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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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にらめっこ。

 「そうそう召喚士にとって都合の良い物件は現れない。一長一短は避けられんな」

 「悔しい事にね。だから私達はより高みを目指してるの」

 カルディナさんの上昇志向、レブは嫌いじゃないだろうな。利用するだけ、という表現をするなら逆に最も嫌いそう。

 そんな話をしている間にコラルの船舶停に着いた。乗客の名簿を見せろ、なんて情報開示を求めても相手だって客商売。簡単には見せてもらえず、交渉している間にも時間は過ぎてしまう。

 探偵でも傭兵でもない自分達が言っても無駄。私達は所詮、試験官と勉強中の召喚士なのだから。

 そこで出番が来たのはニクス様だった。彼はこの世界で貴重な召喚士を増やせる更に希少な契約者。そんな要人を試験官や見習いが警護する為に必要な情報なのだとレブも交えて粘り勝ち。ようやく名簿を閲覧する事ができた。

 「……ありました?」

 「……いいえ」

 「うむ……」

 三人で見ているけど、見当たらない。考えれば単純な話だ。アマドルとレジェスが偽名で乗った可能性だって大いにある。

 「レブ……」

 「私はこの世界の文字が読めぬ。当てにするな」

 私は記帳を取り出して、文字を書いて差し出す。

 「上はこう書いてアマドル、下がレジェス。……分かった?」

 「……あぁ」

 まだ確認していなかった名簿も手渡すと、レブは渋々見比べながら確認を始めてくれる。一人だけ休ませるわけにはいかないんだから。

 「レブ、文字の勉強する?」

 前にそんな話もした。結局今の今まで教えられなかったんだけど。作業しながらも申し訳なく思って再度話題にする。ずっと名簿見ているのも疲れちゃうし、少し息抜きしつつ。

 「貴様が夜のプライベートレッスンをしてくれるわけだな」

 「ぷ、ぷら……?」

 それに対して何かよく分からない言葉をレブが使う。一気に集中が逸れてしまった。

 「それ、フジタカが言ってたんでしょ。あ、フジタカも文字読めないよね。どうせなら一緒にやろっか?」

 ニクス様は作業してくれているし言わずもがな、この世界の文字にも通じている。だけどこちらに来て日が浅い部類のレブ達も、そろそろ文字にも触れないと。

 「……それでは意味が無いな」

 私は乗り気になってきたけど、ぷらいべーとれっすんってフジタカがいたらできないんだ。……フジタカの言葉って、教えてもらっても活用できないんだよね。

 「トーロは文字って読めるんですか?」

 「一応ね。数字の計算は少し時間が掛かってるみたい」

 カルディナさんも話は聞いていたのか目線も名簿を追いながら口も動かしてくれる。

 「あ、フジタカが計算は一通りできるって言ってました」

 「勉強しながら旅、っていうのもいいかもしれないわね。……無い!」

 バタン、と名簿を閉じるとカルディナさんは目頭を揉んで肩を落とした。私も少し遅れて結局、二人の名前を見付ける事ができないままに本を閉じる。

 「私もです……」

 「こちらもだ」

 ニクス様も発見できなかったみたい。頼みのレブは……。

 「……これか?」

 「えっ!」

 「ちょ……見せて!」

 目付きを鋭くし右往左往していたレブの目の動きがピタリと止まり数秒。口を開いたレブが名簿から私へ視線を移した。すぐに名簿を受け取り、私も見返す。

 そこには確かにアマドル・マデラ、レジェス・セレーナの二人の名前が書かれていた。

 「ありがとうレブ!」

 「ふん。この程度、造作もない」

 いつもと同じ反応でも一言増やした。それに私はくすりと笑う。

 「少し張り切った?」

 「私は普段と変わらない」

 そういう可愛くないところとか、ね。

 「日付は五日前……。早いな、ロカに着いていてもおかしくはない」

 狙いの契約者がいないのだ、ロカに何か起きているとは考えにくい。だけど、必要とあらばアルパの様な破壊を繰り返すのは間違いなかった。ニクス様も日付を見て溜め息を洩らす。

 「私達がここに来ると見越してわざとこの名前にしたのかな」

 「だとしたら、嘲笑われているだろうな」

 レブがスッと目を細める。

 「でも、五日前の話なら……!」

 カルディナさんは船舶停の受付に話を聞きに行ってくれた。しかし彼らについて分かった事は何もないまま夕方を迎えてしまう。

 当然、乗客は私達が探す二人だけではない。大勢の船乗りや商人、観光客や帰省で訪れる者がいる上での二人だ。まして、みすみす印象に残るような真似をする理由も無い。

 お前達が来る事は知っていた。と言われた気分だ。私達だって予めロカへ向かうとわざと宣言していても先回りされたのは事実。相手は追い詰めた気でいるだろうけど、私達はまだ手応えが得られていない。

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