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外道ノ転生  作者: 西の雷鳥
第五章 闘技大会編
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聖なる騎士たち

 私は背後から腕を捻り上げられ地面に組み伏せられた。

 抵抗する暇もなかった。


「何してるんじゃ!」

「この娘が聞き耳を立てておりました」


 司教にも見つかってしまった。

 私はうつ伏せに組み伏せられているので押さえつけている人物の顔は見えないが、声から判断するに女か?


 足音が近づいてくる。

 司教がこっちに来たのだ。


「何じゃそやつは……まさか、さっきの会話を聞かれておったのか?」

「さっきの会話?何の話だ?」

「うるさい!シラを切るでないわ!」


 とぼけようとしたら司教に怒鳴られた。

 決めつけるのは良くないと思うぞ。

 聞いてたのは事実だが。


 それにしてもヤバい状況だ。

 聖神教の奴らに捕まってしまった。

 前世では良い思い出が無いので、より一層深刻に感じる。


「殺せ!あの話を聞かれたのでは生きて帰す訳にはいかん!」


 ほら、殺せとか言ってきた!

 こいつ、やっぱりゾディアスの聖神教関係者じゃないな。

 気質的に、もっと中央に近い奴に違いない。


「話って何だよ!私は観客席の仲間の所に行こうと通りがかっただけだ!」

「うるさい!おい!こいつをさっさと殺せ!」


 司教が私を押さえつけている人物にそう命令する。

 マズイ。

 これはマズイ。


 私を押さえつけている奴は女っぽいが、力は相当強く、振りほどけそうにない。

 魔法も、こんな状態では上手く構築出来ないだろう。


 どうする?

 どうやって抜け出す?


「ロイウェルド司教」

「ああ?何だ?」

「貴方が何に関わってらっしゃるかは知りませんが、私はあくまで貴方の護衛として派遣されてきた身。貴方の部下ではありません。故にそのご命令に従う義務はありません。」

「なっ!?貴様!」

「それにこの少女、先程決勝を戦っていた者でしょう」

「それがどうした?」

「これ程の有名人を殺害しては隠蔽しきれません。ゾディアス国内では我々はそう権力を持っておりませんから。必ず明るみに出ます」


 そうそう。

 私はこの大会の準優勝者だ。

 この後表彰式とかもあるだろう。

 そこに私が現れなければ必ず騒ぎになる。

 バレるのも時間の問題だろう。


「しかし私の話をこ奴は聞いて……!」

「司教様。どうしてもこの少女を殺せと言うのなら実行いたしますが、先程申し上げた通りそれは必ず明るみに出ます。そして司教様、貴方にはその命令に関する教会への説明責任があります。重要な話を部外者が聞けるような場所でしていた貴方の責任はどうなるでしょうか?」

「ぐっ……!」


 私の上に乗っている女、凄く冷静だな。

 ていうか、話の筋は通ってはいるが、この女も司教の言うことを聞くのは嫌なんだろうな。

 それがよく分かる物言いだ。


「少女よ、1つ聞いてもよいですか?」

「な、なんだ?」

「貴女は司教様の話を聞いていないのですね?」

「あ、ああ!」

「貴女の信仰する神に誓えますか?」

「ああ!誓うよ!」


 大嘘だ。

 私は話を聞くためにここにいたし、根っからの無神論者だ。

 でもこうでも言わないと死んでしまう!


「司教様。彼女もこう申しております。ここは聖神のお慈悲を」

「くっ………フン!好きにしろ!」


 そう言って足音が遠ざかっていく。

 司教が行ったのだ。

 助かった!

 あいつめ、相当悔しそうな顔してただろうな。

 見れなかったのが残念だ。


「………ふぅ。貴女も災難ですね」


 そうして私の拘束は解かれた。

 私はすぐに首を回して後ろの女を見た。

 どんな奴か知りたかったのだ。


 彼女は思ったよりも若かった。

 ミラと同じくらい……いや、ミラは年齢にしては発育が良い方だし、ミラより歳上だろうか。


 艶のある長い黒髪に黒い瞳。

 白い肌。

 凛とした表情。

 出来る女って感じのオーラだ。


 装備は銀色に輝く重厚な鎧。

 だが左手の籠手だけは色が違う。

 青色だ。


 煉獄山であった司教といい、聖神教の上位の奴らはこの籠手を着けているものなのか?

 色も違うようだし……

 前のは……何色だっけか?


 まぁいいや。


 彼女の後ろには同じような装備に身を包んだ女性がもう1人いた。

 長身で短い金髪。

 籠手の色だけは違っており、緑だった。

 彼女は私を値踏みするような目でジロジロ見てる。

 めっちゃ警戒されてる。


 そういえばもう1人いるはずだ。

 あの司教と喋っていた人物。

 そいつだけは足音すら聞いていない。


 だが辺りを見回してみてもそれらしい人物はいなかった。

 私が見つかった時、どさくさに紛れてどこかに行ってしまったのだろうか。


 周囲を観察してると、黒髪の女が話しかけてきた。


「貴女、確かリーシアさんでしたね。仕事があって準決勝しか見れませんでしたが、見事なものでした。決勝は?」

「えと……さっき負けて、仕方ないから仲間の所に戻ろうかと……」

「そうですか。こちらの勘違いでご迷惑をおかけしたことをお許しください」


 そう言って女は深々と頭を下げた。


「ちょっ!?アンタは悪くないだろう!?」


 面食らってしまった私は思わずそう言ってしまった。

 何でこんなに腰が低いんだよ。

 悪くないじゃん。


「シャルロール様、あまり軽々しく頭を下げるのはよろしくないかと。本当に無実かどうかも分かりません」


 ほら、後ろの金髪の姉さんもそう言ってる。

 てかこの人、見た感じ黒髪よりも歳上っぽいのに敬語なんだな。


「いえリオン、彼女は彼女の信仰する神に誓って下さりました。それを疑うことは彼女の信仰心に対する冒涜です。撤回なさい」

「……は。申し訳ありませんでした」


 金髪の女性は表情も変えずに、私にすんなりと謝った。


 う、嘘ついたなんて言えねぇ……

 何か私が悪いみたいじゃないか!

 あ、実際悪いのか。


「じゃ、じゃあ私はこれで失礼しますね……」

「お詫びに観客席まで送らせてください。リオン、司教様の警護、任せました」

「はっ」

「いや、大丈夫なんで……そ、それじゃ!」

「あっ!お待ちを!」


 私は2人に背を向けて走り出した。

 こういう人は苦手だ!

 さっさと逃げるに限る!


 聖神教の関係者にもこんな奴らがいるんだな……



------------------



「行ってしまわれましたね……」

「そうですね」

「少し強引過ぎたのでしょうか」

「そうかもしれませんね」


 あの逃げっぷり。

 シャルロール様が強引だったというより、あの少女に何かやましい事があっただけのように見えるが、あくまでこれは推測の域を出ない。

 わざわざ言うこともないだろう。


「それで、何の話でしたか?」

「ゾディアス周辺に派遣されている聖騎士の監督についてです」

「そうでした。ネイルが勝手な行動をしているという話でしたね」


 シャルロール様はゾディアス地方に派遣されている聖騎士の中で唯一の『青』ランク。

 それ故周辺の聖騎士の監督を命じられている。


「彼はまだオズワルド司教様を探しているのですね……」

「その件ですが、やはり生存は……」

「ええ、絶望的でしょうね」


 シャルロール様は少し顔に影を作りそう仰った。


「……でしたらネイルにそう仰るべきでは?」

「彼もきっと分かっていますよ」

「捜索を止めさせてはどうか、と言っているのです」

「どうしてですか?」


 シャルロール様の言葉に私は少し言葉を詰まらせる。

 どう言ったものか……

 そんな私の心情を察したのか、シャルロール様はふわりと微笑んで仰った。


「貴女の本音を聞かせて下さい」

「……ネイルは私の同期で、優秀な人物です。本来なら私と同じ『緑』レベルの実力があるはずです。しかし彼は『黄』ですらない。それはきっと……」

「オズワルド様に師事していたから……ですね?」

「……はい」


 オズワルド司教はあまり本部の人間からの評判は良くない。

 あの人との関わりがネイルの出世を邪魔しているに違いない。

 事実、現在彼は命令を無視して司教の捜索に乗り出している。

 これでは彼があまりにも……


「ふふ。リオンのそういう素直な所、私は好きですよ」

「……はい」

「ですが、彼に捜索を止めさせる事はしません」

「何故でしょうか?」

「確かにオズワルド司教様はあまり良い噂を聞きません。しかしそれは私達が本部に近い人間だからです」

「……というと?」

「司教様はあまり権力に固執する方ではありませんでしたから、本部には疎む方も多くいらっしゃいました。それ故本部では過大に悪く言われている節があります。もちろん事実も少なくないですが」


 オズワルド司教とは一度本部ですれ違う程度の面識しかない。

 その時も彼は、噂通り法衣を着崩し、私はだらしない印象を受けた。


「あまり外聞を気になさらない方なので誤解されがちではありますが……あの方は誰よりも真っ直ぐで、信仰に真摯でしたよ」


 シャルロール様は性善説を地で行く純粋な方だ。

 だが善人と悪人の見極めに関しては私などよりも格段に上だ。

 シャルロール様が見逃すと言ったから、私もさっきの少女を見逃したのだ。


「リオンはあまりあの方と話した事はないでしょう?話してみたら分かりますよ。あの方の魅力が」

「しかしそれと司教の捜索の件は……」

「ネイルは特にオズワルド司教様に可愛がられていました。それだけに動かずにはいられなかったのでしょう。私は、彼のその気持ちを大事にしたいのです」

「………」

「納得していただけましたか?」

「……納得はしかねますが、承服いたしました」


 シャルロール様がこれまでに間違っていた事はないから。

 今回もきっと良い方向に進むと考えることにする。


「ふふ。リオンは本当に素直で、私も嬉しいです」

「そのような事は……」

「だって私のような若輩者の言うことをきちんと受け止めてくれる聖騎士は貴女くらいなのですよ」


 それもそうなのだろう。

 シャルロール様はお若い。

 それに女性というのも相まって、頑固な考え方の者が多い聖騎士の中では明らかに浮いている。


 彼女より格が下の聖騎士の中にも、彼女を軽んじる者も多い。


「貴女は私を世間を知らない小娘としてではなく、対等な仕事仲間として見てくださる数少ない方なのですよ」

「対等ではありません。私は貴女の部下です」

「私はあまりそうは思っていません。貴女は確かに立場上は部下ですが、姉のように思っている事も事実ですよ」


 そう言ってシャルロール様は笑われました。

 本当にその笑顔の眩さは聖女ですら霞む。

 純朴な笑顔に心が洗われる。


 だから私は貴女の味方でありたいと思うのです。

 貴女のその純粋さが汚されてしまわぬように。

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