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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第2章 4-1 レブラッシュの魂胆

 「これは遊戯ですよ。いざとなればホルポスごとき、ガラネルに始末してもらいましょう。そのために、いろいろと便宜を図ってやっているのだから」


 「その、ガラネルとやら、どこまで信用できるのです? しょせんはダールなのでは?」


 「アーリーとて、しょせんはダール。……竜の国の半竜人ども、このサティ=ラウ=トウの地で好きにはさせません。ウガマールのクーレ神官長からの返事は、来春になりそう?」


 「そのようでございます……」


 「あの……カンナとやらは、間違っても殺してしまわぬよう、調整しなさい。最終的には、ガイアゲンで保護してもいい。ただ、“真の役割”へ昇華させるための生贄として、適当に暗殺者どもを仕向けるように。それが“禊ぎ”になるのだから。神官長からは、おそらくそのように返事が来るはず」


 「かしこまりました」

 老爺は会釈をし、退室した。


 アーリーの出て行ってしまった正門を見つめるレブラッシュの笑みは、殺人者の……そして戦争屋のそれだった。レブラッシュは、あわよくば、この(きた)る竜との戦いをもってスターラの経済支配をグラントローメラから奪わんとしていた。


 また、アーリー達を暗殺者に競って襲わせることで、メストの指導権も握ってしまおうというのだ。なぜなら、サラティスのカルマに匹敵するガリア遣いなど、メストといえどそうはいないということを知っていたし、実際メスト筆頭とうたわれた仮面ご自慢のシロンは、あっさりと倒された。自分の手駒を温存しておき、仮面と覆面バーケンの有力な手持ちをほとんど労せず潰してしまえば、あとはどうとでもなる。残る暗殺者たちを引き抜いて、自分だけがメストになってしまえばいい。そうすれば、仮面と覆面などいつでも消し去れる。自ら手駒の暗殺者は三十人ほどだった。どうせ、残る二つの組織の駒もそのくらいだろう。まして、半分は殺されたシロンのように地方へ遠征に行っている。スターラだけでは、暗殺の依頼など、そうあるものではない。依頼と派遣はサラティスやラズィンバーグ、ウガマールなどの主要都市から、田舎の町や村、遠くは竜の世界にまで広がっている。この街に残っているのは、数えるほどだ。


 と、すると、合わせて十ほども暗殺者を始末してくれれば、御の字だった。


 何よりカンナの秘密の一端を彼女はウガマールより知らされていた。カンナを殺すほどのガリア遣いが、そうそういるとも思えなかった。ただ、そのカンナの力は発展途上だ。まだうまくちからを遣いこなせぬうちに何かの拍子で殺してしまっては元も子もなくなる。難しい舵取りが要求される。


 が、それもまた面白い。

 「ウガマールにたくさん寄進しておいて、よかった」

 信心は救われる。レブラッシュは柄にもなくそう思った。

 

 4

   

 アーリーはその足で、中通りから大通を歩き、都市政府庁舎へ向かった。連合王国時代の総督府がいまでも使われているのはサラティスと一緒だった。街のほぼ中心へ位置し、巨大な神殿を思わせる豪奢な作りで、その規模もサラティスの三倍はあろうかという建築物だった。


 市長ではなく総督がいるのも、古代の名残だった。総督の下に副総督がおり、街割りそのままに、工業局、商務局、民生局、総務局があって、局長がいた。役人は基本的に世襲であったが、試験を受けて入所できる枠もあり、能力次第で出世もできる。


 竜退治を基礎とする内務竜対策局がひとつで行政を支配するサラティスとは、根本から規模や仕組みが異なっていた。


 アーリーは受付で話を聞き、まず総務局へ行って、それから商務局の担当を紹介してもらった。それだけで一刻半(約三時間)を有した。役所に何の用かというと、新しい組織を役所公認とするためである。それぞれの担当者に付け届けをするのも忘れない。変なところでアーリーは如在が無かった。


 廊下にある粗末な椅子に座って、辛抱強く寒さと時間に耐えているアーリーを、ふと廊下を歩いていた副総督のファーガスが眼にした。背と鼻が高くて目玉の大きい、痩身の老人だったが、しゃんとして、さすが実務の長という貫祿と雰囲気を漂わせている。服装は豪華な執務ローブをまとい、髪も濃くて白髪をきれいに整えていた。


 「……あれは?」


 ファーガスも、長い廊下の片隅の暗がりにただ座って瞑想しているだけで尋常ならぬ気配を醸しだしているアーリーを気にして、随行の職員に尋ねた。


 「さあ……しかし、あそこはフルトどもの登録窓口の前ですので、新しいフルトなのではないでしょうか?」


 「ほう……?」


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