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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
アラサードラゴンと狼男子高校生、海路を往く
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君達の出番。

 「成程な。標的は契約者。ならば契約者が今後どう動くかによっては、こちらから向こうを誘き出せる」

 レブが噛み砕いて話してくれたから内容は分かった。だけどそれは……。

 「ニクス様を囮にするって事……!?」

 「………」

 否定してくれないレブ。そこにティラドルさんが会話に入る。

 「お嬢様。見方次第です」

 「……見方」

 ティラドルさんが頷く。少し、感情的になっちゃったけど考えを改める。

 「……どっちにしろ」

 「そう。どちらにせよ、契約者は狙われます」

 私の行き着いた別の答えにティラドルさんが付け加える。……事実だ。

 「契約者を狙って、トロノが危険を被るか別の場所で迎え撃つ、か……」

 トーロが苦々しく呟く。そうだ、本来天秤にかけること自体がおかしいのに。

 「どちらにせよ契約者に危険は常に隣で寄り添っている。ならばこそ、少しでも私達が有利な状況を用意したい」

 そうだ。向こうだって今すぐ襲ってこないとは限らない。こうして会話している間にもニクス様を狙って……。

 「ニクス様は?」

 「この研究室の近くにある別室だ。治療を受けてまだ寝ている」

 ……覚悟はしていた、とニクス様は言っていた。

 「どうされるのでしょう、これから……」

 「決まっている。契約者であり続ける以上、する事は何も死ぬまで変わらん」

 カルディナさんの曇る表情に冷水をかける如くレブが言い放つ。

 「……そこで提案」

 所長がやっと話を戻す。

 「ニクス様には、前の予定通り海を渡ってもらう。そこで君達には港で契約者殺しを狙った二人を迎撃してほしい」

 「承知しました。……合格にしてここへ連れてきた責任は自分で果たします」

 カルディナさんが頷く。トーロも鼻息を噴出してやる気を見せてくれる。

 「君と、君もね」

 「えっ」

 「え?」

 ブラス所長の差す指が、チコと私にも向けられた。

 「ちょ……!所長!ザナさんとチコ君も、ですか!?」

 「……そして、私には待機ですか」

 カルディナさんとソニアさんからもそれぞれ不満が出てくる。私も自分が指名されるなんて思ってもいなかったから目を丸くした。

 「特待生の勉強と、名誉挽回の機会としての提案なんだけど」

 名誉挽回、とはカルディナさんに言っているんだ。……前々回は私達のせいでしばらくニクス様に同行できなかったし、再度同行したら今度はアルパの事件。直接本人のせいではないのに、係わったせいでこんな目に合うなんて。

 「特待生の勉強って……。勉強にしてはかなり難易度高くないですか?」

 チコも引き気味に閉口する。

 「……私達三人でニクス様の護衛、ですか?」

 「うん」

 私達と、レブ達。所長は一言で言い切った。

 「多ければ良いというものでもあるまい」

 そうは言うけど。

 「相手が二人とは限らないんじゃないの?」

 「何人が何を寄越して来ようと私には関係無い」

 ……この自信をその姿で言うと説得力も無いんだよ、レブ。

 「……ま、日中ならフジタカのナイフもあるしな」

 「またゴーレムなら……俺も対策考えないと」

 フジタカが畳んだナイフを見て溜め息を洩らす。課題は皆にあった。

 「……それにしても、海か」

 知らない世界へ踏み出すまた一歩になる。船に乗った事もなければ、海を見た事も無い。物語の中や人伝に聞いた事があるだけだ。それを自分で体験できる。それは良い機会だと思った。




 「レブちゃん、トロノから出てくんだって……?ダリオさんが落ち込んでたわ」

 「知っている。既に三日連続で顔を合わせているからな」

 いつもの果物屋さんの店主、ルナおばさんがレブを見下ろして胸に手を置く。もう私達が契約者と共にトロノから出立する事は町中に知らされていた。これも、二人の召喚士を誘い出す為にわざと大々的に取り上げている部分もあるんだけど。

 だからこそ、アルパをそのままに逃げるのかという声も少しだが、聞こえてきた。相手は事情を知らないし、私達も言えないから向こうに言われるのは仕方ない。

 仕方ないけど……こうして私達との別れを惜しんでくれる声もある。ダリオさんだって配達で私達を見掛けると前以上の勢いで今日も会えた!と喜んでくれた。私達も早く出立した方が良いのだろうけど、準備はしておかねばならない。備えすぎても足りないと思ってしまう。

 「どうするんだい?って……レブちゃんに言っても、答えは変わらないんだね」

 「あぁ。いつものを頼む」

 「はいよ」

 言って、レブにルナおばさんはいつものブドウを渡してくれる。

 「……戻ってくるんだよね?」

 「ここでブドウが買える限りはな」

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