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ガリウスの救世者  作者: たぷから
第2部「絶海の隠者」
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第3章 3-3 刺客

 カンナはがっくりと膝をついた。いや、ガリアがそうさせた。


 ガリア「雷紋黒曜共鳴剣(らいもんこくようきょうめいけん)」は、いまやまるで剣では無くなっていた。機械式に別れたものの、生物のようにやわらかく変形もする。剣身は細く倍ほどにも伸び、柄が大きな支えとなってカンナの右肩に張りついた。照準器が現れ、これはカンナの右目へぴたりと合わさる。


 カンナは気がついた。これは、バルビィのガリアにあった、銃という武器ではないか? カンナが銃『らしいもの』を認識したことにより、ガリアはそれをとらえ、自ら変形したのか。それとも、最初からこのガリアにはこういう武器に変形する力があったのか。それは分からない。だがいまや、右膝を立て、左膝を地面へつけた折敷(おしき)の姿勢となり、巨大なガリア本体は自らがクモの脚めいた多関節の脚が六本も現れて地面に突き刺さって支え、左手で縦に別れた剣身の下の部分の把手を押さえ、右手は肩で銃尻を支えいわゆる引き金へ手をかけている。右足と左膝を地面へ押しつけて両腿の筋肉を張り、がっしりと下半身を安定させる。照準器は、ピタリと竜の口をねらっている。なんと、六本の脚がゆらゆらと揺れ、自動追跡というおまけ付きだった。


 では、この巨大な長身銃のようなものは、何を撃ちだすのか? バルビィのように、ガリアの弾丸か?


 共鳴が限界を越えた。甲高い音が渦を巻いて銃口めいた二又の剣先のさらに先の空間をゆがめる。二又に別れた剣身の合間の電流がついに融けてプラズマの線となった。球電の矢というか。おそるべき熱を溜めていることが、立ちのぼる陽炎でわかる。空気が焦げ、湿った海風を受けてシュウシュウという湯気まで上がりだす。共鳴はついにヒィーンという耳鳴りめいた音にまで周波数が鰻登りに上がって、剣先の歪んだ空間の範囲を拡げている。


 と、大海坊主竜め、あれだけ開けていた口を、バカンと音を立てて閉じてしまった。カンナは思わず引き金を引きそうになるが、その衝動に耐えた。口中を確実に貫かないとおそらくあの竜は倒せないし、鼻面に命中させてアーリーを巻き込むのは避けたい。


 アーリーが、カンナの異変に気づいた。アーリーにとっては見たことも無い姿のガリアに、カンナが捕えられているようにも見える。だがそうではない。クモめいた細く漆黒のガリアに黄金の線模様、それが渦を巻いて空間が波を打って、稲妻を内に押さえ込んで、その力の全てを細く伸びた剣身と剣身の合間に凝縮している。


 「ぬううあ!!」


 アーリー、再び気合をこめ、大海坊主竜の脳天へ突き刺さっているガリアへ炎の圧力をかけた。こちらも凄まじい熱がガリアに込められ、突き刺さっている部分から煙が吹き上がる。竜の固く厚い鱗と皮膚が燃えだす。


 悲鳴のような咆哮をあげ、竜の口がまた開いた。苦しげにのたうち、その舌まで出す。


 「いまだ!!」

 カンナ、無意識に引き金をひいた。


 音が消えた。

 至近距離から、光の矢が一瞬で竜をねらった。

 歪んだ空間が引き裂かれ、それをまとって光の矢が突き刺さった。


 かに見えたが、竜があり得ない角度で膝の関節を曲げ、その場から消えたように見えるほど仰向けに身体を傾け、つまり、なんと、まったく信じられないことに、その光速の矢を完全かつ完璧に回避した!


 「……えええええええええ!?」

 カンナ、何が起きたか理解できぬ。


 矢は遙か天の彼方へ飛んで行ってしまい、閃光を発して破裂し、雲を押し退け、蒸発させた。

 遅れて、轟鳴が衝撃波と共に到来する。


 皮肉なことに、起き上がった竜がその衝撃からカンナを護った。大海坊主竜は衝撃波を全身に受け、崖に叩きつけられた。元より、避けたといってもその熱と電流が竜の胸元から首にかけてを焼き裂いていた。竜はそのままばったりと町のあった場所に崩れ、倒れ伏した。


 「アッ、アーリー!」


 カンナの今の実力では、あの攻撃は一撃が限度だった。ガリアは一瞬で元の剣に戻った。立ち上がって、坂を下りかける。


 アーリーはガリアを消し、一瞬早く大海坊主竜の頭から飛び下りていた。

 それをちらりと認めたカンナ、息をついて歩を止めた。


 そのカンナを、ガリアの矢が貫いた。


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