第3章 9-4 死竜の攻め
マイカが叫び、ショウ=マイラとマイカが地を蹴って宙へ飛んだ。だが、カンナとレラも竜神へ追いすがり、重力風と音響プラズマをまとった剣撃を繰り出して迫るとその余波で周辺が滅茶苦茶となった。岩盤は砕け、土が吹き飛ぶ。空中へ逃れたマイカにもレラの重力波と竜神の死の光線が襲いかかる。同じ重力を操る力であるため、レラの力は黒槍を振りかざして相殺したが、神の光線はまともに食らってしまった。
「やった!」
思わず叫んだのはガラネルだった。どちらかが死ねば、神代の蓋は容易には開けられぬ。カンナとレラは竜神と戦っておりそんな余裕はないだろうし、デリナがいてもヒチリ=キリアは行方不明だ。
だが、間一髪! ショウ=マイラが次元をずらし、マイカを断層へ隠して護っていた。
ガラネルが舌打ちする。彼女は優れた竜騎兵だが、彼女自身に空を飛ぶ力はない。少し機動力は落ちるが、グルジュワンの烏飛竜の死体で状態をよさそうなのがそこらにいたのでガリアの力で操り、とび乗ると空へ舞った。
代わりに尾根の上ではレラが主で、剣法に劣るカンナが補佐でストラ竜神相手に接近戦を挑んでいる。
ガラネルはなるべく離れようとしているマイカとショウ=マイラへ急速に追いすがり、銃声のついでに二人へ弾丸を放った。
だが、ガリアの弾丸ていどではショウ=マイラの次元断層壁を突破できなかった。ここは、やはり死の力を使う。
死の国より召喚されたのは、グルジュワンの大王飛竜、北方の氷河竜、カンチュルクの草王竜、そしてハーンウルムの超主戦竜である冥月竜のドラゴンゾンビであった……。お得意の、超主戦竜級の四天王だ!
しかも、二頭ずつ!! それらが、八方より二人のダールを襲う!
いや、まだだ!
ピ=パ湖の湖面がぐおっ、と盛り上がり、巨大なサンショウウオめいた岩だらけののっぺりとした塊が出現する。それの片手が砕けた島へ手をかけ、さらに身体を伸ばす。パーキャス諸島周辺へ生息する、海の超主戦竜級、大海坊主竜! そんなものまで、ガラネルは死より蘇らせた!
大海坊主は空を飛べないが、ショウ=マイラとマイカが上空から八頭もの死竜に追われて高度を下げたところへ猛烈な超高音高圧蒸気をお見舞いした。
それらの戦いより少しはずれたところで、アーリーとデリナが対峙している。
アーリーが戦闘力を全開にすれば、デリナは敵ではない。しかし、デリナは毒煙けむる骸煙波毒黒檀槍を下段に、アーリーは炎をふきあげる炎色片刃斬竜剣を片手中段にしたまま、にらみ合って上空の激しい神通力の炸裂にもまるで動じぬ。
アーリーのパワーに対し、デリナは本来の速さで対抗する。何度か踏みこみ、その、かするだけで常人ならば即死させる致死性猛毒の穂先を繰り出す。片やアーリーの炎にも浄化の力がある。炎を巻きこみながら、アーリーが器用にデリナの攻撃を捌いた。
「……ええいッ!!」
間合いを詰めてからの最後の必殺の突きも、
「フン!」
ギャン! 眼にも止まらぬ払いで、穂先が弾かれる。デリナは腕ごと槍が持ってゆかれそうな衝撃に耐え、体を崩しつつも再び間合いをとって毒槍を下段に構えた。
その青い瞳と赤い瞳が凝と交差する。
また、上空で爆発が起きる。カンナとレラが、激しく竜神を攻め立てていた。
その陰の下、デリナが動いた。槍先を地面へつきたてると、じわりと毒陣が地を這う。まさに毒蛇だった。地面へかろうじて残っていた背の低い草が、見る間に枯れる。この猛毒は、アーリーといえどくらったらひとたまりもない。
だがアーリー、仁王立ちのまま動じもせず、足元より次々に毒蛇の鎌首めいて吹き上がるまさに毒々しい色の煙を、斬竜剣を一閃、二閃して焼き払ってゆく。
そこへデリナが得意の毒霧による竜翼を広げ、短距離飛行で一気にアーリーへ吶喊した。アーリーにしてみれば、本気で対戦すれば、デリナのこの攻撃もカウンターで一撃のもとに袈裟斬りにできるだろう。
だが、しなかった。
炎を渦巻いて造る楯で毒槍とデリナを受け止める。
デリナが歯を食いしばって突進の勢いを増すが、アーリーも踏ん張ってそれを完全に受け止めた。
「ぬぅああ!!」
炎が爆発し、デリナをその毒ごとふきとばす。
弾かれたデリナが腰から砕けて、しりもちをついた。すぐさま立ち上がって槍を構えたが、アーリーは追撃しなかった。
「……!!」
デリナが涙目となる。




