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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 11-2~エピローグ 空の彼方へ~黒い蝶

 「ちょってあんたたち……カンナについていこうってえの!?」

 「死んでもついてくって決めてんのよ!!」


 「神代(かみよ)の向こうよ!? 人間がどうなるかなんて……」

 「知ったこっちゃないのよおおお!!」


 スティッキィの狂信的な眼に、マレッティは嘆息した。

 「勝手にしなさい」


 スティッキィ、走りよってマレッティへ抱きつき、口づけした。

 「……ありがと。お姉ちゃん。さよなら」


 ライバが、立ち上がったスティッキィの手をとる。

 そしてマレッティへ片目をつむって見せ、そのままカンナを目指して瞬間移動した。

 すぐにカンナへ追いつき、二人ともカンナへしがみついた。


 カンナは驚いていたが、諦めたのか、三人で空へ昇ってゆく。

 やがて、見えなくなった。

 神代の蓋が、完全に消えてしまった。



 一人残されたマレッティ、どれほど茫然とその晴々とした空をみつめていただろう。


 「……やれやれ、カンナは、本当に行っちゃったんだね」

 驚いて腰を抜かさんばかりにひっくり返って尻餅をついた。


 なんと、リネットである!!


 「な、な、な、なな、あ、あ、あ、あんた……!!」


 知らぬ間に立って空をみつめていたリネットが、マレッティへ向かって歩きだした。


 マレッティの眼が、恐怖でひきつっていた。


 「ヒチリ=キリアの魂だけが常世(とこよ)へ戻って……ボクは助かったんだね。ガラネルも死んだみたいだけど……僕は生きている。生きてるってことは助かったのさ」


 マレッティ、心臓を押さえて激しく息をつく。ゆっくりと深呼吸し、

 「……すごいわね……あんた……」


 「最後に残った……いや、残されたダール……か……」

 リネットが、アーリー達を見渡して、つぶやく。


 「僕で、きっとダールは最後だよ。もう、二度と生まれないだろうね」

 「知らないわよ……!」


 「これから、どうするんだい?」

 「知らないって云ってるでしょ!!」

 リネットが肩をすくめる。


 「君らは、どう思う?」


 アーリーのかたわらで祈りを捧げていたマラカとパオン=ミ、ゆっくりと立ち上がって、


 「……拙者には、なんとも……」

 「我もわからぬわ」

 リネットが腰へ手を当て、そんな三人を順に見た。


 「この四人が、全ての見届け人さ。それぞれ、世界に神話を伝播する役目がある」

 「知らないわよ……そんなこと……」


 マレッティがデリナを地面へ横たえ、立ち上がった。

 「とりあえず、これからどうするのか考えましょ」


 マレッティの顔は、清々しいまでに晴れやかだった。マラカとパオン=ミ、リネットも笑顔で応える。


 「まずは、シャクナへ戻りましょう」

 「アーリー様たちの墓も造らなくては……」

 「いちおう、ガラネルもね……」


 風が、四人の髪をなびいた。

 黒い大きな蝶が飛んでいる。



 ∽§∽


 数百年後であろう。いや、千年後かもしれない……。

 砕けた島も緑が生い茂り、尾根には大きな鳥居が建っている。


 人が増えると共に竜は数を減らし、絶滅した種もあるが、生き残った種は厳重に保護されるに到った。


 ガリアムス・バグルスクス信仰は、ある場所では神鳴(カンナ)神威大神(カムイオオカミ)として、ある場所ではまた違う神として、世界中で形を変えて広まっていた。


 ほかにも、多数の神が伝わっている。


 それが、ダールたちなのか、カンナの妹なのか、カンナと共に消えた二人なのか、生き残って信仰と神話を伝播した人々なのか、それは場所によってさまざまだ。


 国や地域によっては、皇太子妃も神として崇められているという。

 古式の竜信仰も細々と残り、または復古信仰としてあるようだった。


 大昔の聖地の痕跡であるこの島では、新神による封神の後、漆黒のビロード色に稲妻紋様が翡翠に光る美しい蝶が増えた。


 その黒蝶は湖周辺にも分布し、新しい聖地を巡礼する人々の眼を楽しませている。


 信仰は時に戦ももたらしたが、人は発展したと云ってよいだろう。

 上空を、何頭かの竜と共に銀と碧の飛行機が飛んでいた。

 


 「ガリウスの救世者」 了

 「バスクス・カンナ」としてスタートし「ガリウスの救世者」として完結した今作は、第1部は公募作品なのでそれの執筆期間を含めると、足掛け5年にわたって関わり続けました。


 2部以降、全部後付けでやったわりには、そこそこうまくまとまったかな、と思います。


 こんなに長いお話を書いたのは生まれて初めてで、これもなろうという発表の場があったからこそと思います。自分の勉強にもなりました。


 お目を通していただいた方々にも、厚く御礼申し上げます。


 本当に有難うございました!


 たぷから


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