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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 4-3 シャクナ

 アーリーは嘆息し、


 「ちょっとカンナの様子を見てくる。ショウ=マイラ、なんとしてでも、カンナを調整できる施設を思い出してくれ」


 小屋へ戻った。マイカがその後ろ姿を見つめ、ショウ=マイラはこんな状態で大丈夫かと少し心配になった。


 「ね、ね、ね、マイカ、あなたちょっと、休眠する前より冷たくなったんじゃない?」


 「誰かが冷たくもならないと、神には勝てませんよ」


 両手を中途半端に上げ、マイカが翠色の半眼でそうつぶやいた。ショウ=マイラが、にっこりと笑った。



 小屋へ戻ると、レラが甲斐甲斐しく囲炉裏で湯を沸かし、桶へとって濡れ手拭いをつくって、カンナの顔などを拭いてやっていたのでアーリーは驚いた。そういうことをする子だとは思わなかった。


 「カンナはどうだ」

 「だめだ、まったく目を覚まさないよ」

 泣きはらした眼で、レラが云う。


 「アーリー、どうするんだ。姉貴の身も心配だけど、それ以前にこんなんじゃ勝てねえぜ」


 「む……」

 くわえて、意外と冷静だ。


 「いま、聖地のバグルス施設の予備施設を検討つけてもらい、そこへ向かう。何らかの調整槽があるだろうからな」


 「遠いのか?」

 「わからん」 


 レラが顔を上げた。アーリーが履き物を脱ぎ、土間から上がってカンナとレラの囲炉裏向かいに座った。レラが、そこらに転がっていた湯呑へ湯を入れて出す。


 「最悪、姉貴がダメだったらアタシが戦うよ。でも、自信がない」

 「うむ……」


 「そもそも、どうやって勝つつもりなんだ? アーリーたちは何十年もそれだけを考えてきたんだろ?」


 「勝つつもりはない」

 レラの目が丸くなる。そして、わめき散らす前にアーリー、


 「神に勝つとは神を殺すことだ。神は殺せない。だが、神代へ追い返すことはできる……ウガマールでバスクスがやったのはそれだ。我らもそうするしかない」


 「追い返す……な。ま、確かにそうだろうけどよ」


 レラも木の汁椀のようなものを見つけ、それへ囲炉裏へかけてある鉄瓶より湯を入れて飲んだ。


 「アチ……でもよ、追い返すったって、どうやって?」


 「神とて、現世では万能ではない。あれはそういう神ではない……攻めて攻めて攻め続ければ、力は弱まる。そこで一気に再び神代の蓋を開き、追い落とす。そして、ここからが重要なのだが……二度と神代の蓋が開かぬよう、封印しなくてはならない。これが、おそらくダールには無理で、バスクスにしか出来ないのだ」


 「ふうん……」


 「蓋を開けたり閉じたりは、マイカとショウ=マイラにもできる。というより、彼女たちにはそれをやってもらわなくてはならない。そしてレラ、おまえとカンナで、神代の蓋を封印するのだ」


 「どうやって?」

 「それは……カンナが秘儀を伝達されているはずだ……」

 「そうなのか?」


 「そうよ、そのために皇太子殿下にちゃんと頼んでおいたから。きっと、カンナには何かしらの秘儀伝達が行われているのよ」


 入り口で、ショウ=マイラが力強くうなずきながら云う。

 「きっとね。ね、ね、アーリーもそう思うでしょう?」

 「あのカンナの戦いぶりを見るに……おそらく……な」


 そうでなくば、さしものカンナもあそこまで真正面から戦いを挑みはしないだろう。アーリーはそう考えていた。


 「でも、負けたじゃねえか」


 「一人ではさすがに……な。次は違う。我々がいる。その中には、おまえも入っているのだぞ、レラ」


 レラが、満足げにうなずいた。

 「で、ショウ=マイラ。どこへ行けばよいか思い出したのか!?」

 「もちろん!」

 ショウ=マイラが土間へガリアの金竹杖で地図を描く。


 「ここが聖地。私たちがいるのがこのへん。この聖地を南北にぐるりと回っている街道を東へ歩いて五日ほどの場所に、シャクナっていう田舎町があるんだけど……そこに聖地の七竜神の分詞された大きな神社があって、門前町なのよ」


 「そこに予備施設が?」

 「そういうこと」

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