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力の使い方。

 少し噂話に耳を澄ませてみる。当然、ロカで召喚士選定試験が行われなかった事や近くの川で私達が戦っていた事を知っている人はいない。……だけど、人目が気になって仕方ない。皆の声を意識した途端に色々聞こえてくる。

 それでも食堂へ着くと既にトーロとニクス様、そして呼びに来てくれたカルディナさんが席に着いていた。ほぼ満席状態でも特にニクス様は目立つからすぐに見付けられた。

 「お待たせしました!」

 「注文は適当に済ませてある。だいたい前と同じだがな」

 「ありがとう」

 トーロが献立表をひらひらと振って見せてくれた。あれだけの巨漢が適当に注文したと言っているんだ、量が少ないって事はないと思う。予算の都合で少ないとか、大丈夫かな。

 「君達は集まって何をしていたの?」

 注文が来るまでの時間にカルディナさんがチコに尋ねる。

 「フジタカとザナの魔法の練習っすよ」

 「へぇ。ザナさん、あの魔法をまた使ったの?」

 チコが面倒臭そうに答えるとカルディナさんが眼鏡の奥を光らせてこちらを向いた。興味あるのかな。

 「はい。でも……まだまだです」

 さっきもレブに指導してもらったし。

 「インヴィタドの魔法を自分で使う……。最初はインヴィタド経由で、使い続けていくうちに自力で使えるようになっていくのよね?」

 「そうだ」

 トーロもフジタカも、チコとカルディナさんもその感覚は分からない。……対となる相手と専属契約を結んでいないから。

 「これって、やっぱり召喚術の鍛錬をもっとしっかりしないと使いこなせないと思うんですよね」

 やっぱり、基礎が欠けている。参考書片手に独学には限界だと思った。あの自分の中の魔力線を直接使う感覚は先に慣れる必要がある。

 ……私は、未だにレブしか召喚した事が無いんだ。

 「カルディナさん。私の魔力調整の先生になってくれませんか?」

 「……私、あんまり先生ってガラじゃ……」

 駄目で元々、とは思っていたけどすぐにカルディナさんは首を横に振る。

 「やってやれば良い。時間はあるのだろう」

 「トーロ……」

 そこで間に入ってきたのは彼女のインヴィタドであるトーロだった。

 「そもそも選定試験監督なんて役をやっているんだ。基礎なら教えられるぐらいには知っているだろう?」

 「それは……まぁ……」

 召喚士選定試験では試験監督の用意した召喚陣を儀礼として契約者に手渡されて始まる。その試験用召喚陣は暴走対策に様々な仕掛けが施されている……らしい。私もチコもその辺りまでは詳しく教えてもらっていないので、制限の掛け方は分からなかった。だけどトーロの言う事が合っているとは思う。

 「俺はお前の召喚陣は綺麗だと思う」

 「まるで私は綺麗ではないみたいね?」

 「………」

 そこ、黙っちゃダメ!だからって私達が入っても飛び火するだけだ。

 「……お前もそれなりだ。……眉は薄いが」

 「あ・り・が・と・う!」

 「あぐぅ!」

 礼と同時にトーロの肩が叩かれる。まだ傷が塞がったばかりで、庇いながらの旅だったのを知っていながらのその仕打ち。……カルディナさん、怖いです。トーロも悪いよ、今のは。周りの男性陣って一言多くて損してるよね。

 「……俺だって、フジタカの剣術稽古には付き合っている。他も付き合いたいぐらいだがな」

 「それは貴方の好みの問題でしょ」

 剣術以外にもフジタカは危なっかしいってことかな。

 「……一人前の召喚士にするまで教師となる。……トロノの所長との約束ではなかったか」

 ずっと黙って聞いていたニクス様が静かに言うと流石にカルディナさんも頬を指で掻いて笑った。

 「そ、そうは言いますが私もまだまだ若輩者です……。所長との話も受けましたが自信が……」

 「ならば、共に模索し学べば良い。自分は必要ならばそうしてきた」

 ニクス様からの提案にレブ以外が目を丸くした。そうだ、何も教えてもらうだけの関係に拘る理由はない。

 「………」

 カルディナさんがちら、と私の方を見る。

 「先生は難しいかもしれません。だけど、私の知ってる事で役に立てる事が少しはある。だから……私にもザナさんも何に困っているか教えてくれない?」

 「はい、是非!」

 教師だからと教えてもらうだけではいけない。私からも発信していかないと。レブにはできていた事だ、他の人にもきっとできる。

 「でも、魔法を自力で使うという点においてはトーロを先生にした方が良いんじゃない?」

 「それもそうですね!」

 魔法使いはレブだけではない、トーロも一緒だ。一人に聞くよりも二人、二人よりも三人。さっきフジタカを指摘していた私達と同じ様に聞けばいい。

 「いいわよね?私に振るだけ振ったんだから、インヴィタドである貴方も一緒よ?」

 「……抜かった」

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