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自覚できたら。

 村の広場、遊んでいた子ども達が私達を見て球蹴りを止める。気まずくて私はレブを連れて、とにかく人目を避けた。

 「……村中を歩いても、貴様が落ち着ける場所は無いと思うぞ」

 「半周以上終わってから言う?」

 なんとなく人の多い場所を避けてのらりくらり。しかしレブと私の姿を見て放っておく人の方が少ない。見逃し掛けても視線が戻ってくる。

 「一人になりたいのならば、少し離れよう」

 「い、行かないで!」

 立ち止まってレブに向き直った。彼の表情はいつもと変わらない。静かに私を見下ろしているだけ。

 「一人には……しないでよ」

 「承知した」

 本当にトロノに居た頃と変わらない接し方をされて私は今のレブに今更ながら違和感が込み上げてくる。もっと大きな姿になった事だってあるのに。

 離れない様に言ったはいいものの、結局私は先程の広場に戻ると簡素な木製の丸椅子に座った。レブは私の横に立って周りを見回している。そうしている間にも見物する人は何人かいた。通りすがるだけでその場でじろじろ見ようものなら、レブの一睨みで追い返されている。

 「話したい事があるのなら、私の部屋に戻って犬ころを追い出すのも手だろう」

 「フジタカこそ屋外で一人にはしておけないよ」

 心配とかではないけど、何か起きるとしたらフジタカが巻き込まれる可能性は高い。フエンテの中で一番重要視されているのは私達よりも彼だと思う。

 「……はぁ」

 だけど、今考えているのは私達二人の事だった。レブの言う通り、この村を目的もなく歩いていたらそれこそ逆効果だろうね。

 「召喚士として鼻が高いとは言えんか」

 「それは……」

 竜人を従えているなんて言ったら召喚士としては誉れ高いのが普通だ。しかもその竜人の中でもレブはとびきりの力を持っている。だったら自慢の一つでもするのが当たり前なのかもしれない。

 「できないよ。レブがダメって事じゃないよ?レブは私を今日までずっと助けてくれた凄い竜だもん。でもね」

 「皆まで言わずとも分かっている」

 レブは目を伏せて笑った。

 「召喚士として自分の力が伴っていないと言いたいのだろうが、私はそれを否定する」

 「否定って……事実だよ」

 客観的にこの構図を見てよ。前は小さな怪獣を引き連れた半端者召喚士だったのが、今ではゴツい竜人と何故か肩を並べたなりたて召喚士だ。前から自覚していた自分の未熟さが、今度は人目で思い知らされている。視線を浴びながらどんどん自分の矮小さが露呈していた。

 自分では少しずつ前に進めていると思っていても、周りが同じ様に見てくれているとは限らない。こうして突発的に起きたレブの変化に対して何もしてあげられなかったのだから。

 「……レブ、私からちゃんと魔力は流れてる?」

 「当然だ。貴様が優秀な召喚士だからな」

 返答に耳がくすぐったい。

 「繋がっているから私には分かるぞ。ここまで私の姿を変化させて尚も貴様にはまだ、余裕があるらしい」

 「え……?」

 余裕って、私に……?

 「私が放電してあの前髪と獅子を気絶させた際、意に介さなかっただろう」

 「それはなんというか、キョ、キョクゲン状態だったからで……」

 あの時は頭や胸の中がチカチカバチバチしていた。レブに自分を押し広げられて、体の中を小さな固い虫みたいな物が跳ね回っている様な。

 「あの程度を極限と評するなら、本物の極限をどう表すつもりだ。貴様は一度体験しているだろう」

 「一度……あっ」

 タムズに殺されそうになって、レブが元の姿になった時。今までであの時よりも私自身が危機に陥った事は無いかも。

 「あの時もそれどころじゃなかったなぁ……」

 「先日の一件を大蠍戦と同じ物にするなと言っている」

 あぁ、そうか。あの時と比べれば……普段通りみたいなものだよね。凶暴なビアヘロと問答無用で戦うよりは頭も冷えていた。

 ……なのに、私は平然としていた?

 「あれ……?」

 私が顔を上げるとレブは腕を組んだままこちらの目線の高さまで腰を屈めた。

 「変化したのは私ではないのだぞ。貴様が変わった故に、私も連動しただけだ」

 「それ、だけって言うのかな……」

 私は確か……レブの血を飲んだから自分の魔力の大半を意識せずに注ぎ込んでしまうらしい。あまりに当たり前だったから、今までは気にしてなかったけどベルナルドには散々な事を言われてしまった。

 「魔力を解放された貴様は、もう既に消費用と貯蔵用に魔力を分けている。自覚していないだけだ」

 しないんじゃなくて、できないんだ。やり方が今までと変えられてしまったから。

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