表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガリウスの救世者  作者: たぷから
第1部「轟鳴の救世者」
59/674

第3章 7-4 覚醒

 「フ……!!」

 カンナはフレイラを地面へ横たえた。震えが止まらない。


 最後に、マレッティを心配したのだろうか。マレッティと力を合わせてアーリーを助けろ、ということなのか。それとも、なにか意味があるのか。カンナは分からなかった。それどころではなかった。


 「……デリナァ……!」


 フレイラは、約束通りデリナの動きを止めた。足から針を……いや、地面の針から足を引き抜いたデリナであったが、まだ猛烈な痛みと痺れが残る。これは、ダールといえど完治に時間がかかる。いましかない!


 「デリナアアア!!」

 「カンナ……カームィイイィ!!」

 「ふんぬぁあああああああ!!」


 カンナの気合が膨れ上がる。ビシャア!! ゴガラアアア……!! デリナの耳を連続する轟音が襲った。積乱雲の中の雷鳴を間近で聴いたならば、きっとこれほどのとてつもない轟音が鳴り響くのだろう。空気が震え、毒の霧は呆気なく押し流される。もうデリナが何を叫んでも何も聴こえない。カンナの雄叫びも聴こえない。そして、その溢れ出る震電! 眩しくて、デリナは眼を向けていられない。カンナが稲妻の化身となった。プラズマ光が奔流、灼熱が空気を焦がす。デリナはたまらず下がった。


 「こ、これほどとは……おのれ……おのれまさか……!!」

 デリナも決意した。

 「まさか、雷竜かあ、おのれはあァああ!! どおわああシュああ!!」


 喉の奥から声を絞り上げ、デリナの肉体が膨れ上がる。ドレスを引き裂き、背中に突起が出現。腕が伸び、足も太く筋肉が膨張する。その白い肌が、漆黒の鱗に覆われてゆく。大きな一本角が前頭部からつき出て、たくましい尾がのたうった。デリナも、真に半竜化した。これがダールの真の姿だ!


 「こぉのっ、バァケモノめえええ!!」

 稲妻をふりまいてカンナが突進する。

 「どっちがああああァ!!」


 デリナは毒槍を構えつつ、真っ黒い、毒の炎を吐きつけた。さらに、肩口から管が出現し、火球を連続で吹きつける。それがカンナめがけて飛び、次々に爆発した!


 波動音圧の障壁を張り、カンナはそれに耐えた。

 「こんのぉおお!!」


 お返しに、黒剣を八相ぎみに振りかぶって横殴りに振りつけた。剣から雷が大量の球電となって弧を描き、デリナへ飛んだ。迫る炎とぶつかった瞬間にこれも全て爆発する。炎と雷が相殺され、爆風に顔を明らめ、髪をなびかせながら、デリナとカンナが走り寄って間合いをつめ、黒槍と黒剣で直接激突! どういう効果か、ガリアの力なのか、二人は一気に持ち上げられ、空中高く飛び上がった。


 しかし、二人とも自らが宙へ舞ったことすら気づかない。低く垂れ込めた雲へつっこみ、螺旋に雲を巻きこんで、周囲の水蒸気が摩擦で静電気を無尽蔵に発する。集積され膨れ上がった電圧で空気がひき裂かれ、雷鳴が容赦なく鳴り渡る。カンナの独壇場に思えたが、デリナの毒雲と漆黒の炎も雲と共に星雲めいて渦を巻いた。


 にらみ合っていた二人が、その気合の充実を引金に、再び剣と槍を交えた!


 「ううあああ!!」


 デリナが黒炎をまとって槍を突き出し、カンナがアートの障壁のように音響を楯にして炎や毒雲を払いつつ、雷撃をまとった剣を繰り出す。


 「えええやああッ!!」


 二度、三度と打ち合わされるたびに雲の中で大爆発がおき、高低の轟音が雲を突き抜け、地上にも届いて圧する。竜は怯え、戸惑った。衝撃波がサラティスまで届いて、城壁を揺るがし、家々のガラス窓を割った。神話にある、神々の戦いというのがもし本当にあったのならば、こういうものなのだろう。空を見上げた人々は、誰もがそう思った。


 「うううおおおおあ!!」


 埒が明かず、デリナが黒槍と一体化し、毒霧をまとい、背中より漆黒の炎を吹きかざして一気にカンナへ突進する。


 「ふぃゃああああ!!」


 カンナもさらに気合を入れ、ズガッ、ガッ、ズガアッー! 連続して轟音と衝撃波を全身より放った。波のように打ち寄せるデリナの毒炎を、カンナが自らの音で打ち消し弾き飛ばす。デリナの突進は、空中で音圧の壁に押しとどめられた。しかし、デリナの背後から猛烈に炎が吹き上がり、音の壁を裂いてデリナがカンナへ肉薄する。


 迫り来るデリナめがけ、カンナが黒剣から轟音と電流を限界までまき散らした。それを全身に受けても、デリナは止まらなかった。その穂先がカンナへ迫る!


 カンナはしかし、避けることもなく、黒剣を天高く掲げ、なんと自らへ雷を雨あられと逬らせた!


 その猛烈な雷球の塊へデリナはつっこむ!

 「アアアアア!」


 凄まじい電流の嵐に打ち据えられつつも、デリナが雷をかき分け、カンナへ近づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ