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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
異世界に来ちゃった狼男子高校生の苦衷
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召喚士と鍛冶師。

 「鍛冶と石工の妖精、私も間近で仕事を見たのは初めてだ」

 「俺ぁ妖精ってツラしてませんがね。はっはっは!」

 飾られた大槌は頭の部分が私の胴体以上の大きさもある鉄塊だった。もしあれを振り回して鍛冶を行う事もあるのなら、妖精の域を超えている。

 「俺はコイツの微調整に馬車駅まで行くが、一緒に来るかい?」

 「行く!」

 仕上げの微調整で削蹄の作業も今日のうちにやってしまいたいのだそうだ。フジタカもチコも、最初は鋼をガンガン叩いて剣や防具を作る作業が見れると思っていたらしい。だけど今となれば細心の注意、絶妙な力加減で鉄を意のままに変形させる技術の方に感心してしまう。外でも見れるとなれば尚更だ。私も当然、もっと見たかった。

 「よぉし、じゃあちょっくら道具を準備すっから……」

 「……む」

 セシリノさんが工房の奥へ向かう一方、レブが急に窓の外を見た。

 「どうしたの?」

 「あれが見えるか」

 レブが指差した先に、何かが飛んでいた。……もはや鳥や何かと見間違う筈はない。

 「ティラドルさん……?」

 翼の生えた人型が真っ直ぐにこちらへ向かって飛んできていた。言われてやっと気付くくらいだからやっぱり目ざといというか。前は臭う、って言ってたっけ。

 「ただの羽虫だ。撃墜してやるか」

 言ってレブは扉を開けて、足元に転がっていた少し大きめの石を手に取る。

 「こっちに向かってきてる。普通に避けられるよ」

 「……それもそうだな」

 いや、そうじゃないんだけど。口から最初に出た言葉に自分でも反省してる。レブの考え方が読めてきたというか。

 「ならば魔法か」

 「攻撃禁止だってば!ティラドルさんに何の恨みがあるのさ!」

 やっと言えた。レブは舌打ちをして石を脇に放る。

 「アラサーテ様!探しましたぞ!」

 ふわり、と着地してティラドルさんがレブと私に一礼する。この前も同じ様な切り口で話をされたと思い出す。

 「今日の私の予定も把握していないのか」

 「申し訳ありません!しかし、一大事なのです」

 一大事と聞いてチコとフジタカ、セシリノさんも工房から顔を出した。

 「ビアヘロが現れて子どもを人質にしたか」

 「はい」

 レブが嘲る様に言うがティラドルさんは真顔で答えた。

 「……笑えんな」

 「正確に言えば違います。ビアヘロのゴーレムが北の森を抜けた先の鉱山から現れ、制御を失って暴れています」

 「なにいっ!」

 ティラドルさんの説明に声を荒げたのはセシリノさんだった。

 「あ、アンタ……いや、ドラゴンにアンタってのも失礼だが……そ、そりゃあ本当かい?」

 顔面を蒼白にしてセシリノさんがティラドルさんに詰め寄る。足も震えておぼつかないドワーフに首を傾げたのは私達だけだった。

 「セシリノ・エナノー……。貴方の召喚士、ポルフィリオ・ブルゴスも今日は……」

 「あぁそうだ!アイツ、今日はピエドゥラに行ったんだ!なぁ、アイツは……」

 「……現状は分かっていない」

 ティラドルさんの返答にセシリノさんは数歩下がった。ピエドゥラ、というのはこの前の北の森をさらに北上した先にある鉱山の名前だ。

 「状況の説明をしろ、ティラ」

 落ち着き払ったレブにティラドルさんが襟元を正して頷く。

 「北の森で契約者と同行していたカルディナからの伝書鳩からの情報です。契約の儀式と召喚士選定試験の途中、ピエドゥラ山で大きな爆発が起きました。トーロが確認したところ、対処できない大きさの召喚していないゴーレムが現れた、と」

 ゴーレムとは言ってしまえばスライムを頑強にしたものだ。核を持ち、魔力を供給される事で人の命令に従うのは同じ。違うのは素材が泥や土、或いは岩で造られるという存在。操るのにスライムよりも複雑な指示が出せる分、魔力を消費するのが難点で新米召喚士は自分よりも大きなゴーレムの召喚は許可されない。

 「聞いた話ではその場に召喚士はおらず、召喚陣もないためビアヘロだとの判断です。鉱山技師と鉱夫達が暴れるゴーレムにより避難できない状況。怪我人がいるかは不明ですが至急、応援を要請したいとの事でした」

 「そのゴーレム、下手をすればエルフの集落にも行きかねんな」

 さらりと言うレブにチコが怒鳴りそうになった。でも、客観的に考えれば自然の流れだ。どれだけ動くは分からないけど、魔力が残っている限り暴れると思う。

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