表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
236/396

隣り合わせは向き合えない。

 この村が裕福で栄えているというわけではないけど、フジタカはレブに言われて納得したみたい。昔の私なら全否定してただろうな。そんなの間違っている、この世界の人はもっと召喚士を目指すべきだ!なんて言って。

 「もっと自然に触れ合うべき……って事かな」

 私達だってセルヴァに居ただけで日頃から土や樹木に感謝して生きていたわけではない。そこにあるモノとして受け入れ、ただ隣にいたから寄り添って生きていただけ。それがレブの言っていた、人を方向付けるという話に繋がるのかな。

 「聞いてて思ったんだけどさ、ザナはトロノ出身の召喚士って知ってるか?」

 「え……?」

 チコが何かを数える様に指を折って鼻を鳴らしていたが私を見て首を傾げる。そこで私も振り返ってみた。

 「……知らないかな」

 言われて思えば、トロノやアラクランで生まれ育った召喚士って話は聞かない……かも。カルディナさんは西ボルンタの地方、って言っていたしウーゴさんはカンポだと聞いた。

 「生まれ故郷の話か……。すぐにしそうなもんだけど」

 「この境壊世界では意味が無い。どこもかしこも別世界に繋がっているからな」

 知った風に言うけどレブだってそっちから来たんだからね。でもフジタカがどこから来たと話されても、分からないもんなぁ。

 「この世界で安定を得ようとすれば、力を捨てなければならない。オリソンティ・エラにとって力は揺らぎを生むモノでしかないからだ」

 「揺らがせるのが私達で……」

 「その揺らぎから出てくるのが俺達、か……」

 フジタカと顔を見合わせた。本来出会う事も、話す事も無かった私達が同じ場所に居る。

 「力を求めるから世界は揺らぐの?」

 「黙れば鎮まる類ではないな。放置すればつけあがるだけだ」

 凶暴なビアヘロに対抗する力はいつになっても必要になる。だから召喚士は今日まで必要とされてきたんだ。そしてきっと力はこれからも私達には欠かせない。

 「獣人と竜人がいる……。やっぱ契約者の護衛は違うよな」

 そこで声が聞こえる。宿屋へ戻るのだろうか、旅装束を着た中年の男性二人がこちらを見ていた。レブの背筋が少し伸びたのを私は見逃していない。

 「そりゃあ契約の儀式となれば違うだろ」

 「だぁよな!途中で見かけた爺さんの竜も凄かったし……」

 「あの爺さんな。もしかして契約者だったのか?」

 私達の前を通り過ぎようとした二人の会話内容に全員が目を見張る。二つの単語が並んで一番この場で動じたのはレブだった。

 「そこの二人」

 「は?」

 「あ?」

 真っ先に動いたのはライさんだった。儀式の後片付けをしてくれていた筈が、私達の真後ろから急に跳び出して二人を呼び止める。

 「詳しく聞かせてもらえないか。その老召喚士の話を」

 「私にもだ」

 遅れてレブがずん、と前へ踏み出る。ライさんとレブがおじさん二人を取り囲むその姿は明らかに追い剥ぎか何かだ。

 「オヤジ狩り……まさか生で見る日が来るとはな」

 「フジタカの世界でもあるの……」

 「いいから助けてくれよォ!」

 固唾を呑んで見守ろうとしてしまったけど奥の一人が悲鳴を上げた。そこでこちらに付け入る隙も出てくる。

 「二人とも、そこまでだよ。怖がらせちゃダメでしょ」

 「あぁ、助かった……」

 顔の怖い二人が愛想も見せずに近寄ってきたらそうなるよね。ほっと胸を撫で下ろすのも分かる。

 「でも、少しお話を聞かせてくれませんか……?」

 「へ……」

 私は後ろにフジタカ、トーロとニクス様まで連れておじさん二人を捕まえた。


 話を聞くとこうだ。西ボルンタの港町、アスールからこのファーリャへ向かう途中、街道から少し離れたところで爆発が起きた。近寄らないでおじさん達が様子を見ていると、その爆発後の煙が立ち上る方向から白髪の老人と竜のインヴィタドが現れた。

 彼らはビアヘロらしき化け物と交戦中で、こちらには気付かずにそのビアヘロを倒すとファーリャの方へ向かって飛んで行った……という話だった。

 「も、もう行っていいかな?」

 「俺達も疲れてるんだよ、ケーヤクシャ様!」

 すっかり怯えた様子でこちらを見るのでニクス様もレブとライさんに目配せをする。

 「……近くにいるのか」

 おじさん達が見た召喚士は私達も知っている相手だと思う。話す程に顔が険しくなるライさんにすっかり二人は及び腰になっていた。

 「そ、それだけ分かれば十分ですよね、ライさん?」

 「あぁ……そうだな」

 どうして追い掛けて殺しておかなかった、なんて理不尽な事を言うわけではない。ライさんは一度深呼吸すると頭を下げた。

 「貴重なお時間を頂戴して、申し訳ない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ