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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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再契約。

 レブの声と共に目の前が輝いて風が吹く。光が消え、風が止めば大きな影が二つ伸びていく。目が慣れてきて、その隣に動く人影も見えた。

 「ゴーレム……!」

 伸びた影の頭頂がそれぞれ赤く輝いた。召喚陣の発動も視認したし、あの岩の塊は間違いない。ゴーレムをこの場で召喚したんだ。

 「待ち伏せしていた割には、代り映えのないものしか用意しなかったか」

 「でもレブ!」

 相手との距離はまだある。しかも、今回は最初から奥の手は二つとも封じられている。

 「人間の弓矢で私が止まると思うな!」

 レブは真っ直ぐにゴーレムの核を目指し一人で走り出す。他の男性陣もニクス様を覗いて武器を取り出した。

 「トーロはニクス様を守りながら魔法で援護!程々にね!」

 「分かった!ニクス様は俺の後ろへ!」

 「すまない」

 カルディナさんの鋭い指示にトーロはすかさず反応しニクス様の前に立つ。すぐに魔法の詠唱に入って自身の動きを止めてしまう。

 「フジタカ!俺とお前は本体を潰す!」

 「召喚士を捕まえるんだな!遅れるなよ!」

 チコはフジタカと一緒にゴーレムを避ける様にこちらへ仕掛けてきた召喚士を狙う。でも、それじゃ間に合わない。

 「レブ!ゴーレムの足止め!魔法は好きに使って!」

 「言われずとも……!」

 私の漠然とした指示をレブは自分で判断して既に動いている。一番に気付いたのも彼だけど、それでもまだゴーレムには着かない。

 それどころか、ゴーレムの側も片方は動かない。動く方のゴーレムも上に立った人影が立て続けにレブを狙って弓を放っているだけでインヴィタドの方から攻撃はなかった。移動しているだけ?

 もう一人いる筈。そう思っても止まったゴーレムの後ろにいるのか見る事はできない。

 「く……!」

 「ザナさん!待って!」

 「状況を中継します!」

 私が前に出てできる事はない。だけど、妙に気持ち悪くて走り出していた。私達には滝があっても聞き分けられるフジタカの耳が無い。音の情報が制限されているから後ろにいるだけじゃ、駄目だ。カルディナさんが私を呼ぶけど少し前へ駆け出す。

 「まずは一体!」

 レブが射撃を続けてこちら側へ近付いてくるゴーレムへ接触する。避ける素振りを見せないレブに何本も矢は命中しているが、鱗を貫くには至らない。恐らく痛みを与える事もできていないと思う。

 だけど私の目にはその奥が見えていた。

 「レブ!止まって!」

 「指示が遅……いぃっ!」

 私が叫ぶと同時だった。後方待機していた方のゴーレムが動いた。跳んだレブごと後ろのゴーレムが前のゴーレムへ腕を振って吹き飛ばす。岩が弾丸の様に打ち出されてレブの姿も見失う。

 「普通のゴーレムの動きじゃない……!」

 ゴーレムの移動を素早く行わせて、すかさず流れる様に攻撃の挙動に移した。通常のゴーレムは複数の指示に核が反応し切れずに最新の命令に従う。拳を構えながら移動して、その勢いで攻撃しろなんて芸当はできない。……専属契約を結ばなければ。

 「まさか、今刻み付けた……!?」

 片方のゴーレムが注意を引き付けている間に後ろで召喚陣を彫っていた。……複雑な陣である必要がないのは自分でもやったから知っている。

 「ザナさん!今の……」

 カルディナさんも私に追い付く。

 「カルディナさん……。専属契約って、一人の召喚士が複数回行う事ってできるんですか……?」

 質問している場合ではないけど、確認しておかないと。

 「……試す人がいたわけか。私は知らないけど、理屈としては可能なんでしょうね」

 それが聞けただけでも十分だ。専属契約は召喚士とインヴィタドの一対一で行われる。仮に専属契約の召喚陣を持ったインヴィタドが何らかの理由で陣諸共消えてしまったらどうなるのか。

 ……たぶん、召喚士は再び別の相手に契約陣を刻み込めば再度専属契約を結べる。その答えがあのゴーレムだ。動きが良いのは、前回よりも体が一回り小さいからというだけでは説明がつかない。

 「レブ、返事をして!」

 「ここだ……!」

 私が声を張ると弾け飛んだ岩と岩からレブが飛び出し、こちらへ駆けて来た。

 「ふんっ!」

 突然走りながら真後ろに向きを変えて跳ねると腕を薙ぐ。べき、と音がして折れた矢が私とカルディナさんの脇に落ちた。

 「狙われているのは契約者だけでない。もはや、ここにいる全員だ」

 「ご、ごめん……ありがとう」

 レブはすぐにもう一度ゴーレムへ挑もうと前へ出る。せめて少しでも情報を伝えておかないと。

 「あっちのゴーレム!たぶん専属契約してる!気を付けて!」

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