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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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集会。

 夕陽は悪くない。私が勝手に言ってしまったんだ。だけど、そんなさり気無く聞いて、勝手に話を進めないでもらいたい!

 追い掛けてもレブは先へトコトコ走っていく。自分の横をすり抜けていく彼を見てフジタカは溜め息を吐き出した。

 「ハァ……。元気だなぁ、デブは」

 「フジタカはお疲れだね」

 レブを捕まえようと思ったけど、フジタカの様子も気になって私は一度足を止めた。チコもその場から動こうとはしていない。

 「昨日の疲れは残ってる?」

 「ぶっちゃけ、怠い……」

 チコの口数がいつにも増して少ないと思ったら、やっぱり体調が良くないらしい。……無理もない、あの襲撃から一夜も経っていないんだもん。その割に、私は元気だ。その分、レブが頑張ってくれたって事かな……。

 「スライム……あんな大きさのもよく動かせたよね」

 「物は使い様、ってな」

 チコが笑って自分のこめかみを指で叩く。

 「ほとんど水っぽかったけどな……。お前もそう思ったろ?」

 「訓練のよりはびしゃびしゃしてたかな、言われてみれば。わざと?」

 「いや……狙ってたわけじゃない」

 スライムに水っぽい、固いなんてあるんだ。そう思った時点で自分がスライムという経験を持った事が無いんだ。私が魔法を使った時に初めて手を突っ込んだくらい。無我夢中で、感触も思い出せないや。

 「フジタカもありがとう。私一人じゃ核潰しはできなかったよ」

 レブなら電撃だけでゴーレムの核を破壊できたかもしれない。私に合わせたから、機能を停めるだけで魔法を終わらせたんだ。

 「チコが言ったんだよ。ザナを手伝ってやってくれって」

 「え?」

 フジタカの言葉に私は顔をチコに向ける。そう言えば、スライムを出してチコだって疲れ切っていたのに誰も隣にいなかった。

 「ゴーレムを倒して、俺がスライムで止める。……そしたら、弓矢どころじゃないと思ったんだよ。ザナは倒れるだろうし、人手が要ると思ってさ」

 「そしたらまさかの乱射だったよな……」

 フジタカって運動神経良いよね。ずっと私達から矢を打ち落としてくれてたし。やっぱり獣人ってだけでもかなり人間と違う。

 「……あの二人、どこ行ったんだろう」

 表情を険しくしてフジタカは俯いた。私達も、まさかあんな訳の分からないまま取り逃がすなんて思わなかったし。

 「死んだんじゃねーの?かなり苦しんでたろ」

 「そんな言い方すんなよ!」

 チコが手を頭の後ろで組んでのほほんと言うと、フジタカは牙を見せて吠えた。

 「……んだよ、お前だって狙われてたのに」

 「それでも……それでも……」

 人が死ぬとか、殺すとか。フジタカはやけに敏感だ。……そっか、フジタカの暮らしてた世界は平和だったもんね。

 「……ふん。で、村の連中はどうすんだろうな」

 チコはフジタカの剣幕に顔をひきつらせたけど、服の襟を正して向こうを見る。立っていたのはニクス様とカルディナさん、そしてトーロだった。

 「えぇ!召喚士がこれだけいるのに、選定試験はないんですか?」

 「……申し訳ありません」

 村の男性が困ったな、と言って頭を掻く。カルディナさんは深々と頭を下げていた。

 「理由の説明は?俺達、これでも一生懸命練習してきたんだ!」

 肌は黒いけど声変わりもしていない少年がカルディナさんに詰め寄る。他にも、少し遠巻きにこちらを見てうんうん頷いている女の子達もいた。

 「……ビアヘロ、です」

 「なんと……!」

 白髪のお婆さんがカルディナさんの答えに声を洩らし、杖を取りこぼす。

 「最近、この近辺でもビアヘロが増加傾向にあって……。安定した召喚陣の作動が確認できないため今回は中止とさせて頂きました」

 「………」

 カルディナさんの説明に皆が言葉を失う。

 「……昨日、貴女のインヴィタドが怪我をして運ばれてきたのもビアヘロに依るものか」

 村人達の集まりから、髭を蓄えた白衣の中年男性がのっそりと出てくる。あの人、トーロの治療をしてくれたロカのお医者様だ。お医者様からの言葉に、集まっていた人達がざわめき始める。噂は流れていたんだろうな。

 「……そんなところだ」

 「ふーん……」

 肩を押さえたトーロの返答に、お医者様はじろじろと彼を見る。……もしかして、傷口で何の傷なのか気付かれてしまったとか。

 「……夜になったら包帯を替える。忘れずに来てくれ。治りが遅くなってもしらねーぞ」

 「分かった。必ず行かせてもらう」

 それだけ言ってお医者様は村の人達に見送られながら帰っていった。伝言にしてはぶっきらぼうだったけど、トーロに気は遣ってくれたのかな。

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