決勝
『さぁ、長かった闘技大会も残すところあと1試合となりました!』
思ってみればたった5日なのに確かに長かったな……
1日目に予選、3日目にボレアス、4日目にツルギとジーナ。
3日目と4日目の密度が濃すぎた。
『闘技大会始まって初の女性同士の決勝戦です!どちらも優勝候補を次々と破ってきたダークホース!決勝を制し、その名を歴史に刻むのは一体どちらになるのでしょうか!』
だが一晩休んだ私の体調は万全。
装備品にも抜かりはない。
『それでは、ミリアーナ選手の入場です!』
歓声が一際大きくなった。
地面まで揺れている。
ミラが反対側のゲートから入場したのだろう。
『対するリーシア選手の入場です!』
「リーシア選手、よろしくお願いします」
「はいよ」
係員の案内に従い、私はゲートから闘技場に入場した。
ミラが入場した時と勝るとも劣らない歓声。
これまで次第に大きくなっていくのを感じていたが、決勝ということで最高潮に達したようだ。
「来たか」
ミラは中央で仁王立ちしていた。
長い赤髪は頭の右横で1つに縛り、腕を組んでいる。
背中にはいつもの大剣。
服はピッチリと身体にフィットする動きやすそうな戦闘服だ。
これまでの予選では普通の服装だったらしいのだが、それだけ本気だということだろう。
だが身体のラインが浮き出て、少し目のやり場に困るな。
すっげぇナイスバディ。
「いつかはお主と当たると思っておったぞ。お主が妾以外にそう簡単に負けるとは思えんからな」
「何だよ。自分なら倒せるみたいな言い方じゃないか」
「そう言ったのじゃよ」
「たいそうな自信だな、さすが『暴君』様」
「ほぅ。『鉄の銀姫』殿がぬかしよる」
「あ、ごめん。やっぱこの話止めよう」
「良いではないか。可愛らしいお主にピッタリじゃ」
異名をからかってやろうと思ったらとんだブーメランだよ。
もうその恥ずかしい異名止めて!
話を変えよう!
「お、お前とは直接戦った事はないけど、学園暮らしで腕が鈍ってないだろうな!」
「ふむ。それは心配無用じゃ。むしろお主が心配じゃの。妾と力の差が開きすぎていて泣きべそをかかないか」
「かくか!こっちは3年間冒険者として色々な化け物と戦ってきたんだぞ!」
ミラにも手紙で言ってあるはずだ。
この3年間で地竜やキマイラを筆頭に様々な化け物と戦ってきた。
学園でぬくぬくとしていたお前と力の差が開くなんて……
「こちらじゃってそうじゃ。魑魅魍魎蔓延る学園で3年を過ごしたのじゃからな」
「ん?どういう意味だ?」
「セリーア魔法学園には大陸中の天才が集まる。特に上級生ともなれば、妾やお主らと同等、もしくはそれ以上の者などゴロゴロおるわ。奴らが大会に出場しておれば、お主とて楽には勝ち上がれんかったじゃろう」
そ、そうなのか……?
前世の学校といえば、純粋に勉学に励む場所だった。
貴族学校ではあったが……
実戦経験など全く無いと思ったんだけど……
「お主もあまり調子に乗るでないぞ。この大会、言ってはなんじゃがレベルが些か低い。A級冒険者をはじめとして、周辺国で国に仕える傑物共も忙しさ故か出ておらんからのう」
「ちょ、調子に乗ってねーぞ!」
それは確かに思っていた。
国を挙げての闘技大会とはいえ、所詮は祭りの1つ。
A級冒険者達は出場しないし、各国の実力者達も各々の用事等をわざわざキャンセルして来るような大会ではない。
魔帝国の名のある兵士の名を1人も聞かなかったのがその証拠だ。
「まぁ確かにお主達3人やボレアス殿は強い。そこは認めよう。じゃが、妾に簡単に勝てるとは思わんことじゃな」
「黙ってれば言ってくれるじゃねぇか……」
さっきからミラが上から目線なのが少し腹が立つ。
「魔法学園がどれ程のもんかは知らねぇが、吠え面かかせてやるぞ」
「ふふ、よいぞ。今日だけはその無礼許す、『鉄の銀姫』よ。胸を借りるつもりで来るがよい」
「だからその呼び名止めろっつってんだろうが!」
『それでは……試合開始!』
司会の号令により、ゾディアス闘技大会決勝戦、戦いの火蓋が切って落とされた。




