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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第3章 1-7 ショウ=マイラ

 マイカはさらに槍を大きく振りかざしてその巨大円盤を持ち上げ、そこから勢いよく岩だらけの地面へ叩きつけた。


 バアン!! 振動と音がして、地面へぽっかりとオレンジ色の穴があいた。

 「さ、行きましょう」

 「……なんだって……!?」


 自分とカンナがあれほど苦労して開けた神代(かみよ)への入り口を……こんな槍を回しただけで開けてしまったというのか!? レラはあまりの出来事に茫然として信じられず、アーリーを見上げた。宵闇にその眼を炎色に光らせたアーリーも、マイカを凝視している。


 「さ、行きますよ。行かないのなら、私だけで行きますが?」

 「ア、アーリー……ホントにあんなので、神代へ行けるのかよ!?」

 「あれこそが、真の神鍵(しんけん)の力だ」


 アーリーが云うや、前に出たのであわててレラも続く。マイカがにっこりと笑って、そのまま真っ先にオレンジに光る穴へ足から飛びこんだ。アーリーと、レラも続く。


 三人が消えると、穴も消えた。

 星空だけが、残る。

 


 闇をどこまでも落ちる感覚。しかし、思っていたより早く地面と思わしきものに両足がついた。周囲は漆黒でぬり固められ完全に闇だったが、なぜか互いの姿は見ることができた。


 「こっちですよ」


 マイカの声がし、長い黒鉄色の髪が遠ざかったので二人もその後ろを歩く。すぐに、ぼんやりと明るい場所についた。部屋のようでもあり、広い空間の一角のようでもあり、判然としない。壁も岩壁のようで、無機質な漆喰壁のようでもあった。家具類は一切ないが、一人の女性が安楽椅子のような物へ座って呑気にねむっていた。黄色地の古いディスケル=スタルの宮廷装束に近い服を着た、同じく黒髪の細面の女性だった。


 「マイラ、起きてください」


 マイカが声をかける。もう二百五十年もこの神代と現世の狭間で隠れている黄竜のダール・ショウ=マイラだった。ガラネルが復活させたヒチリ=キリアの次代のダールにあたる。


 「マイラ……マイマイ、起きなさい」

 マイカがその肩を揺すったが、ショウ=マイラは起きなかった。

 「マイマイ!」


 誰だか知らないがこのやろう、とレラがいらついて、

 「起きろ、この!」


 その椅子をいきなり蹴りつけた。ガタンと椅子が揺らいでショウ=マイラが跳び起きた。そして驚くマイカやレラ、アーリーを見て、甲高い声をあげる。


 「あらま! まあまあまあ、ちょっとやだ、いつ覚醒したのよ!? マイカでしょう!? 久しぶりね、何年ぶりかしら!? それにアーリーも!」


 忙しない調子で手を動かしながらまくしたて、黄金に光る瞳をくりくりさせる。

 「私は三十年程ぶりですが、貴女は」

 アーリーが懐かしげに顔をほころばせた。


 「そうねえ、私は、三刻くらいかな? 時間の流れが歪んでいるからね、よくわかんないけど」


 そして、ショウ=マイラはレラを見た。


 「まあまあまあ、ちょっと、バスクスを二人も造ったのねえ!? すごいじゃない、アーリー、よくやったものね。これなら、カンナが勝てるかもしれないわね!」


 「カンナに会いましたか?」

 「会ったわよお! ついさっき……あんまり話す時間は無かったけどね」

 云うや、ハッと息をのみ、


 「ちょっとやだ! あらあら、やだやだやだ! もしかしたら、ちょっとこんなことしてる暇は無いんじゃない!? 行きましょう行きましょう!! 四人で! カンナを助けるのよ! そうだ、あたし、みんなが来るのを待ってたんだわ! 寝ちゃったけど」


 有無を云わせず、鈍く黄金に輝く細竹の杖を出す。彼女のガリア「多界断金破竹杖(たかいだんこんぱちくじょう)」だ。


 「ショウ=マイラ……行って何をするのか、おわかりでしょうな」


 アーリーがセカセカと移動の準備を始めるショウ= マイラへ向け、引き締まった顔を向ける。ふと、ショウ= マイラが振り返った。


 「もちろん。竜の時代を終わらせるのよ」

 さも当然のように、全ダール統括の権限すら有する黄竜のダールが、答えた。

 「では、行こう。最後の戦いだ!」


 やおら、アーリーが宣言する。マイカ、ショウ=マイラもダールの顔となる。レラは逆に、緊張で眼が泳いだ。


 「じゃ、ここに立って。さあさあ、急いで! いい? 私たちはピ=パへ行くわよ。ちょうどカンナたちも行ってるころだと思うけど……さあさあ、立って立って」

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