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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第3章 2-5 ガイアゲン襲撃

 アーリーとカンナが同時に云ったので、レブラッシュ、声も無い。


 とにかく蜂蜜たっぷりのパウンドケーキが丸ごと出てきて、給仕が切ろうとするのを止め、二人で抵当に切り分けてたちまち紅茶で流しこんでしまった。


 「では……今更ですが、あとの手続きと運営はお願いします」

 アーリーが本当に今更、仕事の話をした。


 「え、ええ……」

 レフラッシュが戸惑いつつ、それへ答える。


 「まかせてちょうだい。政府公認になったのなら、登録されているフルトは自動的にヴェグラーの一員となるので、あとの宣伝から退治斡旋、記録、報酬の支払いなどの事務所運営はガイアゲンで引き受けます。手数料は、退治料の八分で」


 「契約書の通りに」

 「分かってるわ」

 アーリーが立ち上がって、帰るのだと思いカンナも立った。

 襲撃は、その時だった。



 食べるだけ食べて、所用の確認もすませると、もうアーリーの仕事はしばし無くなる。具体にガリアの特徴などを記した構成員名簿……いや、兵員名簿などを受け取り、作戦を立てるまでは。やることと云ったら先んじての威力偵察くらいだろう。このスターラよりさらにの北西七十ルット、竜属との境目の地、トロンバーへ行くことになるやもしれない。


 見送ろうと、レブラッシュも席を立つ。


 この時期、夕刻に近くなるともう外はすでに暗い。燭台が用意され、暖炉の火も赤々と陰影を作る。大きな部屋は、ささやかな明かりが届く以外は、真っ暗となった。


 その闇から、気配が次々に凝固した。


 まず飛び出たのは、ファーガス配下の、あの伝令である。名をトーペラという。蔭から蔭へ自在に移動できるガリア遣いだった。ただ移動するだけなので、伝令としてメストというよりファーガス個人に雇われている。ガリアは、大きな銅のメダル付のバックルだった。


 しかし、彼女がどうしてブーランジュウに変身できるのだろうか。いや、逆かもしれない。どちらにせよ、バグルスはガリアを遣えないという原則に反している。


 トーペラの開けた蔭の中の穴より、続々とガリア遣いが出現する。もう、アーリーが両手より火を噴いていた。


 「げあああ!!」


 二人が火だるまとなって転がった。レブラッシュが瞬時に状況を理解し、屈んでアーリーの炎を避けたのは流石だった。カンナが赤い輝きを眼鏡に映し、驚いて固まっている。


 室内が火に包まれる。アーリーはレブラッシュを逃がすため、炎色片刃斬竜剣(えんしょくかたばざんりゅうけん)を出すや横薙ぎに振り回して両開きのドアごと壁を破壊! レブラッシュが転がり出る。部屋の外に待機していたガリア遣いの衛兵が状況を即座に察知し、急いでレブラッシュを抱きかかえ、脱兎のごとく避難を始めた。


 「追え!」


 誰かが云ったが、斬竜剣に肩口から袈裟がけに両断された。大仰に振りかぶっては天井につっかえるほどの大剣を、アーリーは細やかに室内で操っている。


 ただ、火が壁や床を舐め、館を延焼し始めた。

 「落ち着け、取り囲んで圧殺しろ!」

 トーペラが、ブーランジュウの声で叫んだ。暗がりに眼が深紅に光っている。


 アーリーの顔が自らの炎に照り返され、ニヤリと楽しげにゆがんだ。

 眼が火を反射して、同じく煌々と赤く光っていた。


 アーリーの口元に、バグルスめいて竜の牙がかいま見える。

 炎の熱で、窓ガラスが、割れた。

 


 ファーガスは、数日をかけて腕のたつガリア遣いをかき集めろと指示したが、バーケンはさすがにレブラッシュの算段に気がついて、ファーガスとは別の指示をだした。つまり、アーリー達ごとレブラッシュを亡き者にしようというのである。


 (……まさか、私が甲冑だと気づいている!?)


 レブラッシュ、先手を打たれたかと冷や汗をかいた。だが何もバーケンとてそれに関しては確信があるわけではない。ただ、レブラッシュが、覆面組織の正体はグラントローメラではないかとうすうす感じているように、バーケンも甲冑組織の正体はガイアゲンではないかとうすうす感じているだけだ。が、そうであろうと無かろうと、ガイアゲンはグラントローメラの背後に迫るスターラのナンバーツーだ。この機会に、その軍需や金属生産工場の販路を少しでも切り取りたいというのだ!


 (さすが、抜け目ない! だけどこれは私にも好機……ここはアーリーに任せて……あとはスティッキィ達……頼んだわよ!!)


 レブラッシュは衛視のガリア遣い達に護られて、急いで地下の隠し部屋へ逃げこんだ。


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