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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第3部「北都の暗殺者」
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第1章 4-2 ガリア戦

 まず油断無くガリアを観る。二人は片手剣だった。一人は凡庸な剣、一人は剣身に牙のような突起が二つ、刃の部分より飛びでている。最後の一人は……皮紐の両端に丸い(おもり)のついた知らない武器だが、投げ道具のように感じた。これはボーラという、狩猟や投擲(とうてき)に遣う古い武器である。


 ビリビリビリ……! 黒剣が竜ではなく三人のガリア遣いに共鳴する。共鳴するほど剣身より稲妻があふれる。その奔流するプラズマの流れを目の当たりにしただけで、三人はびびって声も出なくなった。顔が凍りついている。


 それを観て、カンナも思わず気が緩んだ。

 とたんに、黒剣が鳴りをひそめる。

 「あれっ……」


 と、思ったときには、クラリアがボーラを投げ込んできた。ただの武器ではない。ガリアである。紐がギュワッと伸び、カンナの首から胴体、腕にかけて絡みつき、締め上げた。


 「ああっ……!」

 カンナが苦しげに黄色い声を出してよろめいた。


 その様子に三人、

 (こいつ、みかけだけで弱いんじゃないの!?)

 と、思ったとたん、自分より弱いものには強くあたる性分が出る。


 「脅かしやがって!」


 周囲の盗賊達の惨劇も目に入らない。カンナの力で彼らが一瞬にしてどうなったか。その力を容赦なく自分たちもくらう可能性があるはずなのに、いまカンナが弱々しく悲鳴を上げただけで、想像力が働かなくなる。三流の証拠だった。


 カロリアーヌのガリア、牙のついた剣の周囲に、空気が渦巻く。風の剣だった。真空をまとった風を、カンナへ向けて叩きつける。カンナの黒鉄色(こくてつしょく)の髪が切れ飛び、肩や腕にも傷がついて血が飛びちる。が、この攻撃はあまり効果が無く、皮は裂くが肉、まして骨すら断てない。竜も倒せないほどだ。カロリアーヌの剣の恐ろしさは、狭い範囲ながら自在に空気を操る力にあった。


 「ク……!!」


 カンナは、急に息ができなくなったのに気づいた。空気が無い。顔や鼻の周囲の空気が。いや、あるにはあるが、吸い込めない。どうしても。


 「カフッ……!」


 眼をむいて移動するが、カロリアーヌが後ろをつかず離れずついてきて、距離をとらせなかった。そのまま剣で攻撃しないのがまたいやらしい。


 「おい、足も止めるんだ」

 「合点」

 クラリアがガリアを操る。ボーラの皮紐がさらに伸びて、カンナの足へからみついた。


 カンナがよろめいて倒れかかるが、なんとか踏ん張って振り返りざまに稲妻を飛ばした。三人が驚いて下がったため、かろうじて距離をとることができた。


 すると、息が復活した。あまり効果範囲が無いようだ。

 「ちょっとカロリアーヌ、あんなんでびびんないでよ! 息をふきかえしたみたいだよ!」


 クラリアが叫んだ。カロリアーヌ、思わず赤面して、

 「うるさい! あんたの戒めが甘いんだよ!」

 「人にせいにするの!?」


 良く分からないが口げんかをしている。カンナはさらに逃げて、早急に息を整えた。せこい攻撃だが、近距離ならば効果は絶大に思えた。物陰より狙われては、暗殺されてしまうだろう。あんな大仰な剣なのに、妙な力を持つガリアだ。


 「二人とも、熱したよ! 次できめるんだ!」


 見ると、ヨーナの剣身が灼熱に光っていた。まるで焼き(ごて)だ。このガリアは炎熱の剣だが、ここまで熱するのにちょいと時間がかるのが欠点だった。が、もう完全に熱した。これで叩かれては、とんでもないダメージをくらうだろう。


 「あの白い顔を、ぐちゃぐちゃに焼いてやる……!!」


 ヨーナの顔が残忍に歪む。そもそも、こやつはガリアを遣った拷問に興じる女だった。特にカンナほどの少女を意味もなくいたぶるのが、大のお好みだ。


 「変な癖は後にしな……返り討ちにあうよ」

 クラリアがまだ減らず口をきく。

 「かっこつけやがって……あんたがびびんなきゃ、あいつ、いまごろ窒息してるよ」


 「うるさいんだよ! 年下の癖に生意気なんだ! 誰が(かしら)だと思って……」

 「二人とも……いいかげんにしてよ!」


 三人が何やら云い合っているうちにカンナ、ボーラに締めつけられながらも、完全に息を吹き返した。もう同じ手はくわない。自由の利かない腕のまま、黒剣を三人へ向けて共鳴させる。もう侮らない。どんな敵でも。


 すぐに共鳴がくる。


 大地をふるわせる振動に、三人がぎょっとしてカンナを見やった。カンナの肉体より電光が立ちのぼっている。三人とも、当然カンナの“ちから”は稲妻だと思っている。


 「ちょっと、復活したよ……!!」

 「かまうものか……一気に距離を詰めるんだ!」


 三人がここにきて絶妙な連携を見せ、少しずつタイミングをずらしながら三方から回り込んだ。


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