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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
異世界に来ちゃった狼男子高校生の苦衷
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疾駆!目指すはピエドゥラ。

 「そんな……ポルが……」

 セシリノさんが膝から崩れ落ちる。しかし倒れる前にその体を支えたのはフジタカだった。

 「おっさんはまだ消えてない。だったら、まだ召喚士も無事だ。……だよな?」

 「理屈ではな」

 レブの一言とフジタカの支えでどうにかセシリノさんは再び立ち上がる。

 「すまねぇな、兄ちゃん……」

 「大丈夫だ。俺達が行って、どうにかする。そうだろ?」

 フジタカがティラドルさんを見上げる。だけどティラドルさんの表情は厳しかった。

 「そう願いたくて来た。だが問題はお前をどうするか、だ」

 「え……」

 固まるフジタカに続ける。

 「今から向かったのでは、恐らく到着した時点で日が暮れる瀬戸際だ。……お前が」

 「お前が来たところで、意味が無いなんて言わせない!」

 ティラドルさんに強く言い返すとフジタカは歩き出していた。

 「馬は蹄鉄の取り換えで使えないんだろ?だったら話してる時間も惜しいだろうが!」

 「お、おいフジタカ!」

 チコもフジタカを追って走り出す。私は一度セシリノさんに振り返った。

 「ザナさんよ……。アイツ、どうしちまったんだ?」

 「戦う理由を見出したそばから、余計な横やりを入れられ不愉快だったんだろう」

 レブがティラドルさんを睨む。途端におろおろとフジタカの背中と、レブを交互に見て困っている様だった。

 「わ、我は……」

 「なんのこっちゃか分かんねぇが……だったら俺も!」

 セシリノさんが工房へ戻り、飾っていた大槌を手に取ろうとする。しかし、それを止めたのはレブだった。

 「待て。……この先は本職に任せてもらおう」

 「で、でも……!」

 自分の召喚士がいなくなれば、この世界にはいられない。居ても立ってもいられないのは分かる。

 「お前の手は直し、生み出すためのものだ。私にはきっと真似できまい」

 言ってレブが自分の手を見下ろす。私だってもしもレブの身に何か起きたと分かればセシリノさんの様に駆け付けたい、と思う。だけどセシリノさんまで危ない目に合わせるわけにはいかなかった。

 「この手は破壊する事にしか向いていない。何かを割り、潰し、砕き、裂く。しかしそれで救われる何かが確かにあると知っている」

 「アラサーテ様……」

 ティラドルさんも、私もその手に救われている。

 「この拳にかけて、お前の召喚士は私が連れ戻す。約束しよう」

 「…………」

 セシリノさんが大槌から手を放す。しばらくその手を見詰め、次に手に取ったのはさっきも振るっていた金槌だった。

 「……ドラゴンにそこまで言われちゃ、信じますわ。どうか……どうか、ポルを。俺は信じて今日の仕事をこなすまででさ」

 「それで良い。今日中に連れ戻すと誓おう」

 レブの力強い宣言にセシリノさんの目に輝きが戻る。レブも短くふ、と笑って私達も走り出した。

 トロノ支所に戻るとソニアさんが装備を整えていてくれた。今回は私も剣を持たされる。

 「貴様には不要だがな」

 レブはそう言うけど、私だって自分の身を守るくらいはしないと。一応最低限構えや振り方は教わっている。せっかく習った事だから、無駄にはしない。

 「あの、人手も俺達だけなんですか?」

 「……走りながらよく喋れるわね。さすがは獣人……」

 まず私達は北の森を目指し走っていた。使える馬車も鉱山行に回されており、本当に足で向かうしかない。

 フジタカはソニアさんに現状を聞くが、ソニアさんはもう疲れている様に見えた。たぶん手続きや他の伝手を探して走り回ってくれていたからだ。装備も揃えておいてくれてたし。

 「……ポルフィリオ以外にピエドゥラへは複数の召喚士やインヴィタドも護衛で行っていたの。だから現地にはもう数人はいるわ」

 「少なくとも、町から派遣できる中で割ける戦力があるとしたら、アラサーテ様と君だけだった」

 ティラドルさんも滑空しながら教えてくれる。背中にレブを乗せようとしたが、本人に全力で拒否されていた。

 「……夜になったらナイフは使えない」

 「……あぁ」

 フジタカが前を向いたままティラドルさんへ話し掛ける。

 「この新しく貰った剣でゴーレムってのと戦えるかは分からない。だけど、鉱夫の避難案内でも攻撃の盾でも、行って意味が無いって言われない様に頑張る」

 「……そうか」

 二人の間に少し重い空気が流れる。さっきレブに叱られたからかティラドルさんは謝りも肯定もしなかった。レブも黙々と前だけ見て走っている。足が短いからかほとんど跳ねてるみたいに見えるけど。

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