぁ……次の休みに久しぶりにエルフの里に帰ろうかな……


「これをジーニスタさんが?」

「火の魔法による火加減の調整もバッチリだし、何より水魔法をあんな使い方するなんて考えつかなかったわ!文句なく合格よ!」

「ご、合格で良いんですか!?私、お料理を作っただけですよ!?」

「何言ってるのよ!確かにただ料理をしただけと言えるけれども、その一連の作業にはとても高度な魔力操作が見てとれたわ!ジーニスタさん!貴方、料理研究部に入らないかしら?」

「い、いや……ちょっと……」

「どうして!?勿体無い!そんなに上手なのに!」

「と、とりあえずリースさん達がどうするか……」

「そ、そうだ!リーシアさん達の試験がどこで行われるか知ってますけど、良ければジーニスタさんもどうですか?」


 故郷への追憶から意識が帰ってきました。

 そう、今は彼らの試験の真っ最中です。

 お仲間の試験ですし彼女も気になるでしょう。


「よろしいんですか!?是非!」

「それでは参りましょう。モニカ先生、勧誘なら後でいくらでも出来ますし、今は……」

「うーん。まぁお友達も気になるわよね。良いわ。後は私に任せて行ってきなさい」

「ありがとうございます!」



--------------------



「えーと……マルグリット先生、これは?」

「わ、私にも何が何だか……」


 次に来たのは第13演習室。


 その部屋はタタミというはるか東の国の敷物(?)が敷き詰められており、入り口には「土足厳禁」と書かれた紙が貼ってありました。


 部屋の中央に正座して向き合う少年と老人。

 その間には何か盤のようなものがあります。


 2人は順番に盤の上の駒を動かしていきます。

 何やら静かにしなければならない雰囲気です。

 一体何を……?


「……手詰まりじゃな」

「ええ。参りました」

「フォッフォッフォッ。また挑んでくるが良い」


 少年の方、ツルギ君が頭を下げてそう言います。

 何かが終わったようです。


「あの……ベスター先生?」

「おお。マルグリット先生ではありませんか。気づきませなんだ」


 ベスター先生は自らの長く白い顎髭をさすりながらそう言仰いました。

 ベスター先生は学園でも最年長で勤続年数も最長のベテランです。

 まさかベスター先生がツルギ君の試験官をしてらっしゃるとは……


「ジーナじゃないか。そっちは終わったのかい?」

「は、はい……ツルギさんは何を……?」

「何って……ショーギだよ」


 ツルギ君は盤上の駒を1つ取り上げました。

 それは平べったく、表裏に見た事もない文字が書かれています。


「ショーギ……ですか?」

「知らない?」

「すみません、私も知らないです……」

「フォッフォッフォッ。マルグリット先生やそこのお嬢さんが知らんのも無理は無いな。これは遥か東の国のボードゲームなのじゃから」


 ベスター先生は手の中で駒を弄びながらそう言って、軽くルールを説明してくださりました。

 簡単に言うと、駒を動かして相手の駒を取り、相手の一番偉い駒を取れば勝ちのボードゲームのようです。

 1つ1つの駒で動かし方が違い、かなり奥が深いのだと。


「僕はこれを父さんから教えてもらいましたが、あまりポピュラーではないのですね」

「フォッフォッフォッ。この辺りでは確かに有名ではないの。お主は鬼人族じゃろう?鬼人族の祖先は東の国から来たと言うし、伝わっていても不思議ではない」

「あの……それで、お2人はどうして対戦を……?」

「ショーギを知ってると言うのでな。丁度良いと思ってこれで試験を行ったのじゃよ」

「僕は負けてしまいましたがね」

「え!?」

「それって……!?」


 ツ、ツルギ君が負けた!?

 ということは……


「ベスター先生、試験の結果は……!?」

「うむ。合格じゃ」

「ご、合格……ですか?」

「合格じゃ」


 ベスター先生は柔和な笑みを浮かべてそう仰いました。

 これで試験をしていたのでは……?


「最初から儂に勝てるとは思っておらんよ。儂はこう見えてショーギの名人じゃからな。単純に腕前を確認していたのじゃ。若い割に良い打ち筋であったぞ。文句はない。またいずれ一局打とうぞ」

「ありがとうございます。こちらこそ喜んで」


 そう言ってベスター先生とツルギ君は握手をしました。


 よ、良かったです……

 ツルギ君も合格出来て……


ドォン!!!


 その時、大きな音をたてて校舎が揺れました。

 盤上から駒が滑り落ち、タタミに散らばりました。


「ふぇっ!?」

「い、今のは?」

「随分と大きな音がしたね……」

「ふむ……第2修練場の辺りかの……」


 第2修練場……?

 それってまさか!?


「ベスター先生!ツルギ君をお貸しいただいてよろしいですか!?」

「うむ。構わんよ」

「ありがとうございます!2人とも行きましょう!」

「先生!?」

「えっ!?」


 私は2人を連れて演習室を出て走ります。

 目指すは第2修練場。

 あそこは学園の中でもメジャーな施設なので地図が無くとも場所は分かります。


「一体どうしたんですか?」

「何があるんです?」

「ハァ……ハァ……確か、第2修練場では……」


 2人は息を切らすこと無く私についてきます。

 こういう時、運動不足が恨めしい……

 説明する事すらままなりません。

 とにかく走らないと。


「ハァ……ハァ……こ……こです……」

「ここは……」

「また随分と派手な……」


 第2修練場はさっきまでいた校舎のすぐ隣にある建物です。

 いえ、正確にはあった(・・・)が正しいです。


 今はそこに建物など無く、瓦礫の山と化していました。

 そしてその中央に立つ人影が2つ……


「ベ、ベルナ…ルド……先…生……!」

「リース!?」

「リースさん!?」


 赤と黒が混じった髪の若い男性と銀髪の少女が向かい合っていました。

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