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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
異世界に来ちゃった狼男子高校生の苦衷
33/396

役割分担。

 ゴーレムの足が上がった時にはフジタカは前転して踏み付けを避けようとしていた。しかし、見た目の重量に反して相手の動きの方が若干早い。

 「フジ……っ!」

 「遅ぉい!」

 駆け付けたレブがゴーレムへ頭から体当たりをした。倒すまでには至らなかったが体勢を崩したゴーレムは大きく後退する。

 「悪い!」

 「立て直せ。すぐに来る!」

 フジタカは立ち上がって背負っていた鞘から剣を引き抜く。レブも拳を前に構えて私の方へ向かっていたニクス様の前へ移動する。

 「どうなってんだ!俺、部分的に消したりとかちょっと器用な事できる様になったわけ!?今必要ねーから!」

 「……違う」

 レブとニクス様が首を横に振る。私も見えていた。

 「ナイフが触れる直前、ゴーレムは自分で腕を切り離した」

 「は……?」

 レブの言う通りだった。フジタカの何でも消すナイフが触れる寸前にゴーレムは左腕が接合されている部分へ魔力を通すのを止めた。魔力が見えるわけではないが、少なくともフジタカが腕に乗った重さに耐え切れなかったとは考えられない。レブやニクス様の目には魔力の流れも見えているのかな。

 「な、なにそれ?じゃあ……俺のナイフの力を相手も知っていたとか?」

 「それを調べる余裕が今は無い」

 レブの一言に誰も言い返せない。ゴーレム二体が私達を標的として捉えているのだから。暴れる一方と思いきや動きを一旦止めてこちらの様子を窺っている。

 「ザナさん!」

 「カルディナさん!」

 エルフ達が炎とビアヘロから逃げ惑う中を掻き分けてカルディナさんが現れた。ゴーレムの動きを気にしていたが、何とか無事に合流する。

 「トーロとソニアは……?」

 「今、ポルフィリオさんやチコ達とこっちに向かってます!」

 自分のインヴィタドの姿を探すカルディナさんにまずは報告する。少なくとも二人とも今のところは無事だ。

 「今からここには間に合わないか……」

 親指の爪をかじって眉間に皺を寄せるカルディナさんはススだらけに汚れていた。

 「カルディナさんは今まで……?」

 「ニクス様の指示でアルパのエルフの避難誘導を。……皆、一度トロノに向かってもらっています」

 ニクス様もカルディナさんに頷く。

 「早くあのゴーレムをどうにかしようぜ!」

 フジタカが怒鳴ると、隻腕のゴーレムの方がゆっくりと動き始める。ズン、と足で地を鳴らして腕が振り上がりニクス様が待機していた家屋を今度こそ叩き壊した。

 「……そうしたいが消火も必要だろう。ティラ!」

 「はっ」

 ティラドルさんが今度はレブの前に下り立つ。

 「お前は消火作業を優先しろ。ゴーレムはどうにかする」

 「承知致しました」

 一度こちらを向いて一礼すると、ティラドルさんは再び空へ一気に昇ってしまう。

 「戦力は……貴方達、だけ?」

 「不満か」

 カルディナさんにレブが一睨み。

 「不満に決まってるだろ!」

 そこにフジタカが割り込む。もはやもう一体のゴーレムもこちらに動きが無いと察したのか、横を向いて建物の破壊を再開し出す。

 「お前の執事が消火に行ったら……」

 「ティラがゴーレムを優先すれば、火はどんどん広がる。火を消す効率は私よりも、ましてお前よりも圧倒的に奴の方が高い」

 「く……」

 レブが笑う。

 「ふっ。覚悟を決める必要はない」

 ボキボキと指を鳴らし、肩を回すとレブは数歩ゴーレムへ向かう。

 「戦うのは、私一人だからな。わんころは召喚士と契約者を守れ」

 レブの宣言に私だけでなく、集まっていた三人の表情も強張った。

 「お前、無茶言うなよ!さっきの頭突きだって小声で痛い、って言ってたろ!?」

 「……それはそれ、これはこれだ」

 やっぱり痛かったんだ、あれ。凄い勢いだったもん。

 「二対二だって分は悪いわ。……下手したら、全員で消火して、それから三体二、四対二でゴーレムの対処をした方が安全よ」

 カルディナさんの不満、と言うよりも提案だった。客観的に見ればレブとフジタカでは勝てそうにない。大きさだけでも、それぞれの力だけでも。

 「この集落の全てを消し炭にしたいのか」

 「そんな訳ないでしょう!?だったら何か策でもあると言うの!?」

 淡々と返すレブに遂にカルディナさんが怒鳴った。そこで私も気付いてしまう。

 レブがこんな時、考え無しに何か言う事はない。特に戦闘に関してはいつも冷静な竜人の隣に私は居たんだから。何かはまだ分からないけど、確信だけなら……

 「ある」

 私が代わりに答えてレブの横に立つ。

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