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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第3章 5-3 戦いの跡

 ガイアゲン商会本部へ着いた二人、何十もの大小の松明、ランタン類が赤々とかざされ、人が集まり、騒然とした様子と、商会本社の建物の一部が崩壊しているのを見て、度肝を抜かれた。


 「まさか……ここで戦ってたの……!?」

 マレッティも驚く。二人は、どさくさにまぎれて裏門から素早く敷地内へ入った。


 スティッキィがフードを取り、顔なじみの衛視を探すと声をかける。すなわち、その衛視もメスト関係者である。二人は松明から離れ、暗がりで声をひそめあった。


 「ちょっと、何があったの?」


 「はい、バグルスと、他組織のメストが襲撃してきたのですが、たまたまおられたカルマのお二人が撃退してくれたのです」


 「たまたまって……」


 スティッキィは破壊された本部建物を瞠目した。補強されたレンガ建築物に、まるで竜が突っこんだような大穴が空き、屋根も梁から折れて、基礎も崩れて建物全体がゆがんでいる。


 「人間のガリアで、あんなことができるものなの!?」


 「カンナちゃんを、そこらの人間と思っちゃだめよお。ダールだと……いや、もしかしたらダール以上かもしれないんだからあ」


 二人へ近づいたマレッティもフードを取る。同じ顔が出てきたので、衛視が目を丸くした。


 「お姉ちゃんよ。カルマのマレッティ。メストになったから」

 「は……ハッ!」

 衛視が身を正し、礼をする。


 マレッティは頭の雪をほろいつつ、顔をしかめた。こうなっては、アーリーとカンナへスティッキィを紹介せざるを得ない。


 (どうやって紹介しよう……)

 そんなマレッティの胸の内を、スティッキィはすぐさま見抜く。


 「隠れてようか?」

 「いやっ……そういうんじゃないけど……」

 「いずれ殺す相手?」


 マレッティが驚いて妹を見つめる。そのまま、二人して不気味な笑顔を見せあい、声を殺して楽しそうに笑いだす。衛視が、気温のせいだけではない寒気に震え上がった。


 「ま、今すぐじゃないけどねえ。あんな連中、下手うったら返り討ちだし……」


 「ダールに、ダールみたいな謎のウガマール人……暗殺し甲斐があるじゃないのお。それより、人の身でそんな凄い人たちの仲間なんて、やっぱりお姉ちゃんは凄いわあ」


 「え、そ、そお?」

 意外な観点を指摘され、マレッティは戸惑った。

 「そおよお。さすがマレッティだわあ」

 「ま、まあ、そうかもね」


 まんざらでもなさそうに、マレッティが頬をゆるめる。スティッキィが()めきった眼を読まれまいと、微笑むふりをして細めた。


 (変なところで単純なのは相変わらず……ふふ、可愛いマレッティ。こっちも殺し甲斐があるわあ……フフ……フフフフ……ク、ケ、ケケッ、ケクッ……)


 それはそうと、アーリーとカンナはどこにいるのか。


 衛視に調べてもらうと、住居棟でレブラッシュ達と共にいるという。二人が来たことを伝えてもらうと、すぐに来るように云われたので、衛視についてゆく。


 その途中、雪が止んだ。月も出て、雪に地面がぼおっと明るく反射する。

 敷地の中にある、とある古い建物の横を三人は通った。


 「あ、ここよお。たしか、大昔のお風呂……」

 「なんですってえ!?」


 マレッティは立ち止まり、その半地下の倉庫のような場所を凝視する。煉瓦ではなく、古い石積み造りで、枯れた蔦が這っていた。たしかに、煙突めいた突起も屋根に見えた。


 「後で調べましょう。まずは、支配人に会わないと……」


 衛視が二人を住居棟の最上階である四階の最も奥の部屋へ案内した。グラントローメラと同じく、その階のみ装飾が異様なほど豪華であり、重厚で異質な雰囲気だった。ただ、レブラッシュの趣味か、花柄(はながら)文様が多く、やわらかげな印象だ。


 廊下の突き当たりにあるのは、ホールの入り口だった。私的な会議や催しに使われる場所だ。重そうな両開き扉の前に二人も衛視がいて、マレッティとスティッキィを引き継ぐと、そのメストの一員である衛視は礼をして下がった。


 「どうぞ」

 扉が開き、二人は中へ入った。


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