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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第2章 6-5 瞬間移動

 「…………」


 ダンティーナが、何かを云っている。聞こえないのに、どうしてそういう無駄なことをするのか、カンナは不思議だった。が、気づけば、カンナも云い返していた。


 「……!」

 けっきょく、何も聞こえないというのはこんなにも不安なのだと自覚する。


 ガリアなので軽々と振りかざされる巨大斧。都合がよいものだと思うが、自分の剣だって、実際の鋼の剣ならば肩が抜けるほど重いはずだった。斧自体の攻撃もさることながら、あの、謎の空間破断の波を黒剣で受けると、どうなるのだろうか?


 などと考える余裕もなく、かかとを軸にした連続回転攻撃でダンティーナがカンナを襲う。空間の裂け目がぐるぐると円を描き、まるで竜巻めいて巨大な断裂の柱を形成し、バリン、バリンという音でも聞こえてきそうな勢いで空間を破砕しながらカンナめがけて迫った!


 カンナは逃げようと思うのだがあまりの迫力と異様さに硬直して、立ちすくんでしまった。


 カンナの立ち位置に、空間破砕の柱がつっこむ! ぐちゃぐちゃのバキバキに情景の映った空間の破片をまき散らして、歪んで真っ黒の亜空間が大口を開けた。


 回転を止めたダンティーナが、斧を片手にその場にしっかりと立った。どんなもんだい、と云わんばかりの、余裕の表情だった。


 破壊された空間が自然に修復されてきたので、ダンティーナはその暗黒の場所からスターラの街並へ戻った。まだ怯えているルバータへ、安心しろという意味をこめて親指を立てて見せたが、様子がおかしい。ダンティーナ、ルバータの視線の先へ目をやって、口を開けた。


 目眩で座りこんでいるカンナの横に、見たことも無い少女が立っている。

 ライバだ。


 どうやって、あの攻撃から逃れたのか? そしてどうやって、あんな位置まで一瞬で?


 答えの半分はわかった。ライバの手には、大きな食肉解体用のナイフが握られている。ガリアだ。きっとあのガリア遣いが、何かしらの『力』でカンナを助けたのだ!


 その瞬間、ライバが消えた。眼の錯覚かと思ったダンティーナ、すぐに周囲を見渡す。そして、ルバータの真後ろに立っているライバを発見したときには、もう、その大型のナイフがルバータの首の後ろへ叩きつけられて、血を吹き出してルバータが地面へ倒れ、ガクガクと痙攣した。ライバ、顔色ひとつ変えていない。


 痙攣はすぐに止まった。石畳を大量の鮮血が血溜まりとなって赤く染め上げる。ルバータが死に、音が戻る。


 「……てめえ、スターラ人か!? そいつに、てめえみてえな仲間がいるなんて、聞いてねえぞ……!」


 ダンティーナが眼を吊り上げる。ライバは肩をすくめ、にやっと笑ったまま、


 「仲間っていうか、たまたま知り合いでね……通り掛かったら、なにやらガリア遣いに襲われてるじゃないか……あんたが、ウワサの暗殺者さんかい? どうしてカンナさんを狙ってるのか知らないけど……助太刀させてもらうよ」


 これは嘘だった。この竜を倒すというより暗殺に最適なガリアを観ても分かる通り、ライバもメストの一員である。彼女はレブラッシュの配下で、バーケン配下のダンティーナとは初顔合わせだった。ただ、レブラッシュの指令で、カンナを見張っていた。危なくなったら、正体を隠して助けろ、という指令を受けて。


 「だけど、あんたを倒すのはあたいじゃないよ。このカンナさんだ」

 「ちょっとちょっと~、なに云ってんの」


 笑うダンティーナだが、先程の稲妻の衝撃をまだ身体が覚えている。とてもではないが、まともにやりあって勝てる相手ではない。


 ここは逃げだった。


 「そいつが使い物になるかどうか、見りゃあわかるってもんだよ。それにあんたの、そんな大型ナイフみたいなガリアで、この大断斧(だいだんぷ)とやろうっての?」


 「つよがっちゃってえ」


 ライバがわざとらしく口に手を当ててさも楽しげにほくそ笑んだ。ダンティーナ、心情と作戦を全て見抜かれている気分となり、内実、冷や汗だった。


 「ううおおお!!」


 気合を入れ、ガリアを発動! ライバとカンナを攻撃すると見せかけて、一気に空間を破壊してその中に逃げこむ。


 「カンナさん、逃げますよ!」

 ライバが叫ぶも、カンナはまだ座ったままだった。


 ライバは、カンナが自分の瞬間移動に酔ってしまうのを思い出し、しょうがないか、と思った。別に、あの名前も知らないメストを倒すのが任務ではない。


 が、カンナ、やおら起き上がった。

 「……逃ィがさなあああいいい!!」

 カンナの眼が蛍光翡翠に光っているのを見て、ライバはぎょっと息を飲んだ。


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