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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第6部「轟鳴の滅殺者」
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エピローグ2 デリナ

 「カンナのおかげで、クィーカも解放された。全部カンナのおかげだ」

 「そうか……」

 「なあ、もう、よさないか」

 アートが切実な声を出す。アーリーは無言だった。


 「アーリー……カンナが聖地で竜神を封じずとも……あと何十年かしたら、黄竜と碧竜が目覚めるんだろう? それでいいじゃないか。本来、その二人がする仕事なのだろう? これまでの五十年間も、何もおきていないんだし……」


 「それでは遅い」

 「なにがだよ!」

 アーリーはまた無言となった。アートが杖の先で地面を強く打った。


 「いつもお前は、肝心なところは隠している! 確かに、我々もお前の計画に乗り、利用した。しかし……もう、ウガマールはお前の計画を必要としない。分かるな。お前はもう、用済みだよ!」


 「そうか……」

 「そうか、じゃねえぞ!!」

 アートがアーリーの肩を左手でつかんだ。


 「レラを連れてゆくことは許可しない!」

 「許可されなくてけっこうだ」

 アーリー、その手を払いのけ、凄まじい形相でにらみ返す。


 「なにを……!!」

 「アート……あと少しだ……」

 「だから、なにがだよ!」


 「クーレ神官長は死んだ。神官長は自らの野望を私へ重ねた。だが私にとっては、神官長の野望は邪魔だった。どうしたものかと思案していたが……それを、レラが排除した。レラの存在は予定調和を崩している。……レラがいることで、連中の調和も崩される可能性が高い。レラを私へ預けるのだ……それが、ウガマールのためでもある」


 アートは、慎重に暗がりの中でアーリーの表情を観察した。その目の色、唇、表情の切れ端を。


 「……連中とは、ピ=パの審神者(さにわ)どものことか」

 「そうだ」

 「ピ=パには、ウガマールで失われた秘儀が残っていると聴くが」

 「そうだ。神をこの世へ顕現させる秘儀がな」

 「神を実体化させるという、アレか」

 「そうだ」


 アートの眼が丸くなる。完全に古代創世神話の話だ。現実のものではない。

 「まさか」

 笑ってしまった。

 「笑いごとではないぞ、アート」

 アーリーの顔は、どこまでも真剣だ。


 「秘儀には、黄竜と碧竜のダールの秘術が必須。かといって、黄竜も碧竜も自ら死ぬことかなわず。なぜならば、ダールが死ねば次のダールが生れるだけだ……ゆえに、百年以上も前に両者は姿を消したと云われている。……そのため、それぞれの聖地ではそれぞれ両ダールの代わりを務める竜真人(りゅうのまひと)を用意することにしたのだ。なぜならば、その秘儀を行う星の巡りは、もうすぐだからな」


 「ちょっと待て」

 アートの顔が、笑いから半分引き攣った。

 「いま、なんと云った?」

 アーリーは、再びマイカの封じられている巨大な石の檻へ眼をやった。


 「おい……アーリー……もう一度、云え」

 アーリーは無言だった。

 「むこうにもカンナに匹敵するバスクスがいるって云ったのか!? ああ!?」


 アートがつばを飛ばした。

 「なぜ、いままで黙っていた!!」

 「確証が無かったからな」

 「ほおーぉ」

 アートが開き直る。


 「では、いまでは確証が得られたのか。さすが、竜の国にも色々とつながりのあるアーリー殿ですなあ。聖地にも草を送りこんでいると」


 アーリーが、踵を返して退室しようとする。

 「なんとか云えよ!!」

 「デリナだ」

 「なに!?」


 「デリナの最後の便りにそうあった。おそらく、デリナがその任に使われる。バスクスが三人。二対一だ……こちらに分が有る」


 アーリーの決然とした非情な言葉に、アートは息をのみ、立ちつくすのみだった。


 重い扉の音を立ててアーリーが出て行ってしまい、暗闇の中にアートが一人残って、いつまでもその場に立っていた。


 その表情は、驚きと憤りに、厳しく固まっている。

 水の中のマイカが、ほんの少し、眼を開けた。

 

 

 第6部「轟鳴の滅殺者」 了

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