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山の風向きが変わり、嵐を呼ぶ。

 ただ山道を歩いてた。のんびりした楽しい旅になる、なんて思ってはいなかったがそれなりに気分転換になると思ってた。

 でもそんなわけなかった。アルパでは復興が遅々として進まないうちに冬が来てしまう。寒そうに歩くエルフ達の横を通り抜けながら俺達はピエドゥラに向かった。

 そこで待ってたのはなんとか人が通り抜けできるだけの隙間を作った坑道の成れの果て。あんな細道を鉱夫達は使わないとトーロが言っていた。あそこを使うのは掘り出し物を漁る盗賊や物乞いの連中。細く狭い入口は、今日を生きれるかも分からない連中が明日を得る為に飛び込む深淵。それが崩れて自分が死んでも構わない。そんな連中の為にできてしまった物。未だにそのままで放置されていたなんてな。そこで一夜を過ごす事になったから余計に気まずかった。……アルパにもいられなかったし。

 そしてようやく自分の未開の地へと足を踏み入れる。ここからがまた新しい旅の始まりだった。ゲーム感覚じゃないが、本物のダンジョンに入った様なもんだったし俺は楽しかったんだ。チコとまた話すにも、景色を見ながらだったらちょうど良い機会が来そうだったし。

 ……そこに現れたのが、アイツだ。あの野郎のせいで俺とチコは一度ぶった切られた。俺がビアヘロで、チコは俺を召喚していなかったと知らなければ良かったとは言わない。だが、あのタイミングは最低最悪だった。

 ソイツがまたのこのこ俺の前に現れる。しかも、死んだと思っていた親父を連れて。チコには悪いが、俺にはその方が衝撃だった。

話し掛けても無愛想に答えやしない。再会に無言で睨んでくるだけだ。偉そうに提げた腰の剣は昔の名残らしい。

 物々しい虫や変な爺さんを連れてベルナルドが俺の親父と立っている。そこにデブが威嚇をした直後にやって来たライさんは本当に獣の中のケモノ、バケモノの様に暴れていた。デブに飛び掛かっていた辺り、正気じゃなかったんだ。恐らくそれは……トロノにいた時から変わっていない。俺は見抜けなかったんだ、ライさんが今も抱え続けていたあの気持ちを。

 押さえ込もうとデブと頑張ってる間、親父は動こうともしなかった。召喚士っぽい爺さんも何をするでもなく突っ立っているだけで、こちらに仕掛けてくる様子はなかった。皆が来るまでは。

 集まってしまったから、それは起きたんだと思う。あのまま俺達とザナだけだったらこの場はここまで拗れなかった。

 ベルナルドがザナのおでこに触れる。途端にザナは意識を失った様に力が抜ける。直後に一瞬だけ、ザナの髪が光を反射した泉の水みたいに透き通った金髪に染まった様に見えた。


 見えた、だけ。気のせいだったかもしれない。なんで、そんな曖昧にしか言えないかって……今はそれどころじゃないからだ。

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