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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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弱点は誰にでもある。

 「犬でも喉が枯れれば吠えられまい。そういうものだ」

 「遠吠えと怪獣の火炎放射を一緒にすんなよな……」

 解説したレブへ冷静にフジタカがツッコミを入れる。自信満々に断言するものだから、私も納得しかけたけど確かにそうだ。……でも、レブからすれば似た様なものなのかな。

 「ずっとは出せないって事だよね」

 「焼き尽くす理由もそこまで無いからな」

 炎よりも拳の方が早い、と言ってレブは尻尾を地面へ叩き付ける。それに、炎が出せたところで竜の鱗には通じない場合が多い。戦いに使っても相手への牽制くらいにしかならなかったのかも。

 「眠気に挫けそうならいつでも言え。尾の先を焦がして起こしてやろう」

 「テメェ!俺のキューティクルをチリチリさせたら怒るぞ!」

 珍しくフジタカが怒鳴った。……拘りがあるんだろうな、本当にいつももふもふしてるし。冬とか絶対あのもこもこは温かいよ。

 そんな心配を余所に私達は夜中に移動し続けた。眠そうだった人は強いて言うならニクス様くらい。聞いてみると、眠そうと言うよりは視界が確保できずに目を細めていただけだった。

 陽が昇り出して私達はすぐにフジタカの能力の確認をする。草を切って消えれば、フジタカは一番の戦力として温存態勢に入って優先的に眠ってもらった。夜は消せないがいつから消せる様になるか把握する上では良い実験になる。

 三日は歩き続けるとカルディナさんは言ったが四日経っても私達はロカへは着かなかった。理由の一つとして視界と安全の確保を第一にした結果。もう一つは……。

 「相変わらず時間の見積もりが下手だな、カルディナ」

 「ごめんなさい……」

 陽が傾きかけた頃に私達の旅路が進む。今日の分が始まる、と地図を睨んでいたトーロがムスッとしながら呟く。対してカルディナさんは顔を赤くして俯いた。

 保存食はまだまだ用意があった。トーロは計算が苦手、とカルディナさんが教えてくれたけど雑に買ったわけではないみたい。地図を見て感覚的に分かるんだろうな。そして、カルディナさんのこうした弱点を経験で知っているから対処もできる、と。

 「俺三日って聞いてたのにー」

 「チコ……言っても仕方ないだろ?あの川を越えたらすぐだって」

 疲れを見せ始めるチコにフジタカは余裕を見せる。セルヴァでの走りでも思ったけど、フジタカは持久力というか脚力があるのかな。

 「貴様はへばらないのか」

 「私?うん、しっかり揉んで、疲れを持ち越さない様にしてるもん!」

 へばらないのか、って聞き方は変えようよ。

 「……ならばいい」

 疲れた、って言ったら前みたいに背負ってくれるのかな。……それってレブにとっては得なのかもしれないけど、私達からしたら貴重な戦力を削る事になるんだから頼めないよ?気持ちはありがたいけどね。

 坂道が続き、周りの景色が平原から変わってきた。見えていた川も、徐々に見え隠れして街道は細くなっていく。逆に歩いていた道に合わせて聞こえていた水流の音はどんどんと大きくなっていった。

 「これ、川っていうか……」

 「滝だな……」

 フジタカが顔を掻き、チコは首を上へと傾けて呆然とした。音源を見付けて私も言葉を失う。

 森へ入るのか、と思うくらいに木々が増えてきた辺りで一度視界が開ける。そこに広がっていた光景は圧巻だった。

 大きな岩があちこちに転がり、穏やかな勢いで透き通った水が流れていく。しかし水音は非常に大きく、声を張らないと互いの声もきこえないくらいだった。

 そう、聞こえていた水の音は川の水ではない。その少し上流にある滝のせいだった。私達の何倍もの高さを誇る滝が絶え間なく水を落としている。暗くなってきてその姿は綺麗と言うよりは私達を圧倒する、まさに水の竜の様だった。

 「橋が近くにあると思うの。まずは……」

 「その前にする事がある」

 私達が滝に目を奪われて少ししてからカルディナさんが口を開く。次の段階へ行きたいのにレブが遮った。

 「焚き火の用意か」

 「やってみるか」

 トーロが歩きながら確保していた木の枝をレブが取り上げる。すぐに口から火を出してレブは上流へ駆け出した。

 「おい、どこへ行く!そっちは……」

 レブを呼び止めようとしたトーロの横で、フジタカの耳が跳ねた。

 「……っ!違う足音だ!」

 トーロの声をかき消す様にフジタカが叫び、私の方を見る。

 「……ふんっ!」

 レブが木の枝を両手で持って大きく振るう。すると、火が点いた部分の枝が何かに激突し分断された。あっけなく火種は川へと落ちて明かりは消えてしまう。

 しかし、消える前に確かに私達は見えた。レブが持っていた松明を壊したのは、彼のずっと向こうから飛んできた一本の矢だったと。

 「敵襲、だな」

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