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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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もう一手。

 「アルパと違い、小石が多い。……関節が多い生き物を相手にしているみたいだ」

 転がる石ころも相手は取り込んでいるらしい。レブは小石を幾つも乱暴に蹴飛ばすと再びゴーレムへ挑む。

 「く……近付けねぇ!」

 チコとフジタカが回り込もうにも専属契約を済ませた方のゴーレムは片腕に石をどんどん取り込んで、鞭や蛇の様に振るう。レブだって傷付かなくても思う様に移動できていない。

 「だったらこじ開ける!」

 トーロが後ろで叫ぶと私とカルディナさんはさっとゴーレムの前から身を引いた。

 「大地の巨砲よ!奴を撃ち抜けぇぇ!」

 トーロの足元から魔法の陣が展開される。ぐら、と地面が揺れたと思うといきなり地下からトーロよりも大きい岩が火薬も無しに爆発してゴーレムを目指し真っ直ぐに飛ぶ。空気を無理に裂く音が耳に残る。

 「どうだぁ!」

 岩は地面を掠めながら飛んでゴーレムへ直撃した。空は晴れていても夜の闇に土煙があっては視界の確保は困難になってしまう。

 「援護にしては強力過ぎる」

 レブが言った直後、土煙の中心から風が巻き起こり、中から姿を現したのは二体のゴーレム。一体はトーロの岩をそのまま受け止めたのか、お腹部分にそのまま大岩を嵌め込んでいた。

 「しまった……!」

 トーロがニクス様を連れて私達に追い付くがもう遅い。後ろの一体が急に跳んだ。

 「ご、ゴーレムが……!?」

 「跳んだな」

 跳躍と言うにはあまりに高く、空中分解したと言った方が正しい様に見えた。一度宙で人型を捨てたゴーレムは一つ一つが攻撃の意思を持って私達を狙う。

 「下がれ!お前達もだ!」

 前に出ようとしていたチコとフジタカも呼んで私達は来た道を戻る様に後ろへ下がった。直後、石の雨が怒涛の勢いで降り注ぐ。一つでも頭に直撃すれば私達には致命傷になりかねない。

 「仕切り直し……」

 「にしちゃあ分が悪いな」

 チコとフジタカは既に戦闘の緊迫感に汗が止まらない。武器を構え直している間に積み重なった石の山は再びゴーレムへと形を整える。

 「専属契約を与える時間を与えただけでなく、相手を強化するとはどういうつもりだ」

 「悪かった……」

 レブがトーロを一喝する。何も言い返せずにただトーロは俯いた。

 「後にしろよ。どうするよ、デブ」

 奇妙なくらい静かになった。しかし、人影もゴーレムも離れた正面に確かに残っている。このまま私達を逃がすつもりなんてない。

 「弓矢と遠距離をこなすゴーレムを掻い潜って召喚士を止める」

 「そんな事……!」

 言っていることは分かるけど、そう単純にはいかない。レブだって今回は悩んでいる様だった。

 「私達には決定打が足りない。ティラがいれば、この程度のゴーレムにそう手こずらないのだがな」

 決め手がないのはその通りだった。もうフジタカのナイフは使えないし、使えてもあの小石一つ一つを相手にするのは無理がある。まとめて吹き飛ばすのなら、それこそトーロが使う大地の魔法か、ティラドルさんが出す水の魔法なんだろう。

 「無いものねだりをしても仕方がない。私が奴を引き付ける間に策を用意しろ」

 「待って!一人じゃまずいよ!」

 レブこそ多勢に無勢、多対一は苦手なのに。言っても聞かずにレブは飛び出してゴーレム二体に殴りかかる。

 「……アイツに任せよう」

 「フジタカ……」

 追おうと前に出かけた私の肩にフジタカが手を乗せて止める。

 「あの石頭なら少しは大丈夫だ。何か……何か考えてくれ」

 追い付く事ばかりに集中していた。結局最初から、私達に備えなんてある様で無かった。あったのは襲われるだろう、という予測と心構えだけ。それでは勝利に結びつかないのは当然だった。

 「うわぁ!」

 フジタカが剣を前に構えて矢を弾く。しまった、弓の攻撃が再開された。もう一人の影も弓を持っているが、狙っているのはレブらしい。

 「ふんっ!はぁ!」

 レブは果敢にゴーレムへ飛び掛かり、積極的に核も狙っている。だけど相手が細かすぎる上に乱暴で大雑把だ。しなる様に襲い掛かってくる小石を蹴散らしてもすぐに復元され、あげく復元したゴーレムを巻き込んで大きい方のゴーレムがレブを狙う。アルパでレブがやったゴーレム砲弾をそのまま返されている様なものだ。しかも核も崩れる事でゆらゆら動いて位置が定まっていない。もはやどっちの岩がどちらのゴーレムかの判別もついていなかった。

 「……」

 このままじゃレブもいずれは押し負ける。あのゴーレムを構成している岩や石が全部レブを覆えば、殺せずとも動きを封じる事くらいはできるかも。……そうはさせないけど。

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