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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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ワガママの押し付け理由。

 「聞かせてもらおうか、今朝途中で放り出してしまった話の続きを」

 「承知した」

 向き直り、ニクス様がレブへ静かに軽く頭を下げる。……改めて思うと、レブは異世界じゃ偉そうじゃなくて、偉かったんだよね。力を持っているのは今も変わらずとも。

 「……そうは言っても、改めて自分から言える事は多くない。フエンテという名前も初めて聞いた」

 「源、という意味だったか。小者が大層な名を持ったものだ」

 小者、ってレブは言ったけど私はあの二人を前にしたら何もできない。ピエドゥラやアルパで立て続けにゴーレムを召喚したり、まさか専属契約で操ったりするなんて。召喚士としての能力だったら私もチコも、足元に及ばない。カルディナさんやソニアさんだってどうなっていたか。

 「フエンテ……と聞いて、辻褄が合う話を知っている」

 ニクス様がゆっくりと椅子に腰掛ける。

 「私がこの世界に来る前から、召喚士は存在していた」

 「えっ……!?」

 契約者に魔力線を解放してもらい、召喚学を基に修行で養った魔力を通して異世界からインヴィタドを呼び出す。それが召喚術だ。元の元に契約者は必要不可欠の筈だ。私は思わず声を出したけど、話の腰を折った事に平謝りしてニクス様の続きを待った。

 「今の育成機関とは別の召喚士集団がいるのは知っていた。知ってはいたが、自分は出会った事はない。人目に触れるような真似をする連中ではなかったらしい」

 「私も知りませんでした……」

 カルディナさんも顎に手を当てて唸る。

 「年季の入った召喚士なのにな」

 「……ッ!」

 「キャウン!……す、すみませんっした……」

 凄い、カルディナさんが視線だけでフジタカが委縮して謝った。トーロがいたら止めてくれただろうに……。でも、ちょっと失礼だよ。

 「そいつらがフエンテなのだろうな。成程、聞いてみれば源とは言い得て妙だな」

 今の惨状をすぐ横で見ていてレブもよく話を続けられるよね……。自分の年齢じゃないからかな。

 「……同じ召喚士なのになんでニクス様を狙うんだろ」

 片や私達は契約者と行動を共にして、新たなビアヘロに対抗する力を求めようとしている。それに対してフエンテは契約者の殺害なんて、真逆の行動を取っていた。

 「ほざいていただろう。契約者が悪戯に増やすのが気に入らないと」

 「それだけ聞くと、ガキみたいだったよな……」

 フジタカも思い出しているのか天井を見上げてぼんやりとしている。あのアマドルとレジェスから放たれていた殺気と暴力的な言葉の数々は衝撃だった。今まで見てきた召喚士とは何もかもが違う。

 「だが、根本はもっと単純だ。要するに、自分達にとって不都合で邪魔で嫌なのだろう」

 「そんなのニクス様を殺しても良い理由じゃない!」

 レブの要約は、きっと正しいのだろう。私が怒鳴るのが間違い。だけど……納得する理由には成り得ないくらいに単純で幼稚過ぎる。

 「その通りだ」

 「レブ……」

 怒鳴ったにも関わらず、レブは私を静かに肯定してくれた。どこかで冷静な私が実際の理由なんてその程度かもよ、と囁いていたのに。

 「だが、だったらどうする」

 レブが次に言うと思った。自分が正しいと思うのならば、何をすべきか。どの様にして相手に向き合うべきか。レブは私だけでなく、この場にいた全員を一度だけ見回して話している。

 「俺のやる事は変わらないぞ。もう一度でも、二度でも三度でも奴らは俺が捕まえる!」

 フジタカの返答に具体性は全く無い。だけどレブの笑みに小馬鹿にするような含みはなかった。

 「獲物を逃がさないのが狼、だったか」

 いつも犬とかわんわんとか言うのに。少し、フジタカのやる気というか執念に感化されてるのかな。

 「へへ……まぁな。……だけどどうするんだ?やっぱり手掛かりは無いし、トロノへ戻るのか?なんつーか……せっかく来たのにって言うとだけど、ロカで契約だけでとんぼ返りってのもな」

 フジタカのもっともな意見にカルディナさんが頷く。

 「私も最初はやはり、戻ろうかとも考えました。一度は退けたのだし、貴方達だけでもと思ったけど……。実力はともかく、船酔いもあるでしょう?」

 「うっ」

 「げ……」

 船酔い、という単語を出されただけで私は胃を持ち上げられた様な不快感が込み上げてきた。フジタカも同じなのか、似た様な呻きと一緒にお腹を押さえてる。おへそ出してるのもしまった方がいいんじゃないかな、フジタカは。毛皮があるからあんまりお腹は冷えないんだろうけど、私は少し心配になるなぁ。

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