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この声よ、どこまでも届け。

 「……何か言いたそうだね?」

 「他人事の様に言うが、貴様とて同じ類だぞ」

 目線を前に戻して一言。先に行こうとしたレブの前へと回り込む。

 「どういう事よ」

 「同じ話を繰り返させるな」

 「俺は分かったぞ」

 トーロが言って、レブは話してくれる気配も無いから退いて元の位置に戻る。

 「ザナもどちらかと言えば無茶をしたがるだろう?昨日の俺への援護だって、随分危険だったからな」

 「………」

 レブも話を聞いてはいるのか何度もしみじみと頷いている。その後姿を二人で顔を見合わせた。そう言えば、レブは私がトーロに助けてもらったところも見てたんだもんね。

 「でもあの時は……」

 私が動いていなかったらどうなっていたか。

 「あぁ、おかげで助かったよ。あと怒鳴ってすまなかったな」

 「ううん」

 そもそも棒立ちしていた自分が悪いのは分かっている。その分トーロに迷惑を掛けてしまったし。それを行動で取り戻しただけ。……取り戻し方が雑だったとレブには怒られたんだけどね。

 「無理をするなと言っても、こちらが止めるまでは黙って続けている」

 そうだ、とレブに続いてトーロが私とカルディナさんを見る。

 「そんなお前達召喚士を見ていると気が気でないんだ。俺も、アンタもだろ?」

 「ふん」

 レブは鼻を鳴らすだけで何も言ってくれない。何気にトーロがレブの呼び方を変えている。チコもそうだけどもうレブをチビとは呼べないもんね。

 「………」

 そこに更に前を歩いていたライさんがこちらを横目で見ていた。喋っていると疲れると言ってくれていたのに無視して話していたからうるさかったのかな。

 無視したと言うよりは、確認をしたかっただけなんだけど横道に逸れて雑談もしていた。気に障ったなら謝りたいが、あの距離じゃ聞こえる様に声を張ったら今度こそ怒らせる。小声で呟いても聞こえるかな。

 「すみませんでした……」

 「………」

 聞こえたのか、それとも口の動きで読んだのかライさんの目線は私達から外された。


 トーロが言っていた通りに街道をひたすらに歩き、野営地の名残を見付けては休憩を取りつつ四日後の夜に私達は港町アスールへと到着した。夜にも関らず町の灯りは眩しく暗い海も照らしていた。

 「あっちのは?」

 遠くに見える光を指差してフジタカが私を見た。

 「ファーロだよ。灯台の港町」

 アスールとファーロは徒歩で半日くらいの距離に位置する隣接し合う町だ。それぞれに港があって、近郊の浅瀬にはアスールから。もう少し沖まで出てカンポや別の大陸に行くならファーロの方が船の便は多い。

 「ふーん。俺、灯台って行った事ないんだよね」

 「私も」

 本を読んで知っているからと言って、実際に行った事はない。人に聞かれて答えた知識も自分の経験ではない。興味が完全に灯台に向いているフジタカは目を輝かせて海を照らす塔の影を眺めていた。

 「何かと煙は高いところを好むと言うが」

 「俺をバカって言いたいのかよ、デブ」

 その言い方じゃフジタカの方が先に仕掛けてるよ……。レブもどうしてそういうことわざはすぐに言えるのかな。

 「憧れないか?崖とか高いところで大きな声を出して仲間に向かって呼び掛けるとかさ」

 「無い」

 「うーん……」

 レブも私も薄い反応をするものだからフジタカも行き場を失って周りを見る。

 「チコは?」

 「ねーよ」

 「トーロ!」

 「そもそも吠えるのに適した造りをしていない」

 どうしようもなく叫びたくなる時はある。だけどそれは鬱憤を晴らす行為であり、フジタカの様に見付けると心が躍るわけじゃない。だから私は言葉を濁していた。それにトーロが言っていた造りもある。元々吠える様な喉になっていないのだから、フジタカの期待に添える様な叫びは私達にはできない。

 できるとすればレブだけど先に一刀両断しているし、あと他にいるとすれば……。

 「じゃあ……。あ………」

 「………」

 フジタカの目がある人の背中に辿り着く。言葉に詰まると本人、ライさんの方から振り向いてこちらを見た。

 「あ、うるさかった……ですか?」

 「いや……」

 歩いている途中、度々会話が盛り上がるとライさんに目で注意されていた。その前にカルディナさんが声の調子を落とすように言ってくれたり、ウーゴさんが平謝りしてくれていたりもしている。だからフジタカもこうして確認を取っていた。

 「……俺には聞いてくれないのかと思ってね」

 「え……」

 尋ねてみると首を横に振ったライさんの口から出た言葉があまりに意外で全員で唖然とする。だって、途中まであんなに会話に入りにくくしてたんだもん。

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