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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第2部「絶海の隠者」
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第1章 7-2 海竜退治屋

 アーリーが立ち上がった。その威容に、三人が思わず見上げる。


 「では、我々も改めて自己紹介をしよう。私はカルマのアーリーだ。こちらは、同じくカルマのマレッティと、カンナ。我々のガリアは、炎に、光……そして雷なので、正直、海竜には分が悪い。長居するつもりは無いし、お前たちの邪魔をするつもりもない。もちろん仕事を奪うはずも無い。安心してほしい」


 そう云われても、三人が、不審げに顔を見合わせる。それほど、カルマがここにいるのが腑に落ちない。モクスルの助っ人が来たというのなら、歓迎するのだが。


 「で、まじめに、何をしに来たの?」


 「正直に云うと、不可抗力よお。ストゥーリアに行く予定だったんだけどお、船が難破しちゃってえ。好きで来たんじゃないのよ」


 「じゃ、冬になる前に、早く出発したら?」

 「なによ、その云い方。好きでいるんじゃないって云ってるでしょ」


 「だって……」

 「まあ待て。カルマが残っているのだ。理由は察することができるはずだ」


 ニエッタとパジャーラがしばし考える。

 「……まさか、バグルスが!?」


 「そういうことお。少しきいたけど、コンガルだかにいる、殺し屋連中……頭目がバグルスかもしれないのよお」


 「それはない。確かにちょっと、普通の人間とはちがう感じだけど、バグルスじゃない。バグルスを見たことがあるもの、わたし」


 「ギロアというやつを、知っているのか?」

 「知ってるも何も……」

 ニエッタは、暗い顔で黙りこんでしまった。


 「あっちゅうまに、五人も殺されたわけ」


 トケトケが、腰に片手を当てたまま大きくて澄んだ眼をくりっとさせ、あっさりと云ってのけた。

 


 「少し、話を聞きたい。連中は何人組だ?」

 ニエッタが代表して、話を続ける。あまり思い出したくない、恐ろしい体験だ。


 「五人組。こっちは十人いたんだよ。入り江に追い込んで竜を退治していたら、突然襲ってきて……竜を護ってるって云ってた。まったく問答無用。わたしたちを竜殺しだって。竜の神の罰だって。ガリア遣いがそう云うのよ!? 信じられなかった。それに……やたらと強くて、何がなんだか……次々に仲間が……全滅する前に逃げてきた。なんとか逃げられたんだよ。このトケトケが弓で応戦して……一人に手傷を追わせたからね。そして、残った五人のうち、二人がウガマールへ帰っちゃった。残ったのはこの三人」


 「いつの話だ?」

 「半月くらい前」

 「海竜退治は、船でやるのか?」


 「カルマに隠してもしょうがないから云うけど、わたしのガリアは、水の上を歩くちからがあるから、あまり船は使わない。サラティスじゃ役に立たなかったけど、ここでようやくまともな仕事が。パジャーラが鎖投網のガリアで竜を抑えて、わたしがトドメ。それを、トケトケが遠距離から援護」


 「そうか……たった三人で、恐ろしくはないか」


 「そりゃ恐いけど……サラティスに帰っても、まともな仕事が無いんだもの。ここでやってくしかないから!」


 その意気や良し! アーリーはそう云いたげに頷くと、


 「竜を退治していれば、向こうから出張ってくれるのだな。分かった。我々が補助させてもらおう。我々のガリアは、海戦には不向きだからな……お前たちの補佐に回ろう」


 驚いてニエッタたちが何か云う前に、マレッティの金切り声。


 「カルマがこんな連中のセチュになるってわけえ!? アタマどうかしたんじゃないの、アーリー!!」


 「目的を見間違うなよ、マレッティ」


 珍しくアーリーがマレッティをにらみつける。忌ま忌ましげにマレッティもにらみ返し、歯ぎしりの音も豪快に口をつぐむ。その迫力というか、むしろ険悪ともとれるカルマの独特の雰囲気に呑まれ、ニエッタは冷や汗をかいた。カンナが、こんなものはいつもの調子とばかりに慣れた様子でぼけっとしており、それもむしろ不気味さを感じたようだ。


 「あ、あの、わたしら、二日も休んでないんで……次の退治は三日後にやるんで」


 ニエッタがそう云うと、職員へ竜を退治した証拠の新鮮な鱗を出した。カルマの三人が後ろから覗き込む。大きな漆黒に近い濃紺の鱗は、タータンカ号を静めた大海蛇という奴だろうか。それから、背鰭というか、皮膚の一部のついた一塊の肉片がごろごろと。報酬はサラティスの半分ほどというところだった。大きな鱗には三十カスタ、肉片が六つで百二十カスタだったで、百五十カスタを手にしていた。三人にしては、まあまあの報酬に思えた。


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