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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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策士が割く紙

 「これが専属契約したインヴィタド……」

 アルパで戦った時とは違う。村を壊滅させる為の大きさが無い分、私達を狙う事だけに特化したゴーレムに私は身を震わせた。こんなのに一人でいる時に襲われたら、成す術もない。

 ビアヘロなら、とにかく逃げて魔力切れを狙う、指示が無いなら隠れてやり過ごす事もできただろう。しかし相手は召喚士が、故意に呼び出した存在だ。逃げようとも仕留めるまで追ってくる。

 「………」

 でも、今は一人じゃない。私にはレブも、フジタカもトーロもいる。カルディナさんやニクス様、チコもこの状況を打開する為に頭を働させているんだ。

 「一番はゴーレムの動きを封じて核を壊す」

 「その間、弓矢の援護も避ける」

 「核を壊したら、召喚士を確保……」

 一度にこなすなんて難易度が高過ぎる。しかし、どれかを怠った途端に状況は悪化するのは間違いない。

 「俺の魔法をもう一発打ち込んで、あの陣形を一つにまとめる。俺の魔法を取り込むってのなら、それを利用するんだ」

 トーロの提案に皆が顔を見合わせる。受け止めても、直撃でも倒すことが目的ではない。……そうなると、トーロとカルディナさんはこの場に固定しないといけない。後は……。

 「私達がどうするか」

 私とチコとフジタカ。この三人とレブでゴーレムの核を砕く。

 「止まればこっちのもん……とはいかないぞ。アイツらの回復速度は分かるだろ」

 レブに打ち負けて飛んで行った岩も、ずるずると引き寄せられて足や腰に戻り、やがて腕へと戻っている。専属契約をしてしまったゴーレムは実質、人型に誤魔化されているがこの川周りの全てが自分の体になっている様なものだった。

 「じゃあどうしよう!レブだってもう……!」

 レブが戦ってくれている。キリが無くて舌打ちしているのは少なからず苦戦しているからだ。分かっているのに自分にできる事が思い付かない。

 「……一つ、もしかしたらできるかもしれない。アイツらをぶっ壊さずに核をまとめて潰す方法が」

 そこにチコが重々しく口を開く。その言葉にフジタカも耳をこちらへ向けた。

 「マジかよ、チコ!」

 「お前は前向いてろ!……あのチビ、まだ動けるよな?」

 フジタカに怒鳴り、チコが前に剣を構えながら私を横目で見る。

 「うん。まだ大丈夫だと思う」

 レブが戦っていて弱音は言わない。救援が必要なら、見栄を張りながらもきちんと主張する。まだ何も言ってこないなら継戦可能だ。

 「追って来るかもしれねぇが、一度呼び戻せ。俺達も引き返して隠れる」

 納得するかな……。でも、必要ならそうするしかない。

 「分かった……!レブ!戻って!」

 「……っ!」

 私の声に反応して、レブは左右から襲い来る四本の鞭を躱し、一本を弾き飛ばした。一度後ろに宙返りして私達の方へ戻ってくる。その間も放たれる鞭に背中を打たれるが、そこは鱗なので効いてはいない。

 「こっちだ!」

 街道ではなく茂みに飛び込む。弓矢の追撃が私のすぐ横の木に刺さったがとにかく一度距離を置いた。レブも相手を警戒しながら一緒に走ってくれている。

 「ここまで!ギリギリ相手が見える位置にいろ」

 チコが言った地点で止まる。後ろを向けば、暗い木々の奥に微かに動く石山が二つ見える。完全に召喚士の方は見失ったが、あのゴーレムを動かして指示を出す以上は動くまい。

 「はぁ……はぁ……」

 「私を呼び戻したのだ、相応の策は用意できたのだろうな」

 呼吸は乱していないがレブも肩を上下させて腕を組む。平気そう、だけど……。

 「っ……。トーロが魔法でゴーレムを一か所にぶっ飛ばす。そこで俺と、チビが組んでゴーレムの核を砕く」

 チコとレブが組む?それに誰もが首を傾げた。その間にも小石が数個こちらへ矢の代わりに飛んできた。ここまで来れば核も石に魔力を纏わせ操るまではできないみたい。てんで方向違いでそこまで警戒はしなくても良さそう。

 「行うは難し。牛までならば良いだろう。だが、小僧に何ができる」

 「これだ」

 チコが自分の腕輪から一枚の紙を取り出した。

 「それ……召喚陣じゃない」

少なくとも、試験でカルディナさんが用意してフジタカが現れた方の陣ではない。

 「おい、この期に及んで何か頼もしい助っ人を呼ぶってのか?」

 「そうだ」

チコの即答にフジタカが目を丸くする。

 「何を呼ぶってんだ。頼もしい長身で細身のスタイル抜群ハイパードラゴンか?」

 「短足のデブとか言わないでよ。ちょっとは気にしてるんだよ」

 「誰もその話はしていまい。それに太ってはいない」

 あぁ、横道に逸らしちゃった……。ごめん。

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