表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガリウスの救世者  作者: たぷから
第1部「轟鳴の救世者」
57/674

第3章 7-2 毒陣

 「カンナ、下がれ、下がれ!」

 カンナが下がる。デリナは、カンナを無視した。アートから倒すつもりか!


 だがカンナは下がりつつ、黒剣を出して、遠巻きに観察しながら慎重にデリナの気を探った。デリナと剣を共鳴させなくてはならない。まだ、一発で剣と敵を共鳴させるまでには到らない。剣を下段に構え、大地からデリナの魂とつながろうとする。


 (落ち着いて……落ち着くんだ……)

 心臓が高鳴る。汗が吹き出る。あの黒い毒の霧が恐ろしい。


 しかし、向こうだって、この黒剣の振動と雷撃が恐ろしいはずだ。

 カンナはとにかく集中した。


 デリナがさらに大柄なバグルスを呼び込み、アートへ向かわせる。バグルスは基本的に全員がその身体能力を駆使しての格闘戦を得意とする。レスラーじみたその体格で、アートへ突進した。しかしまともに当たってはバグルスに勝ち目はない。大柄なバグルスは接近しつつ猛烈な勢いでその牙から毒液を吐きつけ、アートが楯で防いだ隙に少年バグルスが側面から突進して攻撃を見舞った。アートは右手のドリルを解除し、その攻撃を障壁で防いだ。


 アートの足が止まる。


 バグルスども、一気に離れた。アートの足元より、間欠泉のように毒の霧が噴出し、それが編み込まれて網となり、一瞬でアートを取り囲み、締め上げた。


 「……しま!!」


 アートとカンナの観察力にもっと余裕があったならば、デリナを中心に広範囲で草がみな枯れていたことに気づいただろう。デリナは既に地面の下へ蜘蛛の巣状に毒の陣を張っていた。二人がその陣の中へ入り込むよう誘導し、いま、アートを捕えた!


 猛毒の縄がぎりぎりとアートを締める。障壁で切断する間もなく、毒が一瞬で回る。火を当てられたかのごとき激痛、脳天まで麻痺。呼吸が止まる。肉体が云うことをきかない。大量の血の泡を吹いて、アートが倒れ伏した。白目をむいて、激しく痙攣し、身体が妙な方向へ曲がって行く。


 「アッ、ア、アアートオオォ!!」

 カンナの集中が切れる。続いて、デリナの勝利の高笑い。


 「わあああああ!!」

 カンナが走り込んだ。

 「ばかめが!!」


 デリナがカンナめがけ、同じく毒網を絞った。が、黒剣が衝撃波を発し、その霧の縄を一撃で吹き飛ばした。


 「なにっ……」


 ズ、ド、ゴゴゴ! 突如として地鳴り! いや、これは黒剣の振動! グワッ、と空気を裂いて周囲を圧し、稲妻がほとばしった。


 ドッ、ガガアッ!! 身をすくめる衝撃音がして、大柄なバグルスが雷撃に打たれ、胸が焼け焦げてひっくり返った。そのまま煙をふいて動かない。


 「この、ガキめが!」

 「ううっ、わあ、あああ!」


 カンナがデリナへ迫り、稲妻のほとばしる黒剣を叩きつけた。デリナが真っ黒くねっとりとからみつく霧の毒槍で迎え撃つ。一合、二合と刃を交えたが、その重さが段違いだった。しかも、デリナの手に痺れが残る。稲妻が、高圧の電気が、槍を伝ってデリナの腕まで届いている。デリナの毒は、届かない。


 「……己の対策も済んでおるわ! 我に同じ手は、通じぬ!」


 ドレスの足元より、裾を巻き上げて真っ黒い煙が吹き上がる。カンナは、歯を食いしばって息を止め、後退った。毒の煙だ。デリナはそれを操り、自身へまとわりつかせた。まるで毒蒸気の鎧だ!


 「なんのつもり!?」

 カンナが電流をぶちまけた。煙に吸収され、デリナがほくそ笑む。

 「お前なぞ!」


 ごっそりと足元を煙が流れ、移動する。風が吹き巻いて、毒の陣地を広げて行く。カンナは下がって避けながら、追い込まれた。少年バグルスがカンナの走る先に待ち受ける。


 「……こおおいつめえええ!」


 カンナがバグルスめがけ、黒剣を振りかざす。ビリビリと剣が振動した。だが、少年バグルスは身構えたまま、まったく動かない。


 「なにをやっている!?」

 デリナが叫んだ。カンナは気づいた。バグルスの首元に、太い針が一本、突き刺さっている。


 「ええいッ!」


 雷撃と斬撃と衝撃が同時に炸裂する。バグルス、肩口から袈裟に真っ二つとなり、感電で焼け焦げ、さらに爆発微塵!


 衝撃波で、毒霧も下がる。

 デリナが眼をむいた。


 黒い霧の奥より現れたのは、

 「フレイラさん!」


 フレイラは両手の指間に幻麻針(げんましん)を四本ずつ握り、手を交差して構えていた。


 「外で揉まれて、ちょっとはやるようになったじゃねえか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ