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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第3章 4-1 ガリア封じ

 とにかく、いまやブーランジュウの片足の先に、黒い塊となって闇渡りの力を持ったガリア遣いが……いや、ガリア遣いのなれの果てとなった肉塊があった。既に死んでいる。


 「そおぅらッ!」


 ブーランジュウ、その死体をアーリーめがけ蹴りつけ、アーリーがそれを避けたので後ろの壁に当たってひしゃげた音をだした。


 「こやつは私が相手をする、お前たちはそこの眼鏡を()れい!」


 云われた暗殺者たち、既にブーランジュウの術にでもかけられているのか、無言で七人ほどがカンナへ立ちはだかった。が、カンナとて眼鏡の奥の瞳がもう蛍光翡翠に薄く光り、その片手下段に構えられた黒剣も黄金の線模様が光って脈動して、剣より発せられる電光が暗がりに不気味な影を作っている。歴戦のメストが、思わず躊躇するほど、誰も見たことのない異様な姿だった。


 そして黒剣が、七人のそれぞれの、諸々のガリアと共鳴を始めた。竜ではなく、ガリアと……。甲高い音、低い地鳴り、連続した駆動音のようなもの……それらが響き合わさって、巨大な機械が動いているような音響が部屋を埋め尽くしてゆく。ますますメスト達がひるむ。無理もない。


 一方ブーランジュウは、アーリーがじわじわとカンナより離れて廊下に出、少しでも広い所へ出ようとしているのを見極め、その赤く線模様の光る額の大きな角を小刻みに振って、ガリアを封じる力場線のようなものをアーリーの周囲へ蜘蛛の巣めいて張っていった。ただのガリア遣いならば、波動一本で取り囲むだけで格段にガリアそのものを封じられるが、ダールであるアーリー相手では何重にも張り巡らせなくてはおそらく効果はない。これは彼女にとって姉となるギロアよりも、強力な力だった。アーリーとてそのブーランジュウの妙な動きに気づいていた。何か仕掛けている……。そう想い、慎重に見極める。


 と、その時、アーリーはカンナが一瞬、全身から閃光を発したのを察知した。瞬時にガリアも放り出して両手で耳をふさぎ、床へ倒れ伏した。もう、アーリーの身体が床へ接する前にすさまじい轟音と衝撃が至近より飛んできて、アーリーは壁に叩きつけられ、なんとその壁をぶち抜いて、壁の向こう側へ飛ばされる。


 カンナが、眼前のすべてのガリア遣いめがけ、凶悪的な衝撃波と雷撃を放ったのだ!


 この世界に未だ爆薬は存在しないが、周囲の数部屋の壁と天井(二階の床)を完全に破壊したので、砲撃をくらったと同じほどの力がカンナより発せられたと観てよいだろう。パーキャスでギロアの石造の館を丸ごと吹き飛ばしたのと同じほどの威力か。


 七人ものガリア遣いたち、直撃を受けて既に人間の形を成していない。ひしゃげ、つぶれ、バラバラになって瓦礫と同化している。たったの一撃で!


 外は雪が降りしきり、既に真っ暗だった。室内も闇におおわれているが、立ちすくむカンナの電光がその周囲を明滅に近い周期で明暗を分け、照らしつけている。いまの轟音にスターラの人々は工場のどこかで精錬溶鋼炉がガス爆発事故でも起こしたと思ったろうか。大穴の空いた壁より風と共に雪が入り、カンナは寒さで我へ帰った。


 アーリーも起き上って、再度ガリアを出す。……しかし、出なかった。

 「……む……」


 周囲を確認すると、自分と同じように叩きつけられた壁を抜けて、奥の部屋へ吹き飛ばされたブーランジュウが、闇にその真紅の目と発光器を浮かび上がらせ、瓦礫を踏みしめて戻ってきた。


 「……化け物じみたこの力……カンナ……報告に違わぬ……ウガマールの死神め……」


 ブーランジュウの顔は、闇の中で怖れと驚愕そして憎しみと殺意に色めいていた。

 「う…………」


 アーリー、首を振り、額と耳を抑えた。目まいがして、耳鳴りがひどくて音がよく聞こえない。一時的なものだろうが、カンナの衝撃波をまともにくらったダメージだ。ふだんなら無意識でガリアの防御を遣うが、ちょうどブーランジュウに封じられてしまい、まとにもくらったようだ。ダールをもここまで追いこむカンナの力。そしてブーランジュウのガリア封じの力。


 これ幸いと、ブーランジュウめ、一足跳びでアーリーへ強烈な回し蹴りを食らわせた。まともにそれが横顔へヒットし、アーリーはぶっとんで転がった。すぐさま起きようと思ったが、脳震盪を起こし、動けなかった。先程の食事が少し吐き戻された。それほどの衝撃だった。カンナの攻撃が、である。


 「カ……カン……」

 自分を保てよ……! アーリーはそう念じると、無念そうに半ば気絶して横倒しになった。


 それを確認し、ブーランジュウ、まずはカンナと対峙した。

 「おのれバスクス……!!」

 ブーランジュウの顔が憎しみと驚愕にひきつる。


 「……いや、バグルス完成体(ガリアムス・バグルスクス)……!! よもやと思ったが……こうなれば私が憑依し、ガラネルさまへその肉体を献上してくれる……!!」


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