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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第五章 闘技大会編
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ミラの思惑

 観客席に帰ってみると、もうミラの表彰式は終わっていた。

 まぁ表彰式といっても優勝者しか表彰しない簡単なものだが。


「リースさん!?どこに行ってらっしゃったんですか!?」

「ああ、ちょっとな」

「何はともあれお疲れ様。良い試合だったよ」

「惜しかったじゃねぇかリース!」

「油断したわね」

「でも初出場で準優勝なんて大金星ですぅ!」


 仲間達はそれぞれの言葉で私を迎えてくれた。

 まぁ結果は少し残念だったが、中々に楽しい大会だったと思える。


 大会の全試合が終了し、周囲の観客達が帰り始める。

 私達もその流れで宿に戻る事とした。


「さぁ、次はどうする?また別の街に行くか?」

「リースさん、気が早いです……」

「そうよ!私達もしばらくはゾディアスにいるし、一緒に観光でもしない?」


 観光か……

 アイリスの言う通り、それも悪くないかもな。

 王都ゾディアスに来てからというもの、大会の日程に追われてろくに街を見る事も出来なかったし。


「じゃあそうしようかなぁ……」

「失礼します」

「うわっ!?」


 その時背後から声をかけられて変な声を出してしまった。

 だがその声には聞き覚えがある。


「アンナ……」


 そこにいたのは金髪のメイド姿の女性、アンナだった。

 この人混みの中、よく私達を見つけたな……


「我が主がお呼びです。こちらへ」

「主……」


 ミラじゃん……

 嫌だなぁ。

 顔を合わせたくない。

 絶対怒っているに決まっている。


 でも行かないと後が怖いし……


「リースさん行くしかないですよ」

「僕もそう思う」

「はぁ……だよなぁ……」



------------------



「こちらです」


 そうして私、ツルギ、ジーナが連れてこられたのは、大会2日目の夜に訪れたのと同じ宿、同じ部屋だった。


 はぁ……

 帰りてぇ……


 なんて言い訳しようか。

 ミラに聖神教の事を言ってしまっていいものなのか。

 オブラートに包むべきなのか。


 迷っている私に構わず、アンナがドアをコンコンとノックする。


「お連れいたしました」

「入ってください」


 聞こえたのは確かにミラの声。

 だが声色が違う。

 口調もだ。


 これは……猫かぶりモード?


 私が一瞬ジーナの方を見ると、彼女も少し戸惑っているようだ。

 どうなってんだよ。


 ガチャリとアンナがドアを開け、私達を部屋に招き入れる。


 部屋の中は3日前とほとんど変わっていなかった。

 唯一変わっているのはその部屋の主の態度。

 椅子にお上品に座っている。

 まるで絵画からそのまま飛び出たかのような優美さだが、逆に少し恐ろしく思えるな。


 部屋の中を見渡すと、彼女の側にもう1人女性が座っていた。

 少し小柄なその女性は好奇の眼差しで私達を見る。

 耳がピンととんがっている事から、所謂エルフ族なのだろうと推測する。


「はじめまして。私はミリアーナ・スカーレットです。以後お見知り置きを」


 椅子から立ち上がり、赤髪の女性が優雅に一礼する。

 完璧な所作だ。


 ていうかはじめましても何も……って、やっぱこのエルフの人の前だからだろうなぁ。

 私達との間柄を隠してまでどうしてこの場に呼んだ?


「リーシア・シルフェリオン・ジルドだ」

「はじめまして。僕はツルギです」

「え、えっと……は、はじめまして……?ジーニスタ・ロールクレインです……」


 ツルギはすぐに意図を汲んで初対面のように振る舞ったが、ジーナは戸惑いを隠しきれてない。


 だがミラは気にせずニコリと笑い、


「リーシアさんにツルギさん、ジーニスタさんですね。御三方とも、試合を拝見させていただきました。お見事、としか言いようがありませんでした」


と言った。


「優勝者に言われても皮肉にしか聞こえないな」


 意地悪、というほどでも無いが、猫をかぶっている状態でこれにどう返すのか興味があったからそう返してみた。

 しかしミラは表情を変えず、


「いえいえ。最後にリーシアさんが油断をなさらなければ、おそらく優勝していたのはリーシアさんでしょう」


 背筋に寒いものが走る。

 これはやはり怒ってらっしゃる……

 表情は笑っているが、細めた眼の奥は全く笑っていない……


 思わずツルギの肩の後ろに隠れてしまう。

 ツルギが「ハハハ……」と苦笑する。


「えと、ミリアーナさん」

「ミラとお呼びください。ツルギさん」

「……ではミラさん。僕達をどうして呼ばれたのですか?」

「はい。それは……先生、お願い致します」

「はい!分かりました!」


 するとエルフの女性が元気よく立ち上がり、私達の前までテケテケと歩いてきた。

 私ほどではないが小さく、小動物を思わせる人だ。


「私はミリアーナさんが通っているセリーア魔法学園で教鞭をとっている

メイヤーと申します。今回皆さんに来てもらったのは、セリーア魔法学園の特待生として来ていただけないかと思ったからです!」


 特待生?

 セリーア魔法学園の?


 特待生ってあれか。

 学費とか免除になるやつ。

 私達が?


 メイヤーの向こうのミラをチラッと盗み見ると、椅子にデンと座ってニヤリと笑ってる。

 あ、誰も見てないからって素になってる!

 足組んでるし!


「あ、急にこんな話しても呆然としちゃいますよね順を追って説明します」

「お、お願いします」

「魔法学園では毎年教員が持ち回りで特待生を選抜し、学園に推薦するのですが、その今年の担当に私が選ばれちゃいまして……でも恥ずかしながら期限ギリギリになっても条件に合う人を見つけられず、3年生主席のミリアーナさんに相談したところ、闘技大会なら見つかるかもしれないとの事でここに来たわけです!そしてあなた達を見つけました!」


 メイヤーは正面にいたツルギの手を取る。


「ツルギ君!あなたの荒々しくも繊細な剣術に思わず目を奪われてしまいました!」

「ど、どうも……」

「ジーニスタさん!あなたの魔法の構築速度、その精度は既に一流の域にあります!そして準決勝最後に見せたあの魔法!魔法を専門とする私ですが、あんなの初めて見ました!」

「あ、ありがとうございます……」


 少し引き気味のジーナの手を掴んでブンブンと振りながらメイヤーは鼻息荒くそう言う。

 そして最後に……私と目があった。


ガシッ!


「そしてリーシアさん!どんな強敵と当たろうとも決して諦めないあなたのスタンス……私、あなたのファンになっちゃいました!」

「ちょっ……!痛い!」


 目をキラキラと輝かせて唾を飛ばしながらメイヤーはそう言う。

 掴まれた腕がミシミシと軋む。

 力強っ!?


「皆さんもそろそろ魔法学園に通える年とお聞きしました!良ければ、セリーア魔法学園に推薦いたしますが、如何ですか!?」


 ミラを見てみるとフフンと得意げな顔をしていた。

 話が見えた。

 つまりミラは最初から私達を学園に入学させるつもりでこの女教師を連れてきたのだ。


「学園は大陸でも最先端の設備が揃っています!来ていただければ皆さんのさらなる成長をお約束しますよ!」

「あ、はい。わかったんで、一回手を離してもらえませんか?」


 痛いんだよ。

 その細腕のどこからそんな力が出るんだよ。


「それだけではありませんよ。学園には大陸中の、所謂天才と呼ばれる方々が在籍しております。それも、私が足下にも及ばないような。そのような方々と会ってみたくはありませんか?」

「それは……」

「ミリアーナさん、少し謙遜しすぎですよ!」

「……先生、少し黙って下さい」


 あ、少しイラッとしてる。

 まぁこの先生、興奮してるのかさっきから暴走気味だ。

 無理もないかもしれない。


「リースさん、どうしますか?」

「うーん……」


 このまま冒険者を続けてもいいけど……


「学園は学園で面白そうだ!」

「リーシアさん、ということは……」

「ああ、私は行きます!」


 3年前、ミラ達と一緒に行けなくてとても残念だったしな。

 ザリの奴にも久しぶりに会いたいし。


「で、では私も!」

「2人が行くなら僕も行こう」

「いいのか、ツルギ?」


 最初から私についてきたジーナと違って、ツルギは色々とあるだろう。

 冒険者の生活に愛着もあるだろうし。


「大丈夫だよ。母さんは僕に外の世界を見て欲しいと思うんだ。だから何事も挑戦さ」

「なるほど。ありがとう」

「礼なんていらないよ」

「決まりですね!」


 メイヤーは飛び上がって喜んだ。


「では私はすぐに手続きをします!ミリアーナさん、詳しいお話をお任せしていいですか!?」

「ええ」

「ありがとうございます!急がないと!」


 そう言ってメイヤーは部屋から飛び出して行った。

 な、何なんだこの行動力……


「ふぅ。優秀な教師なんじゃが、あまり周りが見えていないのが玉にキズじゃの」


 アンナが扉を閉めたのを確認して、ミラは姿勢を崩してそうぼやく。


「ミ、ミリアーナ様……あの」

「うむ。まぁ話の通りじゃ。お主らを魔法学園に推薦しようと思っての。妾が手紙でお主らを闘技大会に出場するように誘導しようと思ったんじゃが、言わずとも出場するつもりだったようで手間が省けた。お主らならば必ずメイヤー女史の眼鏡にかなうと思ったぞ」

「僕達をそこまで買ってくださるとは」

「……リース」

「……何でしょう」


 思わず敬語になっちゃった。

 ツルギの背中に隠れていても怖いもんは怖い。


「……貸し1つじゃ」

「……ああ」


 ミラに貸し……それはここでぶん殴られるよりも後が怖いが……仕方ない。

 私が話しにくそうなのを彼女なりに気遣ってくれたのかもしれない。


「それはそれとしてじゃ。説明を任されたと言ってものう……手続きはほとんどメイヤー女史がしてくれておるし……あとは魔法学園で試験を受けるだけじゃな」

「試験があるのか?」

「もちろんじゃ。特待生に相応しいか否かを見定める大事な試験じゃ。まぁお主らは心配してはおらぬ。お主ら、座るが良い。アンナ」

「はい」


 ミラが私達の脇のソファを指差す。

 私達が座るとアンナがティーセットを運んできた。

 その向かいのソファにミラが座る。


「やっとまとまった時間が取れたんじゃから、色々話そうぞ」

「ああ、そうだな」

「こういうのも3年ぶりですね……」

「この紅茶……凄く良い香りですね」

「ありがとうございます、ツルギ様」

「アンナの茶は最高じゃからな……ところでリース!お主の妙な魔法の数々、あれは空間魔法か?」

「ああ、あれは……」

「空間魔法……ですか?」

「それは僕も気になってた」

「いや、話せば長くなるんだが……」

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