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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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トゥルエノ・イ・エレクトロスタティコ

 「……分かりました。でもね」

 「危険だと判断したら、俺が魔法で壁を作ってせき止める。いいな?」

 「お願い、トーロ」

 どこまでできるか分からない事に対する、せめてもの条件と対策。私も二人の気遣いに甘えたフリをして頷く。

 「………」

 私がやらないと。

 「自信が無いか」

 決意を確認したいのか、レブが私の隣に立つ。

 「スライムも出せないんだもん」

 「そうだったな」

 励ましてはくれない。だけど私の気負いが少しは和らいだ。

 「私から言えるのは、自分の中へと腕を通せという事だけだ。あとは静電気でも出してくれればこちらで増幅する」

 「失敗して、レブだけが雷を出したら?」

 私が目だけでレブを見ると、彼は私を見上げて冷静に答えてくれる。

 「最悪、貴様も私の雷に感電する。その後は……」

 言わなくても、大丈夫。

 「聞いてみただけ。失敗しないよ、私は」

 断言してみせる。いつもぼかさないレブに私から、率直に。

 「今までずっとレブが魔法を使うところを見てたんだもん。上手くはないと思うけど、やってみせるよ」

 「昨日今日で私と同程度操れる人間など、人間ではない」

 ほら、素っ気ない。

「大事なのは二極が同時に雷を発生させる事だ。……私一人ではできぬが……」

 「私がいるだけでも、状況は変えられるかもしれない」

 そういう事だ、とレブが首を縦に振る。

 「二人の共同作業、ってやつだね」

 「………」

 レブが口を引き結んだ。

 「……レブ?」

 固まったレブにもう一度声を掛ける。すると二、三度口がぱくぱく開いてから、ようやく返事がきた。

 「……も」

 「も?」

 「……もう一度、言ってくれないか」

 何を?と聞き返す前に私は自分の発言を振り返る。えと……。

 「私が」

 「少し後だ」

 ……要求が多いな。

 「二人の共同作業ってやつ……だね?」

 「そうだ。私達の共同作業だ」

 レブが拳を軽く振り上げ、力強く肯定してくれる。今度は私が少し恥ずかしくなって目を逸らしてしまった。

 「と、とにかく行くよ!」

 「あぁ!私は貴様と、必ず二人で成功する!」

 作戦の要に気合いが入ったところで、私達は再度ゴーレム達の前に飛び出した。すかさず弓矢とゴーレムが振るう岩の鞭が再開される。

 「レブ!」

 「任せておけ!」

 ここからは先程の再現だ。レブが引き付け、トーロは魔法を編み上げる。

 「くっ!ふっ!」

 「チコ!お前も出番があるんだからまだ前に出るな!」

 無防備になっているトーロとカルディナさんをチコとフジタカが護衛する。今のところ、矢は見事にフジタカが全部捌いてくれていた。

 「うるせー!俺だって!俺だってあのチビを見返してやるんだ!」

 レブの言葉に焚き付けられてチコもやる気を見せている。これなら!

 岩槌と岩の鞭が絶えず様々な方向から襲い掛かって来るなか、レブは相手の位置取りを意識して動いていた。離れそうになったら引き寄せて、かつわざと同士討ちをさせない。故に、余計レブは回避し切れず打たれる場面も多かった。

 それでも、最後までやり遂げてくれた。

 「反撃……開始だぁぁぁ!」

 トーロの叫び、魔法の発動が合図となって私達は前に出た。カルディナさんとニクス様はその場に残し、防御を捨てる。

 再び輝く陣がトーロの足元に広がり、大地が爆破されて巨大な岩が不吉な音を立てて飛んでいく。相手は待ってました、と言わんばかりに細い鞭を振るっていた方のゴーレム自ら直撃し、ガラガラともう一体を巻き込み大きな音を立てて崩れた。当然、レブは既に避けている。

 「今だ!チコぉ!」

 私と並走していたフジタカが叫ぶ。

 「あぁ!俺のありったけ全部……来い……やぁぁぁぁぁあ!」

 チコが召喚陣を星空へ掲げる。途端に陣が鈍く輝いて、陣の描かれた紙をすぐに呑み込みながら巨大なスライムが姿を現した。大きさにして、小さな物置小屋くらい。普段は桶一杯分程度を出していたと考えれば、信じられない量だった。

 「行けぇ!」

 チコの命令に従い、空を舐める様に膨れ上がったスライムがゴーレムを覆う。核を包む頭二つで良かったのに、二体の上半身を埋め尽くす勢いで粘液は岩の人形を呑み込んだ。私達も矢を避けながら足を止めずに突き進む。

 「ここまではやったぞぉ!」

 「あとは……!」

 「任せて!」

 再生する間は与えない!私とレブが離れて向かい合う位置に着いて粘液へ両手を突っ込む。

 レブが言っていた。自分の中へと腕を通せ、と。意味は分かっている。今度は召喚陣ではなく、自分の魔力線の中へと手を差し込む。外に出していた物を急に内側に引き戻し、流れを変えるに等しい。感覚には違和感しかなかった。だけど。

 「雷よ閃け!」

 「そして疾走れ!」

 「最後に……」

 「「貫け!」」

 一言一句レブの声と重なり、自分の足元から見た事のない魔法陣が広がる。直後、私の視界は中央から真っ白に塗り潰されていた。何かに掴まれて引っ張られるこの感覚は間違いない。経験した事もある。

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