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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
異世界に来ちゃった狼男子高校生の苦衷
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沈まぬ太陽。

 「……にしてもさ、おかしいんじゃないのか?セルヴァ、トロノ、アラクラン……えっと、ぴえどら?こんなにビアヘロがポンポン出てくるって……」

 空気を変えたいのか、フジタカが自分から話を振ってくる。

 「だからこそだろう」

 レブが一番に答えた。

 「この辺りは比較的、異界と繋がり易い要因がある。そこから現れるビアヘロを未然防止できるようにするためのトロノ、そして召喚士育成機関……だな?」

 レブが目だけ少し後方に向ける。ソニアさんは頷いてくれたが、口で解説してくれる余裕はなさそうだった。

 「詳しい話は講義を受けるのだな」

 「そうだね」

 話している間に北の森へ到着する。今回はサウロ君達もいないのでソニアさんにエルフの集落まで案内してもらった。

 「すげぇ……。木の中に人が住んでるって本当にファンタジーみたいだ」

 集落に着いてまずフジタカの目に留まったのは大樹に取り付けられた扉や窓だった。このエルフの集落、アルパでは木造の住宅もだが、大樹を掘り抜いて造られた家も多いらしい。

 「ソニア!」

 私達がアルパに着いてすぐにカルディナさんが駆け付ける。その奥から、ニクス様もゆっくりと現れた。

 「カルディナ、どういう事よ。私まで呼び出されるなんて」

 「ごめんなさい。でも、話している時間もないの!」

 カルディナさんが言った直後だ。北の森の更に向こうで地鳴りが響く。土煙が上がり、空に広がっていた。

 「な、なによアレ……」

 「だから、トーロでも手に負えないのよ!半端じゃない大きさで、引き付けるのがやっとなの」

 アルパに住むエルフ達も立ち上る土煙を見て顔を青ざめさせている。逃げるにしても、今は下手に動かない方が良い。

 「急ごう」

 フジタカが防護用の手袋に指を通す。レブが一歩前に出て、ティラドルさんを指差した。

 「ティラ。犬ころをあそこまで運べ」

 「え、おい!デブ!」

 「アラサーテ様!しかし……」

 言いたい事を同時に言おうとした二人だったが、レブが足を叩き付けて地面を鳴らすと口を閉ざした。

 「時間がない。間に合う今のうちに活躍してもらおうか」

 「……っ…!」

 フジタカが空を見上げる。確かにもう空は濃い群青へと様相を変えていた。夕陽も橙を強く帯び、森も少しずつ暗くなっている。

 「アラサーテ様の命だ、掴まれ」

 「お、おい勝手に……!」

 襟首を掴んでティラドルさんが翼を広げた。すぐにレブが私の服の裾を引っ張る。

 「私達も行くぞ。乗れ」

 「乗れって……背中?」

 ぴょこん、と前に出て腕を後ろに回す。手に足を乗せれば丁度良さそうだけど……。

 「ちょっと、私達は?」

 「知るか。来るなら勝手に来い。現場の判断でビアヘロは処断する」

 時間を気にして私はレブに身を預けた。すぐにティラドルさんはフジタカと羽ばたき、レブは鉱山へと駆け出した。後ろでチコやソニアさん達の不満が聞こえてきたけど、すぐに遠のいてしまう。

 「………」

 「………」

 過行く景色の中で束の間、ニクス様と目が合った。

 「れ、レブ……!」

 「身を低くしていろ」

 前へ向き直るが、レブは速度を緩めずに森を駆ける。途中、木の枝にフードが引っ掛かったりしながらも止まる事は一切無かった。

 「こっちだな」

 レブは無遠慮に方向を変えて騒音の音源へ急ぐ。私も下手に喋るよりもレブに任せるべきだと判断した。

 「アラサーテ様!どうやら……」

 「そこか」

 「……死ぬかと思った」

 崖の前で土煙を巻き上げる岩塊を発見し、私達は合流した。着地してようやく手を放されたフジタカは力無く座り込んだ。飛行した感想はあまり良くなかったみたい。

 「……アレもビアヘロなんだね」

 岩塊がのっそりと動き出す。大きさはゆうにフジタカの数倍。建物一つが大暴れしている様なものだ。大岩の人形、ゴーレムは坑道への入り口らしき大穴へ自分の胴を振り子の支点にして腕を叩き付けている。

 「……陽は!?」

 フジタカが空を確認する。この位置で夕陽は見えないが、明かりを点けていない今も私達はまだ影と足元で繋がっているのが分かった。

 「まだ……」

 「あぁ、間に合った様だな」

 レブにフジタカが頷く。

 「だったら任せとけ!一発かませれば俺の勝ちだ!」

 ナイフを展開し、フジタカが身を低くする。

 「でけぇな、さすがに。でも……!」

 ゴーレムはまだこちらに気付いた様子はない。一心不乱に坑道を壊す勢いで腕を振り回している。気圧されると思ったけど、フジタカは牙を見せて唸った。

 「……うぉぉぉぉぉお!」

 吠えると同時に、フジタカが走り出した。しかし、ゴーレムの頭が声に反応したのかフジタカや私達へ向いてしまう。

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