リースVSミラその2
「はぁ!」
「それぐらい……うぉ!」
ミラの攻撃を避けようとしたその時、砕かれた地面に足がとられる。
おかげで避けるのが紙一重になってしまった。
「あっぶねぇ……」
足下はミラの攻撃で凸凹に崩れている。
気をつけて足を運ばないとさっきみたきにつまづいてしまう。
「うーむ。当たらんのう。さすがリースじゃ」
「お前だってさっきからワンパターンだぞ。当たらないのなら別の攻撃に変えろよ」
試合が始まって20分ほどになる。
ここまで私は防戦一方だ。
ずっとミラの激しい攻撃を『我空』で避け続けている。
「そうはいっても妾はお主のように多彩な攻撃方法を持っておらん。力で叩き潰すしかあるまい」
「なんつー脳筋発言……」
「いや、そうでもあるまい?お主だって体力、魔力、ともに限りがあろう?」
そうなのだ。
正直もう体力も魔力も限界が見えてきた。
だから流れを変えようとしたのだが、やはり気づかれていたか。
「会話で違う攻撃パターンに誘導しようとしたようじゃが妾には通用せんぞ。妾にはこの『眼』でお主の状態が手に取るように分かる」
ミラは自らの黄金色の瞳を指差す。
『天眼』か……
厄介な……
「もうこのままじゃと10分程で勝負が決まってしまうが、お主の方はどうするのじゃ?」
「………」
「そろそろ手を打たねば勝負が決まってしまうぞ」
確かにこの辺りで流れを変えないと、残された魔力も少ない。
だが打つ手がないのも事実だ。
ミラのステータス任せの連続攻撃は、ステータス任せであるが故に隙がない。
カウンターなんて望めない。
ステータス任せの攻撃を跳ね返すには……
「はぁ……これだけは使いたくなかったんだがなぁ……」
私は『移空』を発動。
異空間にしまっておいた小さな袋を取り出す。
「む?なんじゃそれは?」
「これはな……魔石爆弾だよ」
私は袋から1粒取り出してミラに見せた。
小指ほどの魔石の表面に魔法陣が描かれている。
魔力を注入した魔石に、特別な魔法陣を刻み込み、衝撃を加えると魔力を解き放つようにしている。
1つ1つが小さいから作るのも大変なんだよなぁ。
「その魔石……相当な量の魔力を帯びておるな!」
「そんな事まで分かるのか。確かにそうだ。魔力容量を拡大する魔法陣も合成してあるからな。大体……1粒あたり私の1週間分くらいの魔力量だな」
「1週間分じゃと!?」
私は夜、魔石に魔力を全部を注入してから寝る。
大体1粒1週間で出来るから計算上はそうなる。
「まさか、その袋の中全てがそれか?」
「ああ。50粒くらいだな」
つまり、この小さな袋に私の魔力が1年分くらい詰まってる。
取り扱いには要注意だ。
衝撃を与えようものならその瞬間ドカンだ。
攻撃範囲はあえて狭くしてあるから被害の規模は大きくならないとは思うが……まぁ建造物1つが跡形も無くなる。
だから普段は異空間にしまってある。
我ながらとんでもないもん作ったなぁ。
「それをどうするつもりじゃ……って決まっておるか」
「ああ。単純な話、攻撃が効かないのなら……」
私は手に持った袋の口を開け、『我空』を起動する。
50粒の魔石爆弾が私の周囲に浮かび上がる。
こうしてみると、私自身が爆弾になった気分だ。
笑えないが。
「攻撃が効くまで火力を盛れって事だ」
「……リース、考え直さんか?」
「お。お前の焦った顔なんてこの試合初めて見たな。良い気分だ。でも止めない」
私は手をかざす。
全弾、狙いは目の前の赤髪の少女。
「くらえ!」
「ぬう!」
私が全弾射出すると同時にミラは地を蹴り、最高速度で私に突っ込んでくる。
まぁそんぐらいは読んでる。
自分の周囲では爆発させれないからな。
私は出来るけど。
「『絶空』!」
私は全てを射出し終えると同時に『絶空』を起動した。
完璧に起動した『絶空』は全ての攻撃を遮断する。
私の1年分の魔力だろうがな。
銀色の光が踊る。
魔石爆弾に封じ込められた私の魔力が闘技場内を片っ端から穿ち、砕き、崩壊させていく。
半年分くらいで良かったかな?って思う。
やりすぎ感がとてつもない。
まぁ観客席には届かないようには考えていたけど、その分中央が酷い有様だ。
そして光の奔流が止み、静寂が訪れる。
中央は粉々にされた闘技場の時点で土埃がたっている。
……死んでないよな?
風魔法で土埃を吹っ飛ばすか。
そう思った瞬間、土埃から赤い影が飛び出してきた。
言うまでもない。
ミラだ。
身体には所々火傷や擦り傷が目立ち、服もビリビリに破れている。
相当ダメージを受けたようだが、それだけ。
いや、死んでもおかしくないのに。
もうマジで勘弁してくれ。
「リース!」
そして拳を私に振り下ろす。
さすがに大剣は爆発に耐え切れなかったみたいだ。
引き続き発動していた『絶空』に攻撃は阻まれる。
ていうかすごい格好だな。
胸とか下腹部とか大事な場所は奇跡的に無事だから大きな問題は無いが、なんというか凄く扇情的だ。
目のやり場に困る。
「ぬぅ〜〜」
「私の『絶空』にその程度の攻撃……っ!?」
だがその瞬間、完全な防御魔法である『絶空』に負荷がかかる。
これは……ミラに削られている!?
「ふふふ。妾の眼、『天眼』は見つめたアビリティの一種じゃ。発動すれば、この眼に映った見つめた魔法を弱める!」
「マジか……!聞いてねーぞ!」
「言ったと思うがのぅ」
来い!
私のアビリティ!
これは十分に危機的状況だぞ!
存分に力を発揮しろ!
………
…………
来ない!
クソ!
肝心な時に役に立たねぇ!
「ぐぬぬぬぬ……!」
「アビリティにはアビリティでしか対抗しえぬ!諦めるのじゃ!」
ミラの拳を中心に『絶空』にヒビが入る。
諦める?
冗談じゃない。
むしろチャンスだ。
ミラは今攻撃の最中。
自由に動くことは出来ない。
とびっきりのカウンターを打ち込むチャンスだ。
私は残された僅かな時間で魔銃を引き抜き、ポケットから取り出した銃弾を装填した。
これは魔石弾頭弾。
あの母さんにも手傷を負わせた私の切り札中の切り札。
……あの時は青痣作るくらいしか出来なかったんだっけか。
あれ、本当に大丈夫かな?
まぁ注入している魔力量はあの時の比じゃないし。
魔石弾頭弾に込めた魔力は大体1ヶ月分くらいかな?
さっきの爆弾の魔力総量と比べると格段に見劣りしてしまうが、これを全力の魔力で撃ち出すと、威力は同等となる。
一点集中型の切り札だ。
こんなもんを人に使うのは気が引けるが、さっきのを見てその迷いも吹っ切れた。
ミラは正真正銘の化け物。
これぐらいじゃ怪我はしても死なないだろう。
終わりだ。
そして私がミラに銃口を向けたその瞬間
ミラのはるか後方、観客席を歩く1人の男が目に入った。
見たことのない男だ。
だがその服に描かれた紋章には見覚えがある。
聖神教の紋章だ。
「愚か者がぁ!!」
「……はっ!?」
気が逸れたのはほんの一瞬。
だが拮抗を崩すには十分すぎる時間だった。
ミラの拳が私の左頬にめり込み、私は吹き飛ばされた。




