第1章 4-2 感電
ぐうん、と船が三角波の頂点から一気に下がり、さしものアーリーも重心が浮き上がってバランスを崩す。遅れて甲板に上がってきたマレッティとカンナはそこらの物体にしがみついたまま、動けなくなった。
さらに、ドオッ、と轟音がし、波といっしょに海の主戦竜である海戦竜の「大海蛇」が体当たりをぶちかます。
「うああ!!」
甲板の上を押し流す津波めいた大波をかぶって、三叉銛のほうのガリア遣いが流される。マレッティとカンナの眼前を通り、名前も知らないガリア遣いはカンナの伸ばした手も届かず、そのまま流されて船縁に叩きつけられ、いやな音を立てて血をふりまき、まっさかさまに海へ落ちた。
瞬間、海騎竜が一頭、飛び上がった。口にいま落ちたガリア遣いの上半身をくわえている。
カンナはその竜と目が合って、思わず背筋が震えた。まったく勝手がちがう。
さらに、大海蛇がもう一度ぶちかましてくる。狙ってやっている。船を攻撃する方法を心得ているのだ!
竜のおこした横波に、タータンカ号が大きく横倒しになる。ぎりぎり転覆する寸前で復原し、その反動で甲板上はしっちゃかめっちゃかだ。
「おのれ!!」
アーリーがガリア「炎色片刃斬竜剣」を出した。そのアーリーの背丈ほどもある巨大な片刃で火色の剣から、雨と波飛沫を蒸発させて炎が吹き上がる。
「お、おおい、火は、火はだめだ、船が燃えたらどうするんだ!!」
船長ががなりたてた。
「なんだと!?」
「油も積んでるんだぞ!!」
アーリーは舌をうち、炎を消した。ただの剣としても主戦竜級など細切れにできるが、なにせ相手は海の中だ。
「マ、マレッティ、あたしたちも……」
カンナもガリア「雷紋黒曜共鳴剣」を手に出す。マレッティも震えながら、ガリア「円舞光輪剣」を出した。とたん、また船が反対側へ大きく揺れ、波が襲ってきた。マレッティが流され、甲板を転がった。
「マレッティ!」
「うわあああああ!」
マレッティが聴いたこともないような叫び声をあげ、ガリアも何もなく手足をばたつかせる。波が引いて、マレッティは甲板の真ん中で倒れたまま、いつまでも絶叫をあげてバタバタ暴れていた。
カンナが走り寄る。
「マレッティ、マレッティ! しっかりして!」
マレッティは完全にパニックとなり、カンナも分からずとにかくしがみついた。その力が凄まじく、カンナは驚いてマレッティにひきずり倒されるかっこうとなった。
「マレッティ!!」
「あ……あ……あた……あたし……あたっ……」
マレッティがおかしい。眼は見開き、焦点が定まらない。金髪が海藻みたいに濡れつくし、幽鬼めいて顔が青白い。
「あたっ、あたっ、たっ! あたし、泳げないのよおおおお!!」
なんということか! 全てを理解したカンナは歯をくいしばり、たまたまそばに転がっていた木の浮環をマレッティにつかませると、黒剣を振りかざした。
ビシュア、ガーン!! ゴロロァ……! と、雷鳴がとどろき、船員が驚いて上を見上げる。マストに落雷したと思ったのだ。
が、それは共鳴剣の音だった。久しぶりに手にした黒剣。海から鎌首をもたげ、生意気に笑ったような顔つきでデロデロと舌を出してこちらをにらみつける海戦竜・大海蛇めがけて一気に共鳴する。ババババ、と音が鳴り、黒剣から稲妻がほとばしった。
瞬間、
「ギャア!!」
「が……ああッ、ッ……!!」
カンナは驚いて、感電して次々に倒れる船員たちを見た。倒れたまま硬直し、ぬれた甲板の上で小刻みに震えている! なんと、カンナの雷撃が海水を伝って流れ、全員を襲った!!
カンナはわけが分からず、戸惑った。アーリーですら痺れて片膝をつき、物も云えずに手でカンナを制している。ガリアを遣うな、と!
「そ、そんな……!?」




