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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第6部「轟鳴の滅殺者」
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第2章 2-1 謎の敵

 スティッキィが振り返ってウォラを見やったが、ウォラは見たこともないほどに喜悦で顔を歪め、顔に右手を当て、声を殺して笑っていた。スティッキィは見なかったことにして、前を向いた。地面へ下りてバリバリと光っていたカンナが、急激にその光を失う。


 「行こう!」

 ライバが、瞬間移動を行う。



 「カンナちゃあん!? どこお!?」

 「カンナさん、カンナさん!?」


 二人が、カンナのおりたあたりを捜索したが、明かりがないのでなかなか見つからなかった。それにしても、あの戦いの真下は、恐ろしいほどに木々も吹き飛ばされ、焼け焦げ、地面がえぐれていた。


 「二人とも、こっちだ!」

 ウォラの声が暗闇よりし、二人が見当をつけて駆けよる。


 星が再び輝いているとはいえ、地上は明かり一つない。どうやってカンナを見つけたのだろうか。闇のガリアで闇を見通すスティッキィですら、発見できなかった。


 「なに……カンナの影を写したのだ……影に自分を探させた。やはり、私の力では、カンナの影を写すのが精いっぱいだ」


 意味が分からないが、とにかく、ライバとスティッキィは横倒しに土の上へ倒れるカンナの傍らに膝をつけた。暗くてよく見えなかったが、スティッキィには見えた。少し眼鏡のずれたカンナが、寝息を立てている。スティッキィがそっとカンナを抱き上げ、その頬を手で丁寧にさすった。カンナは、目を覚まさない。


 「ウォラさんは、カンナさんの戦った相手を、知っているんですか?」


 近くで仁王立ちに周囲へ気を配っているウォラへ、ライバが尋ねる。ウォラは、周囲の地平線から目を離さずに、


 「ああ……。だが、知ってるだけだ。目の当たりにしたのは、初めてだ」

 「いったい……なんなんです?」

 ウォラはしばらく答えなかったが、

 「いずれ分かる」

 とだけ、つぶやいた。

 まだ夜明けには遠い。

 流星が落ちた。

 静寂で、耳が痛い。



 2


 朝となった。


 明るくなって、周辺の「被害」の大きさに、三人は動揺した。スティッキィもライバも、カンナの「力」を実際に見て知っているつもりだったが、けた違いに範囲が広い。もともと周囲は荒野だったので、これでも実感がわいていないが、もし街中だったら、トロンバー……いや、ラクティスていどなら、きれいに整地されたようにすべて破壊され、吹き飛ばされているだろう。まして、ところどころ、垂直に衝撃波をくらったのだろうか、クレーターめいて大穴が空き、地面がめくれている。我々の世界でいう、艦砲射撃か爆撃をくらったようなものだった。


 「こんな……」

 ライバはそう云ったきり、絶句して息の音も聞こえない。

 風がふきわたって、日の出と共にたちまち上がり始めた気温を熱風として運んでくる。 


 「ん、ん……」

 スティッキィの腕の中で、カンナが目を覚ました。

 「あれ……? どうしたの?」

 自分がスティッキィの膝の上で抱かれているので、不思議がる。

 「カンナちゃん、気分はどお? ……あっ、まだおきちゃだめよお」

 「だいじょうぶだって……」


 スティッキィの腕を離れ、カンナは立ち上がった。あまり周囲の景色に違和感はなかったが、ウォラとライバがまだ緊張した様子で周囲へ気を配っているし、よく見ると、もっと草木があって草原然としていたはずだったが、まるで大規模に整地されたように地面がえぐれ、むき出しとなって、ところどころ隕石でも落ちたのかという穴が空いている。


 「どうしたの? これ」

 「おぼえてないのお!?」


 立ったスティッキィが目を丸くし、カンナは顔をしかめた。また、無意識でガリアの力が暴走したか……。


 「あー……」

 嘆息しか出ぬ。

 それにしても、

 「また、あの変な竜でも出たの?」

 スティッキィがライバを見て、ライバがウォラを見る。ウォラはカンナを見た。


 「ウガマール近辺で、さいきん、謎の被害が頻発している……竜ではない。かといって、何者かのガリア遣いかどうかも分からない。被害が多きすぎるからだ。およそ、ガリア遣いの被害ではない。人も大勢死んでいる。そいつの可能性は、ある」


 それは、嘘や誤魔化しではないように感じ、スティッキィとライバは納得して昨夜の光景を思い起こした。

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