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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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レブの役目。

 「私達から見れば同士はまだまだ少ない。そうだろう」

 「デブやトーロだって同郷じゃないけどさ……」

 苦笑いしながらフジタカもレブに同意する。そりゃあ、三人からすればそもそも異世界から客人、として来てるわけだし……。

 「貴様は召喚士となって今までの常識が通用しなくなったから、そう感じているだけに過ぎない」

 遠慮のないレブからの追撃に耳が痛い。召喚士になって変わった事か……。偉そうで口の悪い竜が常に一緒に居てくれるとか。

 「確かに、今まではインヴィタドを見る事なんてなかったなぁ」

 それこそセルヴァは小さな村だったから常駐召喚士なんていない。ビアヘロが現れても通りすがりの召喚士に頼るか魔力切れを頼るしかなかった。或いは、対処できる相手なら無理矢理に戦うか。契約者が来た時と同じ程度くらいの頻度でしか、召喚士に会う事もなかった。

 幸いにもセルヴァには結界陣は強力なものを用意してもらっていた。そのおかげでインヴィタドの様に召喚士側から認可されていない存在は近寄れない。生半可なビアヘロでは本能的にセルヴァを避けてしまうらしかった。だからこそ、ペルーダは半端なビアヘロでは本来なかったと思う。それと真っ向から戦ったのがレブで、退けたのがフジタカなんだ。

 「そう思えたのは、“自分が違う場所へ来た”という貴様自身の気付きだ」

 ひゅーっ、とフジタカが口笛を鳴らす。

 「気付けたザナは偉いっ。今自分が居る場所で学ぶ機会、存分に活かせよっ!ってデブが言ってるぞ」

 「減らず口を叩きおるな……!」

 レブが牙を見せてフジタカに威嚇する。知らん顔でフジタカは歩き続けた。……レブって警告はするけど手は出さないんだよね。……ティラドルさんを除いて。

 でも、学ぶ機会を活かせ……か。

 「レブの言う通りだね。せっかく、召喚士になってレブや他のインヴィタドと話す機会もあるんだもん。召喚士として何でも吸収していかないとね」

 「私は何も言っていない」

 フジタカとカルディナさんが小声で笑い、トーロが鼻息を噴出した。

 「そういう事にしとけよ、チビ」

 チコは欠伸を隠そうともせずに大きく口を開ける。

 「でもたまには、レブの口からちゃんと聞きたいかな」

 思うだけでは伝わらない事がある。それは、アルパの一件の後に二人で確かめ合った事でもある。

 「………」

 レブが前を歩きながら、再び横目で少しの間だけ私を見た。すぐに目線は前へと戻る。

 「甘えるな。貴様には自力で気付く力が既に備わっているだろう」

 「えー」

 甘えるつもりで言ったわけじゃないのに突き放すんだから。

 「ただし」

 「え?ただし?」

 急にレブが付け加える。

 「貴様が誤った解釈をした時は、私が是正する。それが専属契約を結んだインヴィタドである私の役目だ」

 立ち止まり、私が追い付くのを正面から待って見据えながらレブが言った。

 「………」

 「……返事は何もないのか」

 横をチコとカルディナさんが通り過ぎる。でも、ちょっと待って。

 さっきもさり気無く、私を評価してくれてなかった?気付く力は既にあるって。誤った解釈かもしれないけど。

 「頼もしいよ、レブ」

 是正してくれる、と言った。……答え合わせは今でなくても良い、よね?

 「ふん」

 レブは私を見上げていたが鼻を鳴らす。そのまま背中を向けて歩き出してしまった。私へのその……愛情表現以外も素直に言ってくれたらいいのに。一回恥ずかしがっちゃったのが悪いのかな。

 「火があると安心するね」

 気を取り直して私はレブへ話を振る。

 「相手に自分の位置を知らせている様なものだ。気を抜くのは休む時にしておけ」

 森に住んでいた頃は夜が来たら目は見えなかった。木々が星や月も隠してしまうからだ。

 だけど、今は違う。雲が星の輝きを遮っているだけ。灯りは無くても歩けるけどカルディナさんの様に目が悪い人にも合わせないといけない。トーロの持つ松明が眩しくて私は目をなるべく街道の脇へと向ける。揺らめく火よりは夜の草原を眺めていた方が心も落ち着けた。

 「レブの火って……魔法じゃないんだよね?」

 「体質だ」

 私から何か抜かれる感覚は無い。……翼で空を飛び、鱗に覆われ、爪と牙を持って火を吐き魔法も操る生物。自分には何一つ持ってないものがレブの小さな体には全部詰め込まれている。

 「じゃあ火ってずっと吐いてられるのか?」

 フジタカの質問にレブは短くいや、と答えた。

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