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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第8部「神鳴の封神者」
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第2章 5-5 ガリア復活

 マレッティが嫌悪に顔をゆがめながら声を絞り出すも、何と云ってよいか分からなかった。


 「バグルスなのか?」

 パオン=ミも手で口を覆う。あまり良いとは云えない、竜にも似た生臭さが漂っていた。


 「生体兵器ですよ。天限儀を封じるだけの。三輝綺晶(さんききしょう)を埋めこまれ、自身の生体振動で四六時中対天限儀の波動を出すだけに造られ、生きています」


 スミナムチが淡々と解説した。


 だが、マレッティとパオン=ミの嫌悪は晴れない。こんな生き物・・・・・・が、人間の手で作り出されたとは……。


 「ひと思いに殺してやるのも人の(ごう)よ」

 ミナモが能面めいた顔で云う。


 あの高さより岩へ叩きつけられ、手も足も、尾も翼も……顔すらない肉の塊は、さしものバグルスの頑丈さをもってしても苦し気にびくびくと動いている。ガリアを封じる波動は強弱を繰り返し、次第に弱まっているように感じられた。いまならいけるだろう。二人はうなずきあい、一気に光輪と火炎弾を叩きこんだ。閃光と火柱と爆裂が同時に起こり、細胞のひとつまで分解され燃え尽きて、バグルスの変種ともいえる対天限儀器は燃えカスとなって風へ流れた。


 とたん、ガリアを押さえつけていた力が一切無くなったのを感じる。


 「この大きさのものは、聖地でも上位だったはずです。これ一つでも波動の波状効果が消えて、かなり天限儀は解放されたはずです。あと、島の先端へ向かって二つでも破壊すれば、島の半分は自由に天限儀が遣えるでしょう」


 博士の解説も、耳に入らなかった。ただ、マレッティは、

 「……すごおい! ちょっと、あれ見て!!」

 燃え残った中に、人の頭ほどの巨大な三輝綺晶を発見して感傷も何もぶっとんだ。


 「あれで、いくらくらいなんだろお!?」

 「持って歩くのは無理ですし、あんな大きなものが出回っては価格も大暴落ですぞ」


 マラカの声がして、その姿も現れる。マラカもガリアが完全に復活した。

 「あ、そっかあ……」

 マレッティが拍子抜けの声を発した。


 「手柄であった。よくぞ、お堂ごと地面へ叩き落してくれた」

 「恐悦」

 パオン=ミの訳でミナモに云われ、マラカが礼をした。


 「そろそろ、バスクスたちも出立しておろう。急ぎ、第二第三の対天限儀器を破壊せねば」

 五人は次の目標へ向け、すみやかにその場を後にした。



 6


 ライバのもたらした密書を確認したディスケル皇太子は、やや意外そうな顔をして、その開いた紙縒(こよ)りをしっかりと握りしめた拳の中へ仕舞いこんだ。


 「思ったよりやりよる。単純な手だが効果は大きい」

 「な、なにか?」


 スティッキィが心配げな顔で尋ねた。近衛将軍も緊張で表情と肩が強張っている。


 「バスクス殿、出立が早まった。儀式は明日だそうだ」

 「え?」


 云うと同時に、この単純な罠の絶大なダメージを考え、身震いする。そして、それを見破ったことの幸運をかみしめた。


 「一同、仮眠し、夜明け前に出立してもらいたい」


 皇太子の下知があり、全て決まった。既に進撃路と目標は定まっている。目標はデリナの密告によるピ=パ島北西北にある小島。進撃するのは尾根伝いの路を往く正攻法だ。


 「天限儀封じ破りはミナモ殿がもう動いておるだろう。みなみな、頼んだぞ」


 将軍が両手を合わせて掲げ、深く礼をする。スティッキィとライバも宮中生活ですっかり馴染んだのでその通りの礼をした。しかしカンナ、不安げな顔のまま、


 「皇太子さまも、ここを脱出してください」

 「なに!?」


 皇太子の顔が驚きと心外に彩られた。スティッキィ達が緊張で固まった。

 「バスクス殿、余も一蓮托生。皆の帰りをここで待つ所存ぞ」


 「嫌な予感がするんです。なんか……わかんないんですけど……もちろん、全力で戦います。戦いますし、おそらく、神様の世界の蓋を閉じるやり方も分かってます。ウガマールで、夢の中で教えてもらいました」


 これは、調整槽で記憶を植え付けられたことを意味する。


 「でも、それとは全然関係ないところで、勝ちとか負けとかと関係ないところで、ここは危ない気がします。きっと……きっと(・・・)この島は(・・・・)無くなります(・・・・・・)


 最後だけやけにきっぱりと云い放ち、みな驚愕の表情でカンナを凝視した。

 「む……」

 さしもの皇太子も二の句が継げぬ。

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