第3章 9-2 姉妹連携!
それを遠目に見ていたホレイサンの人々の歓声と歓喜たるや、言語を絶するものがあった。
「レラ!! 気を抜かないで!!」
カンナの声はもう、ガリアを通じて直接レラへ届いている。レラも同じだ。マレッティとスティッキィがガリア同士で念話のような力を発揮したこともあったが、ガリアには元々そういう力が備わっていたと考えられる。誰も気づかなかっただけで。
明後日の方角で、重力の防御壁ごしに今の大炸裂を見ていたレラの元へ、ストラ竜神が二撃めを打ちこんだ!!
「!?」
本能で黒刀をかざし、重力風が重なり合ってレラを護る。きれいに三本の紫色の怪光線がカーブを描いてレラを避けた。
だが、それは牽制だ。
竜神め、戈をふりかざしてレラへ突進する!
レラの周囲に、彼女がこれまで殺してきた人々が浮かび上がった!
「なんだよお、こいつら!!」
レラはそんな亡霊が現れても、なんとも思わぬ。それでも、集中力が削がれた。周囲の亡霊めがけて黒刀を横薙ぎに一閃すると、亡霊たちは重力風でたちまちなぎ倒されるが、竜神の接近を許す。
「甘いな! 紛いの妹神よ!!」
神の天限儀「紫皇竜金眼紋神戈」が遠間より振りかざされる。生と死を超える紫竜の神器だ。ただの武器ではない。戈先が幾つにも別れ、分身となって間合いを攪乱し、レラを襲った。
レラ、超重力で空間を歪め、自らを隠そうとするが神器はそれらを超越して迫った。
やはり、カンナと比べてまだ経験が浅い。特に防御は、自らより強いものと戦った経験があまり無く、うまくない。
「こんのお!」
ここで、ホレイサン=スタルよりウガマールへ来ていた剣豪キギノより叩きこまれた剣技が活きる。刀を頭上へ斜に構え、神の一打を次々に受け流してゆく。こういう技は踏ん張りが必要で、レラは自らの重力の力で空中へ足元を作り、踏ん張りながらその足元をずらして、間合いもとる。
「やりおる!」
竜神がにやついた顔のまま、間合いを詰める。レラがさらに高度を落としながら下がってゆく。一方的に攻められているようで、レラは大きく位置をずらしてゆく。
ふと、レラがその重力の塊を盾ではなく再び弾丸として竜神めがけて飛ばす。ストラ竜神、戈を振り回して難なくその目に見えない力場の塊を弾いて防いだ。
その真上より、カンナが黒剣を叩きつける!!
レラが囮となって誘導したのだ!
見たこともないような巨大なプラズマ球電が太陽めいて輝いている。神といえど、実体化している。攻めて攻めて攻めまくって、肉体を再生させる神通力を使い果たさせるしかない。
「……天限儀の力を上げてきおったか!!」
ストラ竜神、まだ楽しそうにうそぶく余裕がある。
まともに炸裂したら湖の一部を削って形を変えるほどの威力はあろうカンナの特大の一撃を、ストラの姿をした紫竜神はその戈を突き上げ、真正面から受ける。そのまま、竜の咆哮をハイソプラノのH音で発すると、強大な真紫の光線がその大口の前あたりより発せられ、補助として眼力も光線となってカンナの球電を貫いて完全に破壊してしまった。
大爆発がおき、湖水が衝撃で盛り上がって雨となって降り注ぐ。その雨の中、人々の歓声と祈りがまたも沸き上がる。
その爆発をなんとか音響で防いだカンナだったが、完全に硬直していた。我ながら、とんでもない威力だ。
そこへもう一度、竜神が死の光線を吐く。
「……!?」
が、声が出なかった。ストラ竜神、さすがに喉を押さえた。実体化した生の肉体は、無尽蔵に神の力を出し続けられるわけではない。
「いまだ、姉貴ィ!! 攻めるんだよ!!」
レラが刀を振り上げ、竜神めがけて高度を上げる。
「やかましい!」
ふつうの声は出る。ストラ竜神が戈を振ると、レラへ死者がごっそりと掴みかかった。全てレラがこれまで殺してきたウガマールや南部王国の名もない人々だ。両手両足にすがりつき、腰や背中にもつかみかかり、髪もつかんで引きずり降ろそうとする。
「……また殺されてえのかよ!!」
レラの眼が空色に光る。重力がのしかかり、次々に蘇った死者が怨嗟を声を残して湖へ落ちてゆく。まるで地獄へ蹴り落としているかのようだ。
「罪作りな!」




