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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 9-3 竜乱戦

 竜神はしかし、やはり楽しげだった。

 「そなたは死竜の素質があるわえ!」

 「肉弾だ、姉貴!! 長物(ながもの)は接近戦にもちこむんだ!!」


 それはキギノより習った兵法だ。確かに、槍などの長柄(ながえ)の得物へ剣や刀で立ち向かうには、相手の間合いを外して中へ入らなくてはならない。それはガリア戦も同じだった。


 ようやく体勢を建て直したカンナも、上空から黒剣を振りかざして竜神へ向かう。

 「面白いことをしよる!!」

 まだ神の声が出ないストラ竜神、()を構えて格闘戦の体勢をとった。

 


 神々の戦いの足下で、ダールたちが一触即発でにらみ合っている。


 特にガラネルは、ショウ=マイラとマイカの二人を相手にしていた。ガラネルの周囲にも、死より一時的に蘇ったバグルスや竜がわんさか(・・・・)といた。それらが、二人を攻めている。


 だが、黄金の細竹杖とはいえ次元断層の力を持つショウ=マイラの多界断(たかいだん)金破竹杖(こんぱちくじょう)と、強力な物質固定の力を持つマイカの木葉状(もくようじょう)稲妻柄(いなずまがら)黒曜(こくよう)重長槍(じゅうちょうそう)にかかっては、いくら何十というバグルスや主戦竜がいても、基本的に敵ではない。


 だが、きりがなかった。


 バグァ! 型崩れするように次元ごと砕けて、大型重戦バグルスの死体がバラバラとなる。マイカはその固定の力で、周囲の何十という死体をその場へ岩めいて止めている。だが、それらを乗り越えて、続々と生きている死者たちが盛り上がってくる!


 ガラネルは上空の神々の閃光に影を落とし、爆風に髪をなびかせながら、矢継ぎ早にガリアの銃である紫禁(しきん)星天(せいてん)竜騎銃(りゅうきじゅう)を撃ち続ける。それだけだ。その銃で二人を攻撃するでもない。ただこの銃声が、次から次へと死者を呼び起こす。


 「……きりがありませんよ、マイマイ」

 背合わせで周囲を埋めつくすバグルスや竜どもに、槍を構えたマイカがつぶやく。

 「時間稼ぎとはねえ……」


 ショウ=マイラも、予想に反してガラネルが直接攻撃をしてこないことに少し戸惑った。


 「確かに二対一だけど」

 「勘違いしないでよね」


 ガラネルが銃を肩に担ぎ、不敵だがけして油断のない目つきで二人をにらみつける。


 「ただ戦うってんなら、ここからだってあんたたちを蜂の巣にできるのよ」

 「では、やればよろしいではないですか」


 マイカが、すました顔で挑発する。ガラネルが王族特有のその気位の高さで目元に小皺を作ったが、


 「あんたたちが、素直に私と戦うわけがないから云ってるのよ!」

 ショウ=マイラが遠慮なく嘆息した。


 「さすがに、読まれてる……か……。あー、どうしよどうしよ……どうしましょう……ね、ね、マイカ、ちゃんとあなたも考えて!」


 すなわち、ガラネルの役目は、二人と戦って倒すことではない。相手もダール……しかも二対一。万が一、負けでもしたら取りかえしがつかないことになる。ガラネルは二人に神代の蓋を開けさせないために、こんな戦い方をしていた。そう。ストラ竜神が、カンナとレラを倒すまで! そして……ショウ=マイラとマイカの作戦とは。


 ガウン、ガウン……!! また銃声。割れた地面より、次々にバグルスが現れる。……いや、もうふつうの人間もいた。ガラネルがこれまで殺してきた、数多の人々だ。


 狭い聖地の砕けた尾根の上の、ショウ=マイラとマイカの周囲には、足の踏み場もないほどの死者の大軍団がひしめきあっていた。


 上空から、ひっきりなしにカンナ、レラと竜神の力のぶつかり合いの爆音と閃光が降ってくる。


 「……時間がありませんよ、マイマイ……長丁場は向こうに有利……一気に片をつける手筈では……」


 「分かってるわよお! いま考えてるんだから……」


 そこへ、これまでで最も大きな爆発が上空から襲ってきた。さすがにでかい。思わず三人とも天を見上げる。


 「……カンナ!?」


 ガラネル、爆発の後、カンナとレラ、そして竜神が激しくガリアで打ち合っているのを確認した。どうやら、遠距離戦から接近戦へ移行したようだ。


 その三人が、見る間に降下してくる!

 「……あぶない!!」

 マイカも叫んだ。


 まず竜神が着地して、少女の姿ながら大きな戈を振り回す。戈先が空気を裂いて竜神の喉の代わりの竜笛となって甲高い音を出した。それが、威力は弱いが紫の光となって周囲を薙ぐ。敵も味方も関係なかった。ガラネルも慌てて避け、バグルスや竜の死体がいっせいに両断されて爆発する。


 「いまです!」

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