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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第1部「轟鳴の救世者」
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第1章 4-3 サランの森

 サランの森は都市内であり、狩猟が禁じられているが、そもそも塀の内側のため動物は少なく、鳥と猫の楽園だった。市街地を抜けて、すみやかにフレイラとカンナは草地を抜け、サランの森へ近づいた。雲が厚くなってきている。一雨くるだろう。


 「あ、フレイラさん、あれ……」


 カンナが、同じく草地を森へ向かうバスクの一行を発見した。五人ほどいる。


 「おおい、待て、おまえら、待てったら!」


 フレイラが五人を止めた。バスク達はフレイラを見知っていたので、近づいてきた。カルマがいるのに、驚きを隠せない様子だ。カンナと同じ歳ほどの黒髪によく日焼けした娘が三人いた。一人がその母親ほどの年齢で、残る二人は二十代の中程と後半に見えた。一人は小柄で、一人は長身だった。おそらく、娘三人がセチュで、年かさの二人がバスクだろう。と、思ったが、長い茶髪を後ろでしばった小柄な一人が、


 「私はモクスルのダリス、こっちが同じモクスルの……」

 「ジョナスです」

 「アンリータよ」 


 若い少女たちがそう名乗った。


 「こっちの二人がセチュで、私たちの助手。助手といっても、ガリアは使えるから、役に立ってる。経験も豊富だし」


 バスク達の会話に、セチュは入ることを許されない。娘や妹のような相手の補助である年長の二人が無言で、フレイラへ礼をした。しかしカルマであるフレイラにとっては、モクスルもセチュも大して変わらなかった。


 「おまえら、森でモクスルが殺されたのは知ってるのか!?」

 五人は嫌な予感が当たったという顔つきになった。


 「い、いや、私たちは、ただ土竜(モグラ)が出たから退治してくれと……」


 「土竜だあ!?」

 「ええ……モクスルの誰がやられたの?」


 「名前まではしらねえよ。そうか、土竜か……その穴からバグルスが侵入しやがったんだ」


 「バグルス!?」

 「カルマが出張るんだ、バグルス退治だよ」


 五人がチラチラと自分を見ているのを、カンナは感じた。こんなやつ、カルマにいた? というかこの人、カルマなの? そんな視線だ。


 「わ、悪いけど、バグルスがいるんじゃ、私たちは下がらせてもらう……たとえついて行ったって、足手まといになるだろうし……」


 ダリスは、動揺を隠さなかった。

 「ああ、そうしろそうしろ。そうしたほうがいい」

 フレイラが素っ気なく云い放って歩きだしたので、カンナが続く。


 「ねえ、そっちのセチュも置いてったほうがいいんじゃないの!?」

 同じ年頃のカンナを心配してか、アンリータと名乗った娘が叫んだ。


 「余計な心配だ、こいつもカルマだよ! ……おまえもなんとか云えよ! 黙ってるから、セチュだと思われてんじゃねえか」


 「えっ……ええ、ああ、あの、そ、そうなんです」


 そう云った瞬間、カンナは石に蹴躓(けつまず)いて転びかけた。唖然として五人が見送る中、二人は森へ向かって進んだ。灌木がまばらに生えた草地から、次第に背の高い木が多くなり、風に枝が揺れている。


 「あ、あの、フレイラさん……モグ、モ、モグってなんですか?」


 「あ? ウガマールに土竜はいねえのか? 地面を掘って穴の中に棲む、ネズミみてえな生き物さ。竜にもそんなやつがいてよ、地下潜行型特殊竜を土竜って呼んでる」


 「じゃあ、その、バグルスの他に、地面を掘る竜がいるってことですか?」


 「そういうことだな。こりゃ、当たりかもな」

 「当たりって?」

 「森にゃ、まだバグルスがいるだろうぜ」


 カンナは顔をしかめた。まったくバグルスづいている。


 「あの、さっきの人たちに、せめて、そのモグ……を、退治してもらったら……」


 「モクスルにか?」

 「ええ」


 確かにそうだとフレイラも思った。アーリーが主張している、モクスルとカルマが協力して竜を退治する良い機会だろう。が、


 「無理だぜ」

 「どうしてです?」


 「前も云ったけどよ、可能性が低くたってカルマ並に強い奴は確かにいるんだよ、話を聴く限り……な! だけど、そいつらは動かねえんだ。いくら報酬が高くたって、バグルス相手じゃ命がいくらあってもたりねえからな! “だから可能性が低い”んだよ、あいつらは! 可能性ってのは、単純な強さじゃねえんだ!」


 「いえ、バグルスじゃなくて、その、モ、モグ、ラの相手をしてもらうんですよ」


 「分かってるって。さっきの連中がどれくらい強いのかしらねえがよ……こっちが云う前に、もう逃げ腰だったろう。強かろうが、弱かろうが、どっちにしろバグルスにゃ近づかねえよ。あいつらとオレたちが連携して竜退治なんて、夢のまた夢さ」


 それは、臆病ということなのだろうか。それとも、意識が足りないのか。カンナは分からなかった。そもそも分からないのは、臆病で意識も足りない自分の可能性が最高に高いということだが。



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