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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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ロカでの一夜。

                          第十四章



 フエンテ、という単語が何を意味するかは分からない。だけど、ニクス様やカルディナさんの推測では個人の名前ではないだろう、との事。あのアマドルとレジェス以外にも何者かが複数人いる、とレブも同意見だった。

 レブに抱えられて着いたロカという村はニクス様の到着に、夜分にも関らず歓迎してくれる。トーロの怪我も村にいたお医者様に急患として診てもらえた。

 怪我の理由を伏せながら私達とは別に召喚士が来なかったか尋ねたところ、反応は誰からも返ってこなかった。どうやら彼らはロカには入らずに私達を待ち伏せしていたらしい。

 「せめてもの救いは、ロカの人達を巻き込まなくて済んだ事かな」

 「連中には連中の拘りがあるのだろう」

 この村で一番大きな家に泊まらせてもらう事になった私達は村長の家に訪れていた。案内された客間には、レブと私だけしか今はいない。私はベッドに横たわって天井を見詰めている。

 「……あのさ、レブ。なんでカルディナさんに部屋の割り振りを代わってもらったの?」

 「召喚士からインヴィタドが離れる必要はあるまい」

 視線をレブに移したけど、彼は簡潔に答えて椅子に腰掛けた。この構図、トロノに居た頃と変わらないなぁ。

 最初、私はコラルの宿や船旅と同じくカルディナさんと相部屋の予定だった。しかし実際には運び込んでくれたレブがそのまま居座っている。

 「ニクス様は?」

 「若造二人が警護するそうだ」

 「そっか……」

 チコとフジタカが……。二人だって疲れてるのに。

 「……ゴホン」

 二人の事を考えていたらレブが露骨に咳払いをした。私が少し身を起こすと手で制止する。……横になったままでいいのかな。

 「貴様は自分の心配をしていろ。牛男の召喚士は今晩だけでも看病に集中するようだしな」

 カルディナさんはトーロにつきっきり……そうか。

 「私が一人にならないように、こっちにはレブが来てくれたんだ?」

 「……そうだ」

 あれ……。すぐに否定すると思ったのに。

 「貴様の容体が気になった。あれだけの事をしたのだから」

 「え……どうしたの?」

 真剣に言われても、私は今もこうして起きている。ゴーレム退治の疲れはあっても歩こうと思えば歩けるし、しばらく話すのにも問題ない。

 「魔力の供給……足りてるよね?私、何かしちゃった?」

 「………」

 レブが私を見る目に疑いというか、何かを窺っている様な光が宿っている。なんとなく居心地が悪くて聞いてみたけど、しばらく黙ってしまう。

 「あ!あの魔法を使った時!レブ……何かしてくれた?」

 「……!」

 レブの目が丸く見開かれる。

 「レブの声が聞こえたんだ。無茶はするな、って」

 「……確かに念じた」

 互いに離れていたのだから声が届く様な状況ではなかった。だけど、耳元で囁かれたのではないかと思う程近くにあの時は聞こえたんだ。

 「念じたと言うよりは捻じ伏せた」

 「ね、捻じ伏せた?」

 私を、って事……?てっきりもっと優しげなものだと思ってた。

 「言っただろう。私は静電気でも出してくれれば、と」

 「うん」

 少しでも出せたら、私達の勝ち。結果はあの通り、見事私達はニクス様を狙った召喚士を捉えた。……逃げられたのは、あの場に居た誰のせいでもない、と思いたい。

 「貴様は静電気の域を超えた電撃を、自身の消耗も顧みずに出そうとしていた。だから私が蓋をしたのだ」

 「……私が?」

 レブに抑え込ませないといけない程の雷を出そうとしていた?……違うな、私が制御していないからだ。

 「ごめん……」

 「謝罪は不要だ。失敗ではないのだから」

 私が倒れたのだって、原因は魔法を制御しないで放出したからだ。だからレブに運んでもらって、今も横になっている。心臓は警告していたのに、無視して使った代償。思ったより軽く済んだと言った方が建設的かな。

 「それよりもどうだ。消費を抑えれば再び使えそうか」

 「……私、一応は使えたんだよね?」

 実感が湧かないままにレブは頷いてくれる。その顔を見て一度力を抜く。枕に頭を委ねて私は天井にぶら下げられた灯りをぼんやり眺めた。

 魔法で出したのはこの灯りの比ではない閃光だった。浴びせた者をタダでは帰さない、圧倒的な攻撃の光。それを私の手から出した。

 「以前、貴様は私が魔法を使う際に消費を肩代わりする事に対して気にしていたな」

 「まぁね」

 「だが、今回は自力でやったのだ。やり遂げたのは、誰でもなく貴様自身だ」

 レブが真っ直ぐに私を見て強調してくれる。それでやっと自分にもあの力が宿ったのかな、と信じられるようになってきた。

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