第3章 10-5 神々の死闘
右手で竜の爪を叩きこんだが、カンナが音響防壁でなんとか防ぐ。だがそれは囮だ。その右手をひっこめる動きで身体を半回転させ、強烈な尾の一撃を左側よりカンナめがけて放つ。これにはカンナも黒剣も対応できずに、まともに横面を強打され、メガネもぶっ飛んで脳震盪をおこしかける。カンナでなくば首の骨が折れ……いや、頭部が破裂して無くなるほどの衝撃だった!
鼻と唇の端から血を吹いてふんばり、しかしカンナは負けじと掴んでいる戈の柄を通してもう一度共鳴、そして強烈な電撃!
「ぬがあああ!!」
ストラ竜神が気絶しかけるほどの衝撃だった。神は倒せずとも、その肉体には限界がある。
「……こやつめが!!」
自らを奮い立たせ、竜神は自らガリアを離すと爪打、拳打、さらに蹴り、尾の一撃と空中で連続攻撃を放つ。カンナも遮二無二、死に物狂いで黒剣とそしていま竜神が離した長い柄の戈も使って懸命に防いだ。
ついには竜の本能に従って、大口に牙をずらりと並べて咬みついてくる。
カンナはたまらず戈の柄を横にしてその口へつっこんで防いだ。竜神が自らのガリアの柄を咬み、横へ振ってカンナの手より奪い取る。そして両手で握るとその場で宙返りを打って一回転し、カンナへ戈を叩きつけた。カンナは音響壁で防ぐも、さすがは神の一撃か、突き破って戈の剣先が脳天へ迫った。
「なんのおッ!」
黒剣を鳥居の形にして左手を峰へそえて両手で頭上に掲げ、その攻撃をかろうじて受ける。とんでもない力と衝撃が迫ったが、なんとか耐えた。
刹那、そんなカンナの無防備な胴体めがけ、竜神が凶悪的な蹴りを放ったからたまらない。
胴体が引き千切られたかと思うほどの衝撃に、カンナも眼が出んばかりに見開いて悶絶。再び豪快に血をふき、竜神の顔へとび散った。肋が折れて、どこかへ刺さったか。ストラ竜神、べろりとその血を長い竜の舌でなめる。だがカンナ、歯を食いしばってその足へしがみつき、三度目の共鳴電撃の直接投入!!
「……かああ……!!」
ストラ竜神の紫の眼光が失せる。全身より煙を出し、その動きが止まった。いまだ! カンナは抱きつくようにして小さな少女の身体の竜神へ身を預けると、一気に音響を放って神代の蓋めがけて進んだ。
が、そのカンナの左の肩口へ、ストラが豪快に咬みついた。
「わああああ!!」
左肩ごと腕を食い千切られたかと思った。思えば、カンナは初めて竜からこのような攻撃を受けた。これまでは、どんな竜やバグルスからも致命傷を味わったことは無かった。
バキッ、メシィッ、と鎖骨や肩の骨が砕かれる。心臓がショックで激しく痙攣し、止まりかける。白目を向き、カンナの意識が遠のいた。
「……姉貴いいい!! まだかよおおお……ッ! 姉貴ィイイイ……!!」
悲壮的な、レラの声がする。目をつむり、歯を食いしばって懸命に耐えていたが、そもそもレラは瀕死だ。石化するようにして、レラの肉体にもヒビが入ってきた。
そしてホルポスだ。ホルポスもカンナとの戦いでガリアの限界を超え、ただでさえダールとしての寿命を縮めていた。ガグウ、とホルポスが片膝をつき、支えている部分が押しつぶされんばかりに裂け目が低くなる。
「……ううううううう……!!」
その苦悶の表情も虚しく、レラと同じく細腕や脚にヒビが入ってゆく。
そのぶん、デリナやアーリー、ショウ=マイラ達が歯も折れんばかりに……いや、一気に四人の姿が変貌する。
半竜化だ!!
「どぅあああああああ!!」
服も裂け、それぞれが漆黒、真紅、黄金、そして翡翠色の鱗を持った角や背鰭、そして尾や翼を持った半竜人と化して強力に次元の裂け目、神代の蓋をこじ開ける。
だが、デリナとアーリーは前回の半竜化からあまり時を経ておらず、既に限界を超えていた。またショウ=マイラとマイカは数百年の隠遁と休眠から復活したばかりで、急激な力の解放へその肉体が耐えられなかった。
バガッ、バグゥ! バリバリバリ……!! 肉体が裂け、泉が如く血が噴き出る。
「時間……時間が……カンナ……!! カンナカームィ!! 新たなる神よ!! 封神せよ!!」
アーリーの声が聴こえたのかどうか、意識が遠のいていたカンナの眼光に蛍光翡翠の光が戻った。




